2018年は賞金王の今平周吾の獲得賞金が1億3911万9332円だったのに対し、賞金女王のアン ソンジュの獲得賞金が1億8078万4885円と、女子が男子を上回ったが、2019年は男子が巻き返した。

【参考】国内ゴルフツアーの賞金王・賞金女王獲得賞金の比較

だが、獲得賞金が上回ったからといって、それが人気に反映されているかというと、まったくそんなことはない。むしろ男女ツアーの人気差がよりいっそう浮き彫りになった1年だったかもしれない。

女子ツアーは今年、ニューヒロインが次々と誕生した。3月の「アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI」で、黄金世代と称される1998年度生まれの河本結が初優勝を飾ると、5月の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」で、同じく黄金世代の渋野日向子が国内メジャーでプロ入り初優勝という快挙をやってのけた。

その後も原英莉花、小祝さくら、淺井咲希が黄金世代で勝ち名乗りを挙げた。1学年下の稲見萌寧も初優勝を飾り、2学年下の古江彩佳はアマチュア優勝を達成してプロ転向した。3学年上の柏原明日架も待望の初勝利を手にした。

渋野は7月の「資生堂 アネッサ レディスオープン」でツアー2勝目を挙げると、8月の「AIG全英女子オープン」で、日本人女子選手として42年ぶりに海外メジャー制覇という偉業を成し遂げた。

その後の国内ゴルフツアーは“しぶこフィーバー”一色となった。渋野が出場する試合は一挙手一投足が話題となり、そのぶん男子ツアーの話題は減少した。

男子ツアーが一矢報いたのは10月の「ZOZO CHAMPIONSHIP」。PGAツアー日本初開催となった大会に、初日1万8536人、4日目2万2678人もの大ギャラリーが詰めかけた。2日目が豪雨で中止となり、3日目はギャラリーの安全を考慮して無観客試合となる苦境を乗り越えて話題を集めた。

だが、その盛り上がりが男子ツアーの終盤戦につながったかというと、残念ながら単発で終わってしまった。翌週の「マイナビABCチャンピオンシップ」のギャラリー数は、初日1623人、2日目2016人、3日目4124人、最終日5350人。4日間かけても「ZOZO CHAMPIONSHIP」の1日分に満たなかった。

この週の男子ツアーの苦戦は、石川遼の不在も大きかった。10月21日時点の日本ツアー賞金ランキング上位2人に資格が与えられる「WGC-HSBCチャンピオンズ」(中国・上海)の出場権を今平が放棄したため、石川が出場権を得て参戦。

「ZOZO CHAMPIONSHIP」で2位に入った松山英樹、3位のロリー・マキロイらとともに中国へ飛んだため、国内男子ツアーは“裏トーナメント”のような印象になってしまった。

また、石川は日本ツアーに賞金が加算されない「WGC-HSBCチャンピオンズ」に出場したことで、賞金王争いでは不利な状況となった。

今平が「ダンロップフェニックス」に勝利したことで、石川が賞金王になるには「カシオワールドオープン」と「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を2連勝するしかなくなったが、「カシオワールドオープン」で首位と7打差の10位タイに終わり、最終戦まで可能性を残すことができなかった。

女子ツアーは渋野が「大王製紙エリエールレディスオープン」で勝利したため、鈴木、渋野、申ジエの3人が賞金女王の可能性を残して最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」を迎えた。各選手の順位によって賞金女王の行方が決まるドラマチックな展開となり、大いに盛り上がった。

男子ツアーは今平とショーン・ノリスの2人が賞金王の可能性を残して最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」を迎えたが、今イチ盛り上がりに欠ける結果となった。石川がプレーオフでブラッド・ケネディを下し、印象的な勝利を挙げたのがせめてもの救いだった。

国内ゴルフツアーにおける男女の人気差は、2020年もおそらく変わらないだろう。この現状を打破するためには、渋野と同じように日本人男子選手が海外メジャー制覇を成し遂げるしかないだろう。4月の「マスターズ」、5月の「全米プロゴルフ選手権」、6月の「全米オープン」、7月の「全英オープン」での日本勢の奮起に期待したい。

また、2020年は東京五輪のゴルフ競技もある。日本人男子選手が五輪で金メダルを獲得すれば、ゴルフブームが一気に巻き起こる可能性がある。

2019年12月8日時点のオリンピックゴルフランキングでは、松山と今平の2人が出場圏内に名を連ねている。リオデジャネイロ五輪のゴルフ競技はジカ熱および治安に関する不安を理由に出場を辞退した松山だが、母国開催の五輪出場には強い意欲を示している。

ただ、松山が金メダルを獲得しても、PGAツアーを拠点にしているので、国内男子ツアーの人気回復には直結しないかもしれない。そう考えると、国内組の追い上げが必要だ。

東京五輪の出場選手は実質的に世界ランキングで決まる。21位の松山、32位の今平を追いかけるのは、82位の石川、111位の星野陸也、135位の堀川未来夢、149位の時松隆光、151位の比嘉一貴、160位の池田勇太といった面々。

渋野が海外メジャー勝利によって世界ランキング46位から14位にジャンプアップしたように、メジャーで勝てば逆転の可能性はある。出場選手が最終的に決まるのは、男子が2020年6月22日の「全米オープン」終了時点、女子が2020年6月29日の「全米女子プロゴルフ選手権」終了時点となっている。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。