若手が活躍すると、景気よく「○倍増!」という言葉が飛び交うが、ベースとなる年俸が高いベテランとなると、多少の活躍ではそうそう年俸も上がらない。それぞれの球団の懐事情にもよるが、年俸交渉において、重要なのが11月頃に行われる“下交渉”だという。

「具体的にいえば、レギュラークラスの年俸3000万円から5000万円以上の選手には、事前に下交渉を行うことが多いのではないでしょうか。いったん査定の金額を提示して、それでハンコを押してもらえそうかどうかを確認するわけです。ここで選手側から不満があるようであれば、本交渉の際に上げることもあるわけです。逆にいえば、選手も下交渉をしてもらえるようになれば一人前。チームにとって必要不可欠な存在になったと認識された証ともいえるでしょう」

実績、実力のある選手がFA権を行使すれば、“市場価値”によって年俸が跳ね上がるというケースも珍しくない。だが、権利の行使にはリスクもともなうと池田氏は語る。

「たとえば私がいたベイスターズの場合、三浦大輔さんはFA権を獲得しながらも球団に残り、今では投手コーチになり、次期監督の有力候補となっています。一方、他球団に移籍してしまうと、現役を終えた時点でプロ野球界での野球人生は終わりというケースもあります。野球人としての、野球人生の絵の描き方にも関わってきます。FAで、コーチにしてもらうことまで含めて約束することなども可能でしょうが、やはり生え抜きの方が野球人としての野球人生は球団側は描きやすいのは事実です」

池田氏が注目するのは、複数年契約の選手の最終年だという。

「私の個人的な分析では、複数年契約は最終年になるまでは微妙な成績になることがあることも多い。活躍しようがしまいが給料は変わらないわけですから、プロのレベルだとモチベーションによる成績の振れ幅も大きいのかもしれません。でも最終年となると、次の契約交渉を有利に持ち込むためにも、モチベーションが一気にあがり、成績があがるとも言われている。もちろんそんな理由だけでは当然ないでしょうが、実際3年契約で2年間ダメでも、最終年でいい成績を残せば、よい条件で契約が更新できたり、他の球団が手を挙げる可能性が高くなります」

FAで5年15億円の複数年契約で巨人にFA移籍した陽岱鋼は、その成績に対して年俸が割にあわないとファンから批判を浴びているが……。

「陽岱鋼選手は来年4年目で再来年が最終年。来年もそうですが、再来年もそういった角度を変えた見方も楽しめると思います。こういった契約更改が話題になるのもショービジネスとしてのプロ野球界の面白いところ。やっぱりお金や人事の話は日本人は大好き(笑)。プロ野球は様々な側面をショービジネスとして楽しむことができる。ファンがシーズンオフまで楽しめる仕組みが随所にあります」

契約更改がおわれば、次はMLBを目指す選手たちのポスティング交渉。話題が途切れることがないプロ野球界。確かによくできたショービジネスだといえるだろう。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部