ーベイスターズは横浜スタジアムの運営会社を傘下に収めるなど球団と球場の一体経営するなどして、DeNAの参画前に110万人だった観客動員を倍以上に増やしました。

池田 「球場、スタジアムとの一体経営は基本の時代になりました。一体経営をしないとホーム、いわば“自分の家”なのにトイレの清掃もできない。飲食も県や市や管理運営会社が委託する業者さんばかりで、オリジナリティがなく、食がエンターテインメント化しないままだと寂しくなる。ただ、建設の経緯であったり、資金の大半を行政が担ったりしてきた場合、県や市はなかなか全ての権限をすぐに手放して『さあ民間でどうぞ』とはなり難い。行政任せではなく、民間が投資し、増設資金を担い、分かりやすく言うとお金を使って資本構造的な役割とポジションを増やしていかなくては、権限を渡してくれません。

 とはいえ、今後は『ハコを持っているのは行政だけど、あとは全部やってください』という方向にどんどん移行していかざるを得ないとは思います。横浜スタジアムに関しては、当初はお客さんも入っていなくて、周りの横浜公園もなかなか使わせてもらえなかった。やりたいことを言っても、できない理由を最初に伝えられ、『公園は市民のための場所』『DeNAに優先して使わせる理由がない』などと言われ続けていました。その中でも、お金を出して、横浜公園を含めたボールパークのビジョンを出して、公園には市民利用のためにもなるコーヒーショップもつくってと取り組んでいると、普段から、試合のない日もハマスタのある横浜公園にお客さんが来てくれるようになった。かつてハマスタの裏側は人通りも少なく、歩くのが怖いとさえいわれる場所でした。そこにも人の流れをつくるようにしていると、段々と『使っていいよ』という流れになり、最終的にはハマスタの運営権も渡してもらうことができました」

ー今や試合のない日も活気付いている横浜スタジアム周辺ですが、意外な話ですね。

池田 「地域密着は、街づくりでもありますからね。それこそ、概念としてスタジアムの周辺を遊園地みたいにしたいなと思いながらやっていました」

小泉 「鹿島はよく“奇跡”といわれますけど、東関道の終点で東京都内から1時間から1時間半とギリギリ行ける距離にあります。サポーターの平均アクセス時間を見ると1時間40分と、Jリーグでもダントツに遠いんです。でも、チームが勝つので来てくれる。ただ、私としては1時間40分かけて来てくれて、2時間の試合だけを見て、また1時間40分かけて帰るというのは、すごくもったいないなと。だからこそ、滞在時間をどう上げようか考えています。これまでスタジアムは一回入場すると再入場を禁止していたのですが、来年(※対談が行われたのは2019年12月)からはいつでも再入場できるように開放します。開けて、それこそ池田さんの言う遊園地ではないですが、そういう形に変えて、4、5時間から半日楽しんでもらえるような場所にしたい。

 ユベントス(イタリア・セリエA)は、スタジアム(アリアンツ・スタジアム)にいろいろと改革(ミュージアムや巨大ショッピングモール「Area12」の併設など)を施して、確か平均4時間くらいの滞在時間にしています。そういう形で、マネタイズポイントを複数持ってというのが理想です。どうしてもスポーツビジネスというと、全員がサッカー、スポーツを好きだという前提で考えてしまいがちなのですが、もう少し広い視点で、全然サッカーが好きではない奥さんや彼女でも楽しい場所を実現したいですね。アントラーズは、実は約4割が都内や横浜のほうからサポーターに来ていただいているんです。茨城の比率は半分いかない。だからこそ、リピーターになってもらえる経験を提供しないといけないと思っています。

 あとはアジア・チャンピオンズリーグなどの関係で来年は金曜日の試合が増えそうなので、その場合は東京都内でパブリックビューイングをやっていこうかなと思っています。いくつか候補の場所は見つけていて、スポンサーのドコモさんと一緒にやっていこうかなと。最初にいきなり1時間40分かけてスタジアムに来てくださいというのは、まあまあハードルが高い。お台場でも恵比寿でもいいですが、そういう場所をフックにして、1回来てもらおうという狙いです」

ースタジアムのキャッシュレス化については、どのような見解をお持ちですか。

小泉 「来年やろうとしているのは、事前のプレオーダーとかUber Eatsのように席まで持ってきてくれるとか、何が正しいかわからないので、いくつかそういう新しいことを提案しようと考えています。行列って機会損失が大きいんです。再入場を可能にすることで、外にも飲食を展開していこうとも思っています。売店が混むのでコンビニで買って持ち込むケースが多くて、クラブ経営的にはそういうところを取りこぼしているなと。テクノロジーを入れることによって、今まで2品だったところを3品買ってもらえるような形には持っていきたいなと思っています」




池田純氏×小泉文明氏対談・第二回 <了>

2020年1月10日(金)第三回公開予定

池田純氏×小泉文明氏対談・第一回「経営者目線で語るスポーツビジネスの特異性と地域活性化」

レジャー産業に関わる195社が出展する日本最大規模の展示会「レジャージャパン2019」が東京ビッグサイト青海展示場で開催された。

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VictorySportsNews編集部