プロアマ大会に関しては、プロゴルフトーナメント運営の指針となる「日本国内プロゴルフトーナメントにおける新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」に則って開催しようとしても、実現がなかなか難しいようだ。そもそも一般アマチュアゴルファーにとって、プロアマ大会そのものになじみがない。いったいどんなことが行われているのか。
「プロアマ大会」とは
プロアマ大会の仕組みを簡単に説明すると、トーナメント主催者が取引先の社長などを招待し、本戦前にプロゴルファーとのラウンドを楽しんでもらう懇親イベント。プロ1名とアマチュア3名の4人1組がチームとなり、団体戦で順位を決める。競技方法は、それぞれのショットでベストボールを選択するといった特別なルールで行われることが多い。
参加する選手は本戦出場者の中からトーナメント主催者が選ぶ。人気選手や有名選手の中から選ばれるが、トーナメント主催企業の所属プロは基本的に参加するので、大会によって人選が変わる。招待客にどの選手と一緒に回りたいか事前にアンケートを取る大会もあるようだ。
参加する人数はプロアマ大会のゲストの数によって変わるが、だいたい30名から40名。プロ30名だとゲスト90名で合計120名、プロ40名だとゲスト120名で合計160名といった具合になる。参加する選手には日当も支払われる。一方、プロアマ大会を欠場・棄権した選手は本戦に出場できないという規定もある。欠場・棄権に備えて待機する役割の選手もいる。
顧客満足度の差
プロアマ大会について直近で最も大きな話題となったのは、2018年の「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」で片山晋呉が招待客に不快感を与えてプレーを断念させたことに対し、制裁金30万円と厳重注意処分を科した騒動だろう。
この騒動の以前から、男子ツアーと女子ツアーのプロアマ大会における“顧客満足度の差”は指摘されていた。女子ツアーのプロアマ大会は選手がとても親切にしてくれて楽しいが、男子ツアーのプロアマ大会は愛想が悪い選手もいて、あまり楽しくないという声はよく耳にしていた。
ただ、女子ツアーのプロアマ大会も昔から評判がよかったわけではない。評価が高まったのは、1996年に日本女子プロゴルフ協会の会長に就任し、後進の指導に尽力した樋口久子の功績が大きい。若手選手たちにスポンサー企業やプロアマ招待客との接し方を教え、ラウンド後にはお礼の手紙を書くなど細やかなホスピタリティを浸透させていった。
すると2003年に宮里藍が「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」でアマチュア優勝を達成し、高校3年生でプロ転向したことでツアー自体の人気も一気に高まった。
一方、男子ツアーも2007年に石川遼が「マンシングウェアオープンKSBカップ」でアマチュア優勝を達成し、翌2008年1月にプロ転向したことでツアーの人気が高まったが、プロアマ大会に関しては選手によって当たり外れがあるという悪評を払拭することができなかった。やがて石川遼がPGAツアーに本格参戦し、松山英樹も2014年からPGAツアーに拠点を移したことで、男子ツアーは人気を失っていった。
プロアマ大会に関して言えば、今は男子ツアーよりもシニアツアーのほうが評判はいい。50歳以上の選手たちは会話にも慣れているうえ、体力の衰えなどプロアマ招待客と共通の悩みも多く、話が盛り上がるようだ。
ツアーの試合数減の可能性も
そんな現状を打破すべく、男子ツアーも青木功会長がプロアマ大会を盛り上げようと試行錯誤しているが、今のところ成果に結びついていないのが実情だ。ただ、今年から開催される予定だった「ゴルフパートナーPRO-AMトーナメント」は日本で初めてアマチュアゴルファーが4日間ともプロと一緒にラウンドするプロアマ形式を採用した。残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となり、プロのみが出場するエキシビショントーナメントだけが開催されたが、2021年7月には完全な形で開催できるよう準備が進められている。このような大会が人気回復の起爆剤になることを期待したいところだ。
しかしながら、2020年10月時点では新型コロナウイルスの治療薬やワクチンは実用化されていない。したがって、2021年になればプロアマ大会も含めてゴルフトーナメントを通常どおり開催し、観客も入れることができるという保証はどこにもない。このままプロアマ大会が開催できない状況が続くようであれば、一部のトーナメント主催者は試合自体を存続させるかどうか検討することになるだろう。
プロアマ大会が開催できないことでツアーの試合数が減るようなことになれば、ゴルフトーナメントの興行自体の仕組みをあらためて見直す必要があるかもしれない。この機会に日本女子プロゴルフ協会が放映権の一括管理を主張している問題なども、一気に動き出す可能性がありそうだ。