異例の「引退発言」

強化責任者が、戦力として見切りをつけて「戦力外」を通告することは分かるが、一選手の「引退」にまで踏み込んだ発言をするのは異例中の異例。今回の加入に関して、森島寛晃社長(48)と大久保の間に「密約」があったと報じた本サイト報道とは全く違う発言だっった。
だが、元日本代表でもある大久保は、J1歴代最多の185ゴールをマークしている屈指のストライカーだ。梶野氏としては、クラブの後輩でもある大久保に対して過激な言葉の中に激励の思いも込めていたのかもしれないが、これが再びファン、サポーターの逆鱗(げきりん)に触れた。

 「功績ある大久保へのリスペクトが欠けている。何様のつもりだ」
 「プロのクラブの人間が言う言葉ではない。公の場で言ってはいけない」
 「なんでフロントがそんなに偉そうなんだ。1、2カ月で引退させるなら、なんで獲得したんだ。その責任は取るんですよね。やり方が不愉快」
 「この発言の非常識さと失礼さに腹が立つ。3位以下に終わったら、森島社長と一緒に退任を」

記事取り下げの理由は、事前の断りがなかった「オフレコ」

コメント欄は荒れに荒れた。だが、騒ぎはこれにとどまらなかった。梶野氏の発言を報じたスポーツ紙のネットニュースが、掲載からわずか数時間後に次々と削除されていったのだ。どうやら、「オフレコ」を理由にクラブから削除要請があったらしい。だが、梶野氏の取材対応時に「オフレコ」という事前の断りはなかったというから、クラブがかなり強硬な態度で迫った様子が推察される。一部スポーツ紙はその要請に応じたようだが、共同通信とスポーツ報知はそのまま報じている。「記事を全部削除させるとか、組織が腐っている」という批判が出るのも仕方のないことだろう。

オンラインとはいえ、会見の場は、事前にオフレコの通達がなければ公の発言として報じるのは、報道機関であれば当然の判断でもある。ましてや、発言内容を誤って報じていたり、事実誤認をしていたりしなければ、記事削除は到底できない。特に共同通信社は、契約している各地方新聞社やテレビ、ラジオ局などへ幅広く記事を配信しており、記事取り消しとなれば、社の信用問題にも関わってくるからだ。
 
「引退のカードは僕が持っている」。梶野氏の発言の真意はどこにあるのか。プロのキャリアを始めたセレッソで大久保に引退を迎えてもらいたいという願いなのか、あるいは自らの立場を誇示したかったのか。事前に大久保の意思を確認していたのだろうか。例え大久保の事前の了解があったとしても、あえて表に出す必要はなかったはずだ。いずれにしても、プロ意識の欠ける軽はずみな行動だったと言わざるを得ない。


VictorySportsNews編集部