SNSなどにより人格を否定するような誹謗中傷がより深刻な問題となっている昨今。スポーツ界もその例外ではなく、Jリーグでも、クラブや選手に対する誹謗中傷が大きな問題となっており、この問題を少しでも抑制し、一部の心ない人によって心を痛めている多くの選手やファン・サポーターを守るために、啓発映像「ネットいじめ、カッコ悪い。」は制作された。

 前園がメッセンジャーに起用された理由は、「いじめ」「サッカー」「啓発CM」という3つのテーマから連想される人物であること。前園は今から25年前に出演したCMで「いじめ、カッコ悪い。」と社会問題に対するメッセージで呼び掛け、大きな反響を呼んだ。今回新たに作られたネットいじめ抑制のための映像は、Jリーグ公式YouTubeチャンネルやJリーグ全試合会場の大型ビジョンでも見ることができる。どんな思いでメッセージを語りかけたのか、前園に話を聞いてみた。

「今回、 25 年前の自分の CM からまた当時とは違う現代においての問題みたいなものを自分の言葉でということでしたが、非常に責任感のあるというか緊張感のある中で楽しくやらせていただきました。25 年前に違う形で社会に問題提起をさせてもらって、今はスポーツ界でも社会でもネットでの誹謗中傷の問題はすごく深刻なものがあるので、自分の言葉で皆さんに語り掛けるじゃないですけど、そういう思いでやらせてもらいました」

 前園自身が25 年前から変わったこと。彼は「年齢を積み重ねて僕自身も人生の中でいろんな失敗やいろんな経験をしたので、当然考え方も変わっていますし、自分が今の立場になってスポーツだけでなく、いろんなメディアの中で発言する上で、昔より今のほうが責任を感じますし、自分の言葉ひとつで周りの環境も変わってくると思うので、責任感は昔もあったつもりですが、今はよりそれを感じています」と続けた。

 もちろん、変わっていないこともある。「サッカーが好きだってことは変わってないですかね」。「もちろん現役の時はプレーをしている方ですけど、今はプレーをしてませんが子どもたちにサッカーの楽しさを教えたり、J リーグや海外の試合を見たり、視点は変わりましたけど、サッカーが好きなことは変わっていないと思います」

 そんな前園が今回、伝えたかったことは、「インターネットやSNSがもっと有効に使われてほしい」ということ。「かなり前からネットいじめはあって、残念ながらそれが原因となって亡くなった方もいます。早く対処しないとずっとなくならない」と強い危機感を示した。

「とにかく、楽しい方向に使ってほしい。もちろん世の中はいいニュースばかりではないけど、できるだけハッピーなことを共有して、広げていってほしい。大変なことがあればみんなで助け合う。そんな空間をつくってほしいなと思います」と、“在るべき未来”への思いを口にした。

 2021年2月26日に開幕を迎えた2021年シーズンのJリーグ。最後に、コロナ禍が続く中で迎えた新シーズンへの期待を聞いた。

「昨年からコロナ禍でJリーグも選手たちもファン・サポーターの皆さんも一生懸命やっているのを外から見ていました。今シーズンはいつ通常開催に戻るのか分かりませんが、選手たちはピッチの中で一生懸命頑張っているし、ファン・サポーターの方が以前のようにスタジアムで楽しく応援できる日がまた来るといいなと思います。僕らはその日までJリーグを応援したいですし、みんなでサッカー界を盛り上げていけたらいいですよね」

ドリブラー・前園真聖の誕生と無冠に終わった高校3年間

1996年アトランタオリンピックで日本がブラジルを破る「マイアミの奇跡」の立役者となったドリブラーの原点は「選手権」にある。元サッカー日本代表の前園真聖は、鹿児島実業で全国高校選手権大会に3年連続で出場した。2年生だった1990年度の第69回大会では準優勝した経験を持つ。高校選手権で出会った印象深いライバルたち、高校サッカーからの学び、そして今年度の大会を戦う高校生たちへの思いとは。

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浅野祐介

1976年茨城県生まれ。KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンでサッカー誌『ワールドサッカーキング』、サッカーサイト『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAに所属。『ウォーカープラス』編集長としてウォーカー系のメディア事業を担当。