準々決勝では、世界ランク1位で今大会の優勝候補であるベルギー相手に、ニコラ・バレッラ、ロレンツォ・インシーニェのゴールで勝ち切り、その後の準決勝でも、PK戦までもつれ込むも、ジャンルイジ・ドンナルンマのPKストップにより、2大会ぶりの決勝進出を果たした。
決勝の相手は、2020-21シーズンのCLで優勝を果たしたチェルシーに所属するメイソン・マウントやリース・ジェームズをはじめ、今季プレミアリーグで得点王に輝いたハリー・ケインやマンチェスター・シティで大ブレイクを果たしたフィル・フォーデンなど、自国リーグに所属する選手たちを中心に構成されたイングランドとなった。試合は開始直後にイングランドのカウンターからEURO決勝史上最速ゴールを許すも、67分にCKの混戦からレオナルド・ボヌッチの得点で追いつき、その後の延長戦を含めた120分間でも決着がつかず、PK戦までもつれ込む死闘を繰り広げた。迎えたPK戦では、準決勝同様に今大会のMVPを受賞したジャンルイジ・ドンナルンマによる3連続ストップもあり、無敗記録を34試合、連勝記録を15試合に伸ばし、華々しい形でEURO制覇を果たした。
大会公式サイトでは試合後にベストイレブンを発表し、アッズーリからは大会最優秀選手に輝いた守護神ジャンルイジ・ドンナルンマや、大会を通じて積極的な仕掛けを見せ、攻撃を牽引した優勝の立役者フェデリコ・キエーザら、5選手が選出された。その他、ベスト4の大躍進を果たしたデンマークの中盤を支える若き闘将、ピエール=エミール・ホイビュアーや、4得点で得点ランキング3位となったロメル・ルカクらが選出された。
そんな大会公式が選出するベストイレブンには惜しくも選ばれなかったものの、今大会において顕著な活躍を見せ、チームの勝利に大きく貢献した選手たちを、VICTORY編集部独自の視点で選出した。
【GK】
■ヤン・ゾマー/スイス(ボルシアMG)
スイス躍進の立役者。決勝トーナメント1回戦のフランス戦で見せたPKストップや準々決勝のスペイン戦で見せた数々のスーパーセーブをはじめ、今大会通じて安定したセービングを披露した。
【DF】
■ルーク・ショー/イングランド(マンチェスター・ユナイテッド)
今シーズンのユナイテッドでの活躍そのままに、今大会でも得意の左足から放たれたキックで数々のチャンスを演出した。決勝では開始早々に代表初得点を挙げ、イタリアの守備陣を翻弄した。また、モウリーニョとのメディアを通じた対決でも大会を盛り上げた。
■シモン・ケアー/デンマーク(ACミラン)
相手FWとの競り合いの場面では、フィジカルだけでなく駆け引きの面でも巧みさを見せた。また、チームのキャプテンとして、エリクセンと共に一丸となって戦い抜いた点も大きく評価できる。デンマークの堅い守備は、彼の存在なしではあり得なかった。
■アンドレアス・クリステンセン/デンマーク(チェルシー)
ベテランさながらのクレバーな対応でデンマークの守備陣を支え、カバーリング能力の高さも目立った。ロシア戦でのロングシュートは圧巻の一発だった。
■ヴラディミール・ツォウファル/チェコ(ウェスト・ハム)
足元の技術はないものの、強靭なフィジカルで相手の左サイドをシャットアウト。攻撃面でもペナルティエリア内に侵入する回数が多く、5試合で2アシスト。豊富な運動量を見せた。
【MF】
■カルビン・フィリップス/イングランド(リーズ)
コンビを組んだデクラン・ライスと共にイングランドの中盤を支え、相手サイドアタッカーのケアから、時には前線まで駆け上がり得点機会を演出するなど、プレーエリアの広さが際立った。
■グラニト・ジャカ/スイス(アーセナル)
ベスト8という輝かしい成績を残したチームを牽引したキャプテン。特に、決勝トーナメント1回戦のフランス戦では、2トップのハリス・セフェロビッチ、ブレール・エンボロへ幾度となく的確なパスを供給し、歴史的な勝利を収める立役者となった。
■ニコラ・バレッラ/イタリア(インテル)
攻撃はもちろんのこと、守備では相手のミスを誘発させるファーストコンタクトを幾度となくかけ続け、ジョルジーニョの負担を軽減させた。イタリアの中盤にこの選手がいるかいないかで大きくチーム状況が変わるほど、抜群の存在感を見せつけた。
【CF】
■エミル・フォルスベリ/スウェーデン(ライプツィヒ)
思い切りの良い仕掛けで相手守備陣を翻弄し、常に脅威を与える存在となった。大会前にRBライプツィヒとの契約を2025年にまで延長させたが、いつビッグクラブへ引き抜かれてもおかしくないだろう。
■ミケル・デムズゴー/デンマーク(サンプドリア)
相手のエアポケットに侵入し、常に危険なエリアでボールを受け、ドリブルで仕掛ける場面が多かった。グループリーグのベルギー戦で見せた華麗なドリブル突破や、準決勝のイングランド戦で決めた直接FKなど、今大会最もブレイクした選手と言っても過言ではないだろう。
■パトリック・シック/チェコ(レヴァークーゼン)
UEFA公式での投票でベストゴールに選ばれたスコットランド戦の“超ロングシュート”をはじめ、今大会では通算5ゴールを挙げ、得点ランキング2位にランクイン。かつてのエース、ミラン・バロシュを彷彿とさせる長身を生かしたダイナミックなプレーに加え、左足での繊細なタッチと落ち着きを兼ね備えた万能型ストライカーは、世界にその名を轟かせた。
以上、編集部独自の目線で選出したベストイレブンとなるが、総じて今大会では、優勝したイタリアをはじめ、イングランドやスペインといった若手とベテランの融合を見せた完成度の高いチームが非常に多かった印象を受けた。グループリーグからどれも見ごたえのある試合ばかりで、同時に2022年に開催するカタールW杯において、アジアサッカー界とのレベルの乖離が浮き彫りになることを不安に思ってしまったのも事実だ。9月から始まるW杯アジア最終予選では、ぜひとも日本代表には圧倒的な強さでW杯出場の切符を勝ち取ってもらい、再び前回大会ロストフでの死闘のような、熱い闘いを繰り広げてもらいたい。