室内施設や団体競技が敬遠されているという表現は必ずしも適切ではなく、体育館や野球場は所有者が自治体であることが多いので、感染が拡大すると使用したくても自由に使用できないのだ。一方、ゴルフ練習場やゴルフ場は私有地なので、感染防止対策を施して粛々と営業している。そのことも魅力の一つとなり、ゴルフ練習場やゴルフ場は多くの人たちでにぎわっている。

 ただ、今年に入ってからゴルファーの間で「ゴルフ場の駐車場が例年よりも混んでいるのではないか」ということが大きな話題になっていた。今夏は10時台のスタートでゴルフ場を訪れた際、駐車場の空きスペースを見つけるのに時間がかかったことが何度かあった。千葉県のゴルフ場に足を運んだ際はクラブハウス周辺の駐車スペースがすべて埋まっており、少し離れた場所の駐車場に案内されたケースもあった。

 また、駐車スペースは空いているものの日よけつきスペースがすべて埋まっており、帰りにハンドルが熱くて触れない状態になってしまったこともあった。これはフロントガラスを日よけシートで覆っておけばいいだけの話なのだが、ゴルフ場に着いて荷物を下ろしたりしている間にテンションが上がって忘れてしまうのだ。

 なぜこんなに駐車場が混んでいるのだろうという話をゴルフ仲間としたとき、ゴルフ場の来場者が増えていることに加え、感染防止の観点から普段は1台の車に何人かで乗り合わせてゴルフ場に来る人たちが1人1台でゴルフ場に来るようになったのではないかという推論に至った。

 ゴルファーは遠方のゴルフ場に行く際、高速料金やガソリン代を節約するため1台の車に何人かで乗り合わせることが多い。キャディバッグが4個積める車に4人で乗り合わせるのが最も効率的で、運転者以外はゴルフ場でお酒を飲むこともできる。そのようなゴルファーがコロナ流行以前はとても多かった。

 しかし今は、乗り合わせでゴルフ場に来る人がものすごく減った気がする。来場者が増えているのに乗り合わせで来る人が減っているのであれば、車の台数が相当増えていることになる。レンタカーやカーシェアリングの車両をゴルフ場で見かけることも以前に比べて増えたかもしれない。

 そう考えると、行き帰りの渋滞のひどさも説明がつく。東京湾アクアラインの渋滞は、以前は往路が7~8時ごろ、復路が15~19時ごろがピークだったが、今年はそれよりも早い時間から混雑するケースが増えていた。7時台のスタート時間を予約して14時台に通過してしまえば大丈夫だと思っていたのに、14時にゴルフ場を出発しても10キロ以上の渋滞に巻き込まれて途方に暮れるパターンが多くなっていた。

 9月に入って日照時間が短くなったことにより、駐車場の混雑も交通渋滞も多少緩和してきたような気もするが、実際のところはどうなのだろうか。大手ゴルフ場運営会社のパシフィックゴルフマネージメント株式会社に状況を聞いたところ、関西のゴルフ場や関東の都心から近いゴルフ場(神奈川県・伊勢原カントリークラブ)では車の台数が増えた実感はないという回答だった。

 一方で、都心から多少距離がある栃木県・ピートダイゴルフクラブロイヤルコースは「1人1台のお客様は以前よりかなり増えております」と回答。その理由は乗り合わせの来場者が減ったことに加え、1人予約が増えていることも要因に含まれているという。

 言われてみれば、新型コロナウイルスが流行してから既存のゴルファーの間でもラウンドを控える人とラウンドに行く人が二極化し、ラウンドに行きたいのにメンバーが集まらない人は1人予約を積極的に活用しているという話を聞いたことがある。1人予約であれば当然、1人1台でゴルフ場へ行き、現地で同伴メンバーと合流することになる。

 ちなみに同コースは18ホール営業で110台分の駐車スペースがあり、足りなくなった事例は一度もないとのこと。万が一、足りなくなった場合は従業員の車を移動することで、追加で10台分の駐車スペースを用意することが可能だ。

 ゴルフ場はそもそも人里離れたところにあることが多く、キャディやフロントスタッフ、レストランスタッフなど多くの従業員も車で通勤している。来場者の目につかない場所に従業員用の駐車スペースがあり、そのスペースを活用すれば来場者の車の台数が増えても停める場所がないという事態にはならないだろう。

 ただ、現在は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が思いのほか長引いており、ゴルフに行くことさえも後ろめたいような状況が続いている。秋のゴルフシーズンまでには規制が解除され、堂々とゴルフに行ける雰囲気が戻ってくることを願うばかりである。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。