3歳から体操を始めた村上は、14歳のときに2010年8月の全国中学校選手権個人総合優勝と12月の全日本選手権種目別ゆか優勝で脚光を浴びた。2013年には世界体操の代表に初選出。H難度の大技「シリバス」(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)を武器に、種目別ゆかで4位入賞を果たした。

 2016年リオデジャネイロオリンピックは団体総合で4位入賞。2017年の世界体操は種目別ゆかで日本人女子選手として63年ぶりの金メダル獲得。2018年の世界体操は個人総合で日本人女子選手初の銀メダルに輝いた。

 その後はケガで苦しみ、世界体操の代表入りを逃した時期もあったが、2020年12月の全日本選手権個人総合で復活優勝を果たすと、2021年4月の全日本選手権個人総合で大会連覇を達成。5月のNHK杯でも優勝し、東京オリンピック代表の座をつかみ取った。

 競技生活の集大成と位置づけた母国開催のオリンピックでは、個人総合で日本人女子歴代最高順位となる5位入賞。種目別ゆかでは女子個人種目で日本人初の銅メダルを手に入れた。現役引退を示唆して臨んだ世界体操でも種目別ゆかで金メダル、平均台で銅メダルを獲得。涙を浮かべながらも晴れやかな表情で引退を宣言した。

 11月8日には母校の日本体育大学で引退会見を行い、周囲の支えや体操競技への感謝の言葉を述べた後、今後は大学体操部のコーチとして後進の指導に当たると語った。

 その翌日、村上は早速意外な場所で次の一歩を踏み出した。世界No.1求人検索エンジン「Indeed(インディード)」が新たに実施する、次の一歩を踏み出そうとしている求職者と企業を応援する「Indeed Bonus Week」キャンペーンの開始発表会のスペシャルゲストとして俳優の斎藤工とともに登壇した。

11月9日「Indeed(インディード)」のイベントに俳優の斎藤工と共に登場した村上茉愛

 体操選手を引退し、まさに次の一歩を踏み出したばかりの村上は、「今日が(引退後の)始めての仕事ということで、体操以外のお仕事の経験があまりないのでものすごく緊張しているんですけど、次の一歩に向けて頑張っていきたいと思います」と意気込みを語った。

 幼少期から体操中心の生活を送ってきただけに、求職経験もアルバイト経験もまったくないというが、「趣味の一つとしてハンバーガー屋さんをめぐるのが大好きで、体操以外にまったく何もやらないんだったら、ハンバーガー屋さんを経営してみたいと思ったことが一度だけありました」とコメント。人生初の求職体験としてハンバーガーショップの求人をIndeedで検索した。

 現役時代とは異なる仕事体験をしたことについて心境を問われると、「今日みたいに経験したことがないお仕事だと、穴がポッカリ空いたような状態で来る感覚なので、緊張する機会は今までよりも多くなるんだろうなと思います。もっといろんな情報を取り入れて、自分に生かしていけるように頑張りたいです」と感想を述べた。

 今後は体操の指導を中心に活動しながらも、このようなイベントやメディアに解説などで登場する機会も増えていくだろう。初めての企業のイベントにもかかわらず、緊張せずにスペシャルゲストとしての大役を務めることができたのは、世界の大舞台で活躍してきたからに間違いない。幅広いジャンルで活躍する人たちと積極的に触れ合い、現役時代には接することがなかった情報を入手し、視野をどんどん広げてほしい。

 日本人女子選手がオリンピックの体操競技でメダルを獲得したのは、1964年東京オリンピック団体総合(銅メダル)以来57年ぶりで、個人で獲得したのは村上しかいない。指導者としての村上にかかる期待も大きい。学ぶべきことは多いと思うが、まだ25歳で指導者としての伸びしろはたっぷりある。体操以外の分野で得た知識も体操の指導に生かし、2024年パリ五輪、2028年ロサンゼルス五輪、2032年ブリスベン五輪のメダリスト育成と、仕事人としての村上の新しいキャリアに期待したい。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。