第1部はテニスの楽しさを学ぶプログラム。
1000人を超える応募から抽選で選ばれた小学3~6年の30人がテニピン(手のひらを包むラケットを手 にはめてスポンジのボールを打ち合うゲーム)でボールを打つ感覚を養い、体を動かす楽しさを体感した。錦織も時に冗談を交えながら真剣な表情でプレー。ゲーム形式のメニューでは勝ちにこだわる負けず嫌いの一面ものぞかせた。

 第2部は誰もが簡単に取り組むことができる様々なサステナビリティ活動を学ぶプログラム。テニスボールの再利用やペットボトルを使用したリサイクル素材で作られたテニスウェアなどが紹介され、地球環境を守るために何ができるかを考えた。ユニクロの業種を生かした「服のチカラ」を考えるパートでは、普段着用する服がリサイクルで世界の子どもたちのために役立つことを、映像などを通して学習した。

錦織も子供たちに交ざって〝授業〟に聞き入り、日常生活からサステナビリティを意識する重要性を再認識。 「日頃の幸せが普通ではないと感じることが第一歩になる。服の再利用は大事だと思うので、自分ができる最低限のことをやっていきたい。正解はないと思うので、できる範囲のことを無理せずやりたい」と感想を口にした。

 第2部の終盤には「努力」「挫折」「感謝」をテーマにしたトークセッションも実施され、錦織が子どもたちに向けて、チャレンジし続けることの重要性を力説。「上に行くために、ときには犠牲も必要。自分が楽しいと思えているから、今日までテニスを続けられているが、自分の好きなことでも、嫌だなと思うことはある。それを乗り越えれば同じくらい楽しい時がやってくると信じて、努力し続けてほしい。どんな仕事もそう。生きていくためにも、努力は必要です。普通に生きていくだけなら普通にしかなれません」と熱いメッセージを送った。

 第3部は日本テニス協会が選抜したトップジュニアの9選手に、錦織が実技指導するプログラム。自身もジュニア時代に松岡修造氏の指導する〝修造チャレンジ〟を飛躍の足掛かりにした過去がある。「(ジュニアの)トップ選手と触れ合う機会は少ない。短い時間のアドバイスで(技術面を)変えるのはリスクがあるので、難しいところはある」とした上で「僕も10、11歳ぐらいの時に日本代表の方にクリニックしてもらえて、大きな経験値になった。僕も力になれたらうれしい」と精力的に指導。試合形式のメニューなどを通して真剣な表情でアドバイスを送った。

最後は将来有望な金の卵たちに向け「テニスに対する情熱など、そういった気持ちの部分は教わることができない。頑張っている自分の背中を見て、そういった気持ちになってもらえたら嬉しい。自分の努力が足りているかは〝神のみぞ知る〟ですが、トップになるには努力が必要。トレーニングも練習も試合も、全力を出して、毎日力を注ぎ込むことが大事。今できる練習、そして試合を楽しむことを大切にしてください」と語りかけた。

右肩の故障から復帰した今季の錦織は4大大会では全仏オープンの16強が最高成績。東京五輪8強など夏以降は調子を上げたが、10月に腰痛を発症してシーズンを完走できなかった。ここ数年はケガに苦しみ、自己最高位4位の世界ランキングは47位まで低下。29日に32歳となるベテランだが「いろいろなことを試して、まだまだ成長を感じる。テニスの楽しさは衰えていない。疲れるはあるが、飽きない」と情熱は衰えていない。

今後の目標は世界ランキング1桁への返り咲き。上位にはメドベージェフ(ロシア)、ズベレフ(ドイツ)、チチパス(ギリシャ)、ルブレフ(ロシア)ら20代前半の選手が多く世代交代が進む。それでも錦織は「まだまだできると思っている」と力を込め「子供たちとの交流で、僕もいい時間を過ごせた」と充実した表情を浮かべた。少年少女に刺激を与え、自らも新たなモチベーションを得た4時間のイベント。子供たちはもちろん、錦織にとってもかけがえのない時間となった。

木本新也

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