――2023年シーズンを振り返ると、女子ダブルスでWTAツアーでの優勝2回、第2のツアー最終戦であるWTAエリートトロフィー(中国・珠海)で準優勝。さらに、自己最高となるWTAダブルスランキング27位(12月11日付)を記録しました。加藤さんにとっては、満足度の高いシーズンになったのではないでしょうか。

加藤:年始のオークランドで優勝できて、最後の大会で準優勝だったので、いい始まりができていい終わり方ができた本当に充実した1年でした。やっぱり女子ダブルスで、今のパートナーと優勝したいという思いが強くなって、新たな目標が明確になった1年でもあったので、そういった意味でもすごく充実していました。

――ダブルスパートナーのアルディラ・スチアディ(26位、インドネシア、28歳)ですが、プレーとか性格とか、彼女の何が良くて、加藤さんは良いプレーができると考えますか。

加藤:性格的にすごく明るい子で、常に笑顔です。苦しい時も前向きなので、私としてもやりやすくて、助かるところです。プレーでは、私が前衛にいる時に、ポイント取得率が高いのですが、彼女が後衛からボールを作ってくれるので、私は前衛として動きやすい。プレーの相性が良くて、いいコンビネーションだと感じています。

――1月のWTA250オークランド大会(ニュージーランド)での優勝までの道のりで、1回戦と準決勝と決勝が、10ポイントマッチタイブレークでした。8月のWTA250クリーブランド大会(アメリカ)の優勝の時は、準々決勝から決勝まで3戦連続で、10ポイントマッチタイブレークを制しました。10ポイントマッチタイブレークに、二人が強い秘訣はありますか。

加藤:先に相手にポイントを取られても、二人であきらめない気持ちが強いです。逆に、自分たちが先行して、追いかけられても、切り替えられるのが強みかな。1ポイントの重みがあるので、しっかりそれを理解してできているのでは。やっぱり競った時に、どれだけ勇気を出して攻めれるか、だと思うので、そこはこれからも果敢に行きたいです。

――2023年のグランドスラムの女子ダブルスでは、シードが付くようになって、オーストラリアンオープン、ローランギャロス、ウィンブルドン、USオープン、4大会すべてで3回戦進出。この結果についてはどうですか。

加藤:全豪では、グランドスラムでのベスト16が久しぶりだったので、嬉しくて「やった~」という感じだったんです。ウィンブルドンでは、グラス(天然芝)コートがあまり得意ではなかったので、すごく嬉しい結果でした。でも、全米の時に、もう一段階上に行かないと、やっぱりトップ10が見えてこない、と。ノーシードのペアに勝っているけど、シードの付いたペアと対戦した時に、どう組み立てて、攻めるかをもう少し考えて、積極的に行かないといけないという課題が見つかった。

 ツアーでも、ベスト4は何回かあった。WTA1000の大会ではベスト8に入ったり、インディアンウェルズではベスト4だったりしたんですけど、もっと大きいWTA500やWTA1000で優勝しないと、上には上がれないことを痛感した2023年でもありました。もう一段階上には行きたいですね。

――ローランギャロス女子ダブルス3回戦での失格処分は、一時日本でも大きな話題になりました。あれから時間が少し経過しましたが、加藤さんの心の中では整理できているのでしょうか。

加藤:もう今はそうですね。どうにもこうにも時計は戻らないし。ポイントとかも戻ってこないので。今は前を向いています。当時、反響が大きかったですが、いい反響もあって、何かすごく救われましたね。大会の関係者やトランスポートの人からも励ましてもらいました。フレンチの後、オランダ、ウィンブルドン、アメリカ、中国の大会でプレーしましたが、どこに行っても声をかけてもらえたので、認知はされているし、みんなが応援してくれているのがわかったので、前向きになれるきっかけでもありました。それは、すごく嬉しかったです。
――2023年ローランギャロスでは、女子ダブルス失格処分後に、ティム・プッツ(ドイツ)と組んだミックスダブルスでの劇的なグランドスラム初優勝がありました。あらためて、あのタイトルは、加藤さんにとってどんな意味がありますか。

加藤:自分の中では、グランドスラム優勝が一番大きなタイトルだったので、すごく嬉しかった。グランドスラム優勝は、テニスを始めた誰もが思うであろうタイトルで、それを実現できたのは、自分のキャリアの中ですごく大きな意味を持ちます。シングルス、ダブルス、ミックスダブルスの3種目の中の一つで、グランドスラム優勝ができたので、今後、女子ダブルスでも、(この経験を)活かせるんじゃないかと思います。

――テニスの4大メジャーであるグランドスラムで優勝することは、世界のテニスの歴史に名前を残すことだと考えるのですが、加藤さんはどのような受け止め方をしていますか。

加藤:お世話になった人に、「グランドスラムで優勝している人って、本当に少なくて、すごいことだよ。タイトルを欲しくても持っていない人の方が多いんだから」って言われたことがあって、少しは胸を張っていいのかなと思ってます。

――グランドスラムチャンピオンとして、加藤さんの故郷である京都に凱旋した時の気持ちはどうでしたか。2023年7月に、京都府スポーツ賞特別栄誉賞と京都市スポーツ最高栄誉賞を受賞しました。

加藤:地元に帰って、いい報告ができたのはすごく嬉しかったです。ジュニアの頃から賞をいただける機会があったんですけど、やっぱり一番良い賞をいただきたいと思っていたので、それが叶って嬉しい。お世話になった地元に恩返しができてよかったです。(門川大作)京都市長から温かいお言葉をかけていただきました。

――2013年にプロへ転向した加藤さんは、ツアー生活が長くなりましたが、海外転戦中に、加藤さんなりの気分転換の方法はありますか。

加藤:その土地の有名な食べ物をチェックしたり、有名な場所には行ったりします。国それぞれの文化に触れることが好きで、それでリフレッシュできたりします。休みの日には、お酒を飲んですっきりしたりして、息抜きしています。ジュニアの頃は、周りに興味がなくて、全然外に行かなかったんですけど、プロになってから、せっかく来ているんだから、外に出た方がいいなとある時から思えるようになって、行くようになりました。

 私は、ギラギラした街が好きなので、ドバイ(アラブ首長国連邦)が好き。自分の世界一になりたいという思いと相まって、世界一の建物があったり(ブルジュ・ハリファ全高829.8m)、世界一速い乗り物(スーパーカーやジェットコースター)があったり、すごく楽しい。ブルジュ・ハリファのバーに行ったり、アフタヌーンティーに行ったりもします。

 あと、ヨーロッパの古い街並みも好きですね。ヨーロッパだったら、どこでもちょっと路地に入るだけで、いい雰囲気じゃないですか。

――1994年生まれの同期である尾﨑里紗さん、澤柳璃子さんは現役を引退しました。一方、日比野菜緒、穂積絵莉、二宮真琴は、今もツアーで頑張っています。あらためて、“94年組”の存在は、加藤さんにとってどんなものか教えてください。

加藤:若い時は切磋琢磨して、お互い高め合っていました。負けたくない存在でもありました。特に、菜緒は、同じ拠点で練習していて、苦しいトレーニングも一緒にやっているので、一緒に上に行きたいと思い続けています。

――2024年シーズンの目標を聞かせてください。

加藤:(2024年は)オリンピックイヤーなので、パリオリンピックに出場したいですし、ミックス優勝によって、女子ダブルスでの可能性が今まで以上に広がったと思うので、やっぱり優勝したいです。最終的な目標は、ナンバーワンになることなので、早くトップ10に入っていきたいとも思います。(女子ダブルスの)パートナーは、引き続きアルディラです。

 2023年のWTAファイナルズ(世界のトップ8チームだけが出場できるツアー最終戦)は、あと少し足りなかったんです。まだ出たことがないですし、行ってみたい大会の一つです。今年も、アルディラと出たいねと話していたのですが、2024年は出場への気持ちがより強くなると思うので、目標にしていきたいですね。

――ローランギャロスで開催されるパリオリンピックは、より特別に感じる部分はあるのでしょうか。

加藤:より出たいですね。ローランギャロスは、失格になった大会ではあるんですけど、それ以上に好きな大会です。(大会サーフェスであるレッド)クレーコートも好きです。以前は、「出たいなぁ」ぐらいだったんですけど、パリオリンピックに関しては、何としてでも出たいという気持ちに変わったので、実現できたら最高ですね。

 テニスの場合、グランドスラムの方が大事という人が多いんですけど、日本は、海外よりもオリンピックを応援したいとか、オリンピックへの思いが強い国。それは私の中にもあるので、やっぱり出たい。私の祖母が、オリンピックでプレーしているのをテレビで見たいと言っているので、それも実現したいです。

――2024年にトップ10入りを実現させるために、技術、フィジカル、メンタルなど、自分のこの部分を進化させたいという部分はありますか。

加藤:最近の女子ダブルスでは、シングルスもやっている人が勝っていたりします。例えば、(ココ・)ガウフ(シングルス3位、ダブルス3位)や(ジェシカ・)ペグラ(シングルス5位、ダブルス3位)。シングルスもやっている人と打ち合った時に、いかについていけるか、そこで打ち合えるか組み立てられるか、が大事だと思うんです。そういう相手にも負けないフィジカルを作っていくことですね。これまで、前衛でのボレーは得意なんですけど、シングルスをやっている人って、結構ストレートアタックをやってくるんですけど、ダブルス専門の人よりショットの威力があるので、そこをいかに止められるかも大事。シングルスもやっている選手に負けずに打ち返すことを取り組んでいるので、もっともっと上げていきたい。  
 
 さらに例を挙げると、(ベアトリス・)ハダッドマイア(シングルス11位、ダブルス24位)のペアと対戦した時、相手になっていないなと思わせられるほどやられちゃうこともあって、「私たち、シングルスもやっている選手に弱いよね」と(アルディラと)話し合ったこともあったんです。威力もそうだけど、スピンの量も結構あるので、自分の手元でボールが落ちてくる感覚があるので、対策をしながら強化していかないといけない。

――2024年は、加藤さんにとって、20代最後のシーズンになりますが、より気合いを入れるのか、それともいつもどおりで臨むのでしょうか。

加藤:あんまり年齢にはこだわっていないけど、29歳でもまだまだ自分は若い気持ちでやっているし、他の人より動けると思っています。28歳がすごくいい年だったので、29歳はもっといい歳になるんじゃないかという予感はあるので、トップ10に入れたらもっと幸せかな。


神仁司

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)勤務の後、テニス専門誌の記者を経てフリーランスに。テニスの4大メジャーであるグランドスラムをはじめ数々のテニス国際大会を取材している。錦織圭やクルム伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材も行っている。国際テニスの殿堂の審査員でもある。著書に、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」がある。ITWA国際テニスライター協会のメンバー 。