4月終了時点での借金15が最後まで大きく響くことに

 横浜一筋25年の現役生活を全うした「ハマの番長」三浦大輔氏を待望の1軍監督に据えた2021年のDeNAだったが、船出は極めて厳しいものとなった。最大の誤算は、新型コロナウイルス感染拡大による政府の入国制限。育成を含む外国人全10選手が開幕までに来日できないという緊急事態に陥った。

 もちろん、同様の状況を強いられた他球団もあったが、主砲のタイラー・オースティン外野手、場面を問わず登板するタフネス左腕エドウィン・エスコバー投手、新たに大型契約を結んだ2018、19年本塁打王のネフタリ・ソト内野手と、特に近年は助っ人が中核を担うチーム編成となっていただけに、影響は甚大だった。戦力ダウンはもちろんのこと、キャンプに参加できなかったため映像を介してのコミュニケーションには限界があり、新しい打撃フォームに取り組み“ぶっつけ”で公式戦に臨んだソトは適応に時間がかり、最後まで苦しむ結果になった。4月中旬まで“純和製打線”での戦いを強いられたチームは、佐野恵太外野手、宮崎敏郎内野手ら主軸が執拗なマークに遭い低迷。三原一晃球団代表が謝罪する異例の事態にまで発展した。

 手術を受けた今永昇太投手、東克樹投手が開幕に間に合わなかった投手陣も、当初から不安視されていた。京山将弥投手やドラフト1位・入江大生投手(明大)ら年間を通してローテーションで回った経験のない投手が開幕ローテに入る形となり、昨季抜群の安定感を誇った平良拳太郎投手はすぐに右肘の違和感を訴え離脱。6月に右肘内側側副靭帯再建手術(トミージョン手術)を受けるなど、まさに火の車状態だった。

 若手先発陣は5回をもたずに降板を繰り返し、立候補して初の開幕投手を勝ち取った浜口遥大投手は奮闘するも各球団のエースとの対決では分が悪く、チームは大型連敗を繰り返した。この状況に「視野が狭くなっていた」と三浦監督が振り返るように、不調でも勝ちパターンで起用し続けた石田健大投手がたびたび痛打を許し、ビハインドでも起用し登板数が増えた山崎康晃投手、三嶋一輝投手も後半戦にかけて調子を落とす結果となった。まさに、新人監督の「信頼」や「こだわり」が裏目に出た序盤戦といえた。

 4月終了時点で6勝21敗4分け。借金15は2003年以来で、結局これが最後まで大きく響くことになった。最終成績は54勝73敗16分けの最下位。10月26日の本拠地最終戦では、目の前でヤクルトの胴上げを許す屈辱も味わった。

選手の奮闘にみえた確かな“光”

 ただ、逆に言えば5月以降は、ほぼ勝率5割で戦えたということでもある。勝率5割なら3位の巨人(今季勝率.496)と変わりない成績。Aクラスでのクライマックスシリーズ(CS)進出は十分可能な成績だ。確かに、それは結果論であり、机上の計算に過ぎないかもしれない。しかし、後半戦の戦いぶり、選手の奮闘には、確かな“光”があった。ドラフト2位で入団した中大出身ルーキー・牧秀悟内野手は守備負担の大きい二塁を本職としながら、過去に1958年の長嶋茂雄(巨人)、1981年の石毛宏典(西武)、1986年の清原和博(同)しかいなかった新人での「3割&20本塁打」の偉業を達成するなど数々の新人記録を樹立。驚異的な活躍を見せた。桐蔭学園高からドラフト1位で入団し2年目の19歳、森敬斗内野手は昨季(8試合)を大きく上回る44試合に出場し、いずれも左中間への打球で2本の三塁打をマークするなど大器の片鱗を見せた。

 新戦力だけではない。近年成績が右肩下がりだった桑原将志外野手が打率.310、14本塁打、43打点で不動の1番打者に定着し、同じく砂田毅樹投手は58試合に登板し被打率.182の安定感を発揮してブルペンの軸となるなど復活を遂げた。牧、桑原に加え、2年連続でハイアベレージを残した佐野、宮崎、規定に4打席満たなかったもののオースティンと、5人の3割打者が誕生し、課題の投手陣も来日1年目のフェルナンド・ロメロ投手が日本の野球、ボールに順応した後半戦で5勝をマーク。手術から復帰した今永、東が白星を飾るなどエース級の活躍が期待される来季の完全復活へ道筋をつけた。外国人の来日遅れという今季と同じ轍を踏むことも考えにくく、来季は序盤から“完全体”のチームで開幕を迎えられる可能性が高い。さらに、近年にはなかったオフの“派手な動き”が、ファンの期待を高めている。

「新コーチ陣」に「戦力面での補強」で24年ぶりの優勝へ

 最大の変化はコーチ陣。三浦監督とともに1998年の日本一に貢献した石井琢朗氏、斎藤隆氏、鈴木尚典氏が入閣し、それぞれ野手総合コーチ、チーフ投手コーチ、打撃コーチとして古巣に復帰した。今季まで巨人で指導していた相川亮二氏がバッテリーコーチ、データ分析に長ける小杉陽太氏が2軍投手コーチに就き、多くの大投手を育てた名伯楽・小谷正勝氏のコーチングアドバイザー就任も決まった。これだけの“大物コーチ”を一気に招聘した例は近年になく、広島や巨人で優勝への大きな力となった石井コーチをはじめ、いよいよ三浦監督のバックアップ体制強化に本腰を入れて乗り出した形。特に、石井コーチや斎藤コーチは、運営母体がDeNAになる以前に前身球団と袂を分かった歴史があるだけに、往年のファンも喜ばせるドラマチックな展開に、複数のスポーツ紙が1面で大々的に取り上げるなど話題を呼んだ。

 新コーチ陣の“効果”は、既に出始めている。11月の秋季トレーニングから早くも積極的にチームとコミュニケーションを取り、三浦監督は「プラスになることはいっぱいあった。新しい視点、外から見たDeNAなど意見交換もできた。来季に向けてどんどん新しいものを生み出していければいい」と手応えを口にした。豊富な経験に基づく指導力はもちろん、石井、斎藤、相川コーチは直近までライバルチームに所属しており、セ・リーグの戦い方を熟知していることは大きなアドバンテージにもなる。期待の森を個別指導するなど、早速選手育成に乗り出した石井コーチは「番長の背中を見て守ってきた。今度は番長の背中を胴上げできるように」と熱い思いも吐露。「98年の歓喜」再来へ、チームの結束は確実に強まっている。

 戦力面でも抜かりはない。昨オフは梶谷、井納がともに巨人へFA移籍したが、今オフは宮崎と6年総額12億円プラス出来高払いの大型契約を結んで引き留めに成功。同じくFA組の大和内野手、山崎康晃投手の残留も決まった。エスコバーとは新たに2年契約、ロメロとは2023年の球団オプション付きで合意した。

 流出を阻止するだけでなく、戦力拡充にもいち早く動いている。日本ハムから再契約の可能性を残しながらの自由契約「ノンテンダーFA」となっていた大田泰示外野手を3球団ほどが興味を示す中、争奪戦を制して獲得。補強ポイントとなっていた長打力のある右打ちの野手をラインアップに加えた。昨年に外野手部門でゴールデングラブ賞に輝き、走攻守で貢献できる実績十分の野手は、一発に頼り淡白になりがちな面もある打線に新たな風を吹き込める存在といえる。

 さらに、今季米マイナーで驚異の奪三振率13.2をマークした強力リリーバーのブルックス・クリスキー投手(前オリオールズ)、実績十分の守備職人で10年ぶりの古巣復帰となる藤田一也内野手(前楽天)も矢継ぎ早に獲得。守護神候補になり得る助っ人投手、若手に好影響を与えられるベテラン野手と、“空白”を埋める補強を着々と進めている。

 今季、日本シリーズを戦ったヤクルト、オリックスはいずれも前年の最下位からのリーグ優勝を飾ったチーム。的確な補強やマネジメント次第で大きく結果が変わることは証明されている。もちろん、それはDeNAにも当てはまる。「一番下ですから、はい上がるしかない」と視線を切り替え「今年までやってきたことと、新しく入ってきたものをうまく融合して、新しいベイスターズを築きたい」という三浦監督。グラウンド内外の活発な動きが、横浜に24年ぶりのリーグ優勝、日本一をもたらす可能性は十二分にある。

VictorySportsNews編集部

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