注目のグループCを展望する上で、まずは欧州予選の開催方式をおさらいする。欧州のW杯出場枠は13。予選では各グループ1位(10チーム)が本大会への出場権を獲得し、同2位の10チーム、UNLの上位2チームの計12チームがプレーオフに進出する。プレーオフは、12チームが3グループに分かれ、ミニトーナメントの形で対戦。勝ち抜いた3チームだけが出場権を得る。

 昨年11月26日、スイス・チューリヒの国際サッカー連盟(FIFA)で行われた組み合わせ抽選で、C組に入ったイタリアは北マケドニアと、同じくポルトガルはトルコと3月24日の準決勝で戦い、それぞれの勝者が同29日の決勝で対戦することとなった。「最高の結果とは言い難い」とイタリア代表のロベルト・マンチーニ監督が嘆けば、ポルトガル代表のフェルナンド・サントス監督は「イタリアのことを考えるのは早い。まずトルコだ」と強調。一方で、オーストリアのフランコ・フォーダ監督が「彼らを避けられてラッキーだ」と話すなど、当事者以外からは直近2大会の欧州王者がつぶし合う展開に歓迎の声が多く上がった。

 もちろん、両チームはまず準決勝で勝ち上がる必要がある。特にポルトガルと対戦するトルコは、過去に2度のW杯出場を果たしている中堅国で楽に勝ち上がれる相手とは言い切れない。ただ、両国が順当に勝ち上がろうと、波乱が起きようと、そのどちらかしかW杯に出られないことに変わりはない。

イタリア代表の“切り札“

 両チームの戦いを占う上で、注目されるのが前線の選手の存在だ。イタリアは、このプレーオフに向けて“切り札”となり得る新戦力を招集した。セリエA・カリアリに所属するブラジル出身のFWジョアン・ペドロだ。

 昨年11月15日の欧州予選最終節で、北アイルランドに0-0で引き分けたイタリアは、ブルガリアに4-0と大勝したスイスに逆転され、2位に転落。W杯へのストレートインを逃した。昨秋の予選5試合中、2試合でノーゴールと決定力不足は深刻で、その打開策としてイタリア・サッカー連盟が探ってきたのがブラジルとイタリアの二重国籍を持つペドロの招集だった。

 ペドロは10年にブラジルのアトレチコ・ミネイロからセリエA・パレルモに移籍。11年にイタリア人女性と結婚し、17年にイタリアの市民権を取得した。14年からプレーするカリアリでは背番号10を付け、主将も務めるなどエースとして君臨。昨季はリーグ10位の16得点を挙げ、欧州5大リーグで最もゴールを決めたブラジル出身選手となるなど鮮烈な輝きを放った。今季もリーグ28試合で10得点をマークし、好調を持続している。

 ただ、問題はU-17ブラジル代表への招集歴があったこと。イタリア代表入りが可能か流動的な部分があったため、イタリア連盟がFIFAに問い合わせを行っていた。FIFAから正式に「OK」の回答が届いたのが今年1月5日。マンチーニ監督は早速、1月末にフィレンツェ・コベルチャーノで行ったトレーニングキャンプに35人の代表候補の一人として初招集。そして、3月18日に発表されたプレーオフのメンバーにも晴れて選出された。

 4-3-3が基本布陣のイタリアだが、求められているのは3トップの頂点に入るセンターFWとしての役割だ。チロ・インモービレ(ラツィオ)は昨夏のEUROで2得点にとどまり、インモービレが故障で欠場した昨年11月の北アイルランド戦はロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)が先発したが無得点に終わった。本職はセカンドFWながら、センターFWとしての適性も高いペドロは、前線の“補強”へベストマッチの人材といえる。

 また、マンチーニ監督はペドロのみならず、DFにもブラジル出身の初招集選手を迎えた。ルイス・フェリペ(ラツィオ)だ。16年にブラジルのイトゥアーノからラツィオに移籍。今季は不動のセンターバックとしてセリエAで5位につけるチームを牽引している。自身はブラジル・サンパウロ生まれだが、イタリア出身の両親を持つことからイタリア代表入りが可能となった。

 日本でもかつてFW呂比須ワグナー、MF三都主アレサンドロ、DF田中マルクス闘莉王がいたように、現在のイタリア代表にはMFジョルジーニョ(チェルシー)、DFエメルソン・パルミエリ(リヨン)といったブラジル出身選手が数多く名を連ねており、欠かせない存在となっている。特にペドロについては、イタリア紙コリエレ・デラ・セラが「マンチーニ監督にとって不可欠な攻撃的なイタリア人」と評するなど、救世主としてイタリア国民の期待を一身に背負っている。

新旧スターの起用法が注目されるポルトガル代表

 一方のポルトガル代表のカギを握るのは、言わずと知れたFWクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)だ。といっても、これまでのような絶対的存在としての注目ではない。この土壇場においても、サントス監督がロナウドと“心中”するのか否かに、同国メディアやファンの関心が向いている。

 これまで5度のバロンドールに輝き、国際Aマッチで115ゴールを積み上げてきたロナウドも、もう37歳。常識的に考えればセンターFWとして旬を過ぎた年齢で、2月15日のブライトン戦で2022年初ゴールを決めるまで6試合連続ノーゴールという自身09年以来の無得点記録が話題になったこともあった。

 もちろん、6試合ゴールを決められないことがニュースになること自体が圧倒的な存在であることを裏返しではある。昨季はユベントスで29得点を決めてセリエA得点王に輝き、マンチェスターUに復帰した今季もリーグ3位の12ゴールを決めるなど、高いレベルを維持していることも間違いない。ただ、往年の輝きが鮮烈すぎるからこそ、現状への批判も渦巻く。

 そんなロナウドを上回る活躍を見せるポルトガル人アタッカーの存在も、ロナウドの“絶対不可侵性”に一石を投じている。25歳の新鋭FWディオゴ・ジョッタだ。イングランドプレミアリーグの得点ランキングではロナウドを上回る13得点を挙げて2位。左右両足の差なくゴールを決められる技術、決定力の高さが一躍注目されている。

 昨年11月14日の欧州予選最終節でセルビアとホームで対戦したポルトガルは、引き分けでも首位突破を決められる状況にあった。しかし、試合終了間際にFWアレクサンダル・ミトロビッチ(フラム)のヘッド弾を許し、1-2で敗えた、3月27日のアウェーでの対戦では2-2の後半ロスタイムにゴールラインを越えたかに思われたロナウドのシュートが認められず“世紀の誤審”として話題になった。結局、その1点が運命を分けた形だ。

 そうした戦いで、常に批判されるのが、前線と後衛の連携のちぐはぐさ。昨夏のEUROでもベルギーに0-1で敗れてラウンド16であっさりと敗退。個の能力、いわばロナウドの能力に頼った攻撃が目立つ結果となった。

 英サッカー情報サイト「Squawka」は「今季のプレミアリーグで活躍するポルトガル人選手トップ10」を先日発表。そこで、ロナウドは6位に甘んじたのも象徴的な出来事だ。1位はMFベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)、2位はMFブルーノ・フェルナンデス(マンチェスターU)、3位がジョッタ。4位には昨季のプレーヤー・オブ・ザ・シーズンに輝いたDFルベン・ディアス、5位はDFジョアン・カンセロ(ともにマンチェスターC)が名を連ねた。これだけ世界屈指のタレントをそろえるのがポルトガル代表。ロナウドを絶対的な中心に据えたチームづくりをする必然性は薄れつつある。

 とはいえ、さまざまな逆境を跳ね返し、圧倒的な勝負強さを見せてきたのもロナウドという男だ。3月12日のトッテナム戦ではハットトリックを決めてプロ通算807得点の世界記録を達成するなど、ここにきて“復調気配”も漂わせる。エウゼビオとともにポルトガル史上最高の選手と称される点取り屋を外すリスクを選べる監督も少ないだろう。これまで通りセンターFWとしてアタッカーのジョッタと共存することも可能で、変革か、安定性かで言えば、サントス監督の性格上、後者を選ぶ可能性は高いとみられる。

 いずれにしても、両国が順当に勝ち上がり、直接対決で雌雄を決することになれば、サッカー史に刻まれる一戦となるのは間違いない。“新戦力”による刺激でチームの活性化をもくろむイタリア代表か、新旧スターの起用法が注目されるポルトガル代表か。3・29。運命の時が迫る。

W杯カタール大会・欧州予選プレーオフ日程

■3月24日(日本時間25日午前4時45分キックオフ)
・「グループA」準決勝
 スコットランド vs ウクライナ(延期)
 ウェールズ vs オーストリア
・「グループB」準決勝
 ロシア vs ポーランド(中止)
 スウェーデン vs チェコ
・「グループC」準決勝
 イタリア vs 北マケドニア
 ポルトガル vs トルコ

■3月29日(日本時間30日午前3時45分キックオフ)
・「グループA」決勝(延期)
・「グループB」決勝・ポーランドVSスウェーデン-チェコの勝者
・「グループC」決勝・イタリア-北マケドニアの勝者VSポルトガル-トルコの勝者


VictorySportsNews編集部