3月25日、横浜スタジアム史上最多の3万2436人が集まる中、炎の演出などによるド派手なセレモニーで迎えた2022年シーズンの開幕。読み上げられたベイスターズの開幕スタメンには、今年も外国人選手の名前はなかった。

まさかの事態だった。昨季は新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の入国制限により、手続きの都合で12球団で唯一、育成を含む外国人全10選手が開幕時に不在。球団ワーストタイの開幕6連敗など序盤に大きく出遅れる要因となった。その反省から、万端の手続きを経て今年は入国制限のある新外国人を除くソト、オースティン、ロメロ、エスコバー、ピープルズが1月中に来日。隔離期間を経て、春季キャンプ初日から顔をそろえ練習を積んだ。オープン戦ではともに本塁打を放ち、順調な仕上がりを見せていた中で、ソトが右手首痛、オースティンが右肘痛を訴え開幕3日前の3月22日にリハビリ組に合流するアクシデントが起こった。

結果的には2年連続で「純和製打線」で開幕を迎えることになったが、戦いぶりは開幕6連敗、直後に10連敗を喫した昨季とは全く異なっていた。そこに、チームの進化が見て取れる。

【1】4番・牧秀悟の成長

中大からドラフト2位で入団した昨季、打率.314、22本塁打、71打点をマークしセ・リーグ新人特別賞を受賞した牧は、2年目にして開幕4番でスタート。これは球団62年ぶりのことだった。オープン戦では本塁打こそなかったが、打率.395、9打点と”2年目のジンクス”どころか、さらなる進化を印象付け、シーズンに入ると3月27日の広島戦(横浜)で4-4の八回に勝ち越しの1号ソロ。この日は九回に逆転を許し”幻の決勝弾”となったが、続く29日の中日戦(バンテリンドーム)では小笠原の外角低めをすくい上げ、逆方向となる右翼ポール際に2戦連発となる決勝2ランを放った。2死一塁と長打がほしい場面での一発に、三浦監督も「しっかりと4番の仕事をしてくれている。本当に頼もしい」と目を細めた。牧は1年目もオースティンが離脱した終盤に4番で起用され、驚異の打率.517をマーク。桑原、佐野、宮崎と昨季3割超のアベレージを残した強力打線の中で、打点王を目標に掲げる牧が持ち前の勝負強さを発揮して期待に応えている。

【2】1点を確実に取る野球

近年は火がつけば止まらない強力打線を誇ってきた反面、一発、長打頼みになる攻撃も多く、接戦をものにできなかった。今季は石井野手総合コーチを中心に新体制のもと、キャンプから「チーム打撃」「一つでも先の塁を狙う走塁」をテーマに掲げて取り組んだ。それが、分かりやすい形で表れたのが3月30日の中日戦(バンテリンドーム)。4-2の六回に7番・柴田、8番・戸柱が連続四球を選び、9番の投手・石田が犠打できっちり送り、1番・桑原が右犠飛を放って1本もヒットを打たずして得点した。チームの昨季四球数は優勝したヤクルトの「513」に対し、DeNAは「407」。石井コーチは打率以上に出塁率を重視する中で、下位打線からチャンスをつくりこの回3得点につなげた。

4月2日のヤクルト戦(神宮)では、二塁打を放った関根が、続く大和の中前打で三塁を回り、一度スピードを抑えて相手の送球が緩くなった隙に一気に本塁へ生還。三浦監督は「常に先の塁、相手の隙をつけるようにというのがうまくできた好走塁。田中、小池両コーチがいつもそういうところを意識させてくれている」と評価した。通算盗塁数1の佐野、同0の宮崎、戸柱らも例外なく積極的に次の塁を狙う姿勢を見せており、そのプレーに一気に盛り上がるベンチの一体感もある。同1日のヤクルト戦(同)では一回から佐野、宮崎がアベック弾を放つなど持ち前の長打力は健在で、そこに確実性も掛け合わせた”ハイブリッド攻撃”が磨かれてきている。

【3】ストライク先行の投球

昨季12球団ワーストのチーム防御率4.15に終わった投手陣に三浦監督が今季、キャンプから要求したのは「全員が80%以上の確率で投手有利なカウントをつくる」だった。理由は「そうすることで絶対に被打率は下がる」と明確。0-1、0-2とカウントが投手有利になるほど被打率が下がることは統計学でも証明されている。

それはもちろん打者にも逆のことが言えるため、ただ初球からストライクを投げ続ければいいわけではない。ブルペンでは多くの投手が新球習得に励むなどカウントを有利に進めるための投球づくりを、実戦ではそのための配球の工夫に努めた。その成果は早速シーズンで表れた。

開幕2カード目、3月29日の中日戦(バンテリンドーム)からロメロ、石田、浜口、上茶谷の先発4投手が4試合連続でハイクオリティースタート(7回以上、自責点2以下)を達成し、チームも4連勝を飾った。投球数を見ると、ロメロが8回91球、石田が7回97球、浜口が8回112球、上茶谷が7回80球。昨季の開幕2カード目(大貫7回118球、入江5回85球、上茶谷2回52球)と比較すると差は歴然としており、与四死球数も3、0、1、1と指揮官の期待した通りストライク先行の投球が好投につながった。

キャンプから練習してきた成果について、三浦監督は「ずっとやろうとしてきたことができてきている」と手応えを口にしつつも「これを続けていくしかない。まだ本物になったかというと、これを続けていってどう感じるかが大事。変わらずにやっていく」と繰り返した。故障で開幕に間に合わなかった今永、ソト、オースティン、森らも今後は戦列に復帰する。一貫して取り組んできた野球が”本物”になったとき、1998年以来の悲願は見えてくる。


VictorySportsNews編集部