多額の金銭が動くビッグタイトル

 CLは、出場する各クラブが高額の放映権収入を得られることもあり、コロナ禍前での年間営業収益は21億796万ユーロ(約2613億8700万円)ともいわれている。放映権料の見直しにより、20-21シーズン途中にDAZNがその権利を手放したことで物議を醸したが、その後WOWOWが獲得。リアルタイムで試合を観戦できるツールが生き残り、多くのサッカーファンが救われる結果となった。さらに、WOWOWは今年4月にも22-23シーズンのCLの放映権を獲得し、21-22シーズンに続いて2季連続での全試合ライブ配信を実現させた。さらにタイムズ紙によると、24-27シーズンの商業権が、総額150億ユーロ(約2兆円)で売却されたことがCL参加チームに通知されたという。日本国内においても、放映権の問題でこれほどの注目を集めるスポーツコンテンツは数少なく、ビジネスとしても非常に大きな存在へと成長していったCLに関して、戦術面でも両チームの注目ポイントや試合の結果を左右するキーマンを整理しておこう。

鋭さが増したゲーゲンプレス、決勝の舞台でも発動なるか

 まずは、今季のプレミアリーグにおいて最終節までもつれ込む激戦の末、わずか1ポイント差でライバルのマンチェスター・シティにリーグ王者の座を譲る形となったリヴァプール。今季の戦いぶりを振り返ると、これまで以上に徹底したハイプレスを指向し、クロップ監督が追い求めるゲーゲンプレスがより一層浸透したようにうかがえる。

 プレミアリーグ史上4人目となる得点王&アシスト王のダブル受賞に輝いたモハメド・サラーをはじめ、3トップの中央で存在感を放ち、レッズの攻撃陣を牽引するロベルト・フィルミーノ、抜群のスピードで相手の守備網を切り崩すサディオ・マネのコンビネーションは、まさにクロップスタイルを象徴とする布陣だ。また、今年1月の移籍市場でポルトから移籍金総額6000万ユーロで加入し、すぐにチームにフィットしてみせたルイス・ディアスに関しては、守備をもいとわない汗かき屋としての働きも大きく、クロップが求めるアタッカー像のすべての要素を兼ね備えているといっても過言ではないだろう。それに加えて、ディオゴ・ジョッタ、南野拓実という前線のメンバー構成は抜け目がない。南野拓実は、5月18日に行われたプレミアリーグ第37節のサウサンプトン戦において、今季リーグ戦初スタメンを勝ち取ると、見事その起用に応える形で公式戦10ゴール目をマーク。チェルシーとのFA杯決勝では出場機会がなかったものの、大会後にはファンが選ぶ大会ベストイレブンに選出されるなど、サポーターからの信頼も高まっている。限られた出場時間の中でも、コンスタントに結果を残し続けるその姿勢を指揮官も高く評価しており、勢いそのままに日本人初となる欧州CL決勝での出場にも期待したいところだ。

攻守ともに盤石な布陣をそろえる絶対的王者

 対するは、今季ラ・リーガで絶対王者として君臨したレアル・マドリードだ。クラシコでは大敗を喫したものの、最終順位では2位バルセロナ相手に13ポイント差をつけるなど、勢いに乗っている。かつて不仲説が浮上していたカリム・ベンゼマ&ヴィニシウス・ジュニオールの関係性も改善され、リーグ戦での得点はベンゼマが27ゴール、ヴィニシウスが17ゴールと、両選手だけでチームの半数以上となる44ゴールを挙げている。特に、今季のベンゼマは得点能力の高さだけでなく、周囲との連携も強化されるなど、器用さも兼ね備えた万能型ストライカーへと飛躍した印象がある。12日に行われたラ・リーガ第36節のレバンテ戦での得点により、クラブ加入後の公式戦通算得点数を「323」に伸ばした。34歳となった今もなお、衰え知らずの活躍ぶりを見せるベンゼマの活躍が、チームの欧州CL制覇の鍵となることは言うまでもない。

 それだけでなく、レアル・マドリードの盤石ぶりの一つとして、最終ラインの安定感も忘れてはならない。中でも、24歳の若さで銀河系軍団を後方から支えるエデル・ミリトンは、対人の強さを活かし、ダイナミックなディフェンスを売りにしている。昨シーズンまでは若干の粗さが目立ったものの、今季は安定感が増し、ヴィニシウスやロドリゴといった両翼へのフィードにも磨きがかかるなど、攻撃の組み立て役としての能力も長けている。かつて絶対的な存在として君臨していたセルヒオ・ラモス&ラファエル・ヴァランの穴を埋める活躍をみせた経験豊富なナチョ・フェルナンデスや、負傷離脱からの復帰を果たしたダヴィド・アラバも、ともに高いカバーリング能力でミリトンとの相性も良く、リヴァプール相手に4バックでも3バックでも順応しうる戦力を備えている。

南野拓実の出場はあるのか

 いずれにせよ、両チームとも互いの長所をどれだけ封じることができるかが勝負の分かれ目になってくるだろう。マドリードは歴代1位となる13回、リヴァプールは歴代3位となる6回と、ともにCLにおいて数多くの優勝経験のあるチーム同士の対戦。大方の予想ではマドリードがボールを保持する展開が予想されるが、リヴァプールが得意のハイプレスを仕掛けていく中で、マドリードが守備の重心を下げることなく、ベンゼマら前線の選手たちに対して中盤の3枚がいかに近い距離間で試合を進めることができるかがポイントになってくる。

 我々日本国民の期待を背に、南野拓実が決勝の舞台で輝きを放ち、栄冠を手にすることはできるのか。注目のCL決勝は日本時間29日午前4時キックオフだ。


VictorySportsNews編集部