5月・6月で20勝27敗、7月は5勝12敗で、借金5の5位まで転落。オールスター前に首位スワローズから大きく離され、メークミラクル、メークレジェンドなんて口にするのもおこがましい状況になるなんて誰が想像できました??

 3・4月で20勝11敗と好スタートを切った我らがジャイアンツ。開幕ローテーションには、期待の若手である堀田、山崎、赤星の3人が組み込まれ、打線も吉川が首位打者、岡本和がホームラン&打点王争いのトップに立つなど好調。ウォーカーの外野守備に微笑ましく一喜一憂できるくらい余裕があった。

 昨シーズン後半の大失速もあり、ジャイアンツのこれから5年、10年がどうなるかの分水嶺になると思っていた今シーズン。春先はまさに勝ちながら育てることに成功し、明るい未来が開けているんだと思っていた。もちろん、実績のない若い選手を使うこと=浮き沈みがある、ということは承知だが、ここまでひどい状況になるとはつゆ知らず…。

 プラスワン投票での小林選出に沸いたオールスターゲームも終わり、明日29日からは、いよいよ後半戦がスタート。新型コロナウィルス陽性判定による制限が外れた選手たちがどこまで回復し、どんなオーダーが組めるのかは分からないし、ちゃんと組めたとしても観ればストレスが溜まりまくった球宴前の惨状が繰り返されるのかもしれない。

 しかし試合が行われる以上、観ないという選択肢を取れないジャイアンツファンとして、後半戦観戦における3つの期待を綴ってみようと思う。

ホントお願い。来シーズンにつながる投手陣の成長に期待

 12球団で“ぶっちビリ”のチーム防御率4.09。「野球は投手力」と言われるなかで、11位のベイスターズとドラゴンズの3.57を大幅に上回るこの数字はさすがに酷い。

 そして昨シーズン30試合以上に登板した中川、デラロサ、ビエイラ、高梨、畠、大江、鍵谷、田中のうち、高梨以外ほぼ全員が戦力になっていないブルペン陣はもっと悲惨。救援防御率は4.28と、短いイニングで通常先発(先発防御率は3.98)よりもよくなる数字がさらに悪化する。

 ただ、明るい光を見るとしたら、ほぼ顔ぶれが変わっていないとされた昨シーズンと比べ、開幕ローテに入った3人に、平内や菊地、井上、山本、そして大勢らの新しい力が起用され、経験を積んでいること。残り47試合の中で、さらに経験を積み重ね、昨シーズンまでのリリーフ陣が帰ってきたときに競い合える力をつけてもらいたい。

大シャッフルが起こるかも 野手陣のサバイバルに期待

 今シーズン既に3度離脱しているキャプテン・坂本の年齢やコンディションを考えると、来シーズンはショートからのコンバートが有力。これを機に来シーズンは岡本和を含めた守備位置の大シャッフルが起こるかもしれない。

 坂本不在にショートで起用された中山、湯浅、北村らに、一時は中田や中島を押しのけてファーストに就いた増田、ウォーカー&ポランコに代わって起用されている重信、八百板、岡田ら。守備に不安があるとはいえ打力のある両外国人を早めに下げてまで使われているのは、「同じ実力なら若手を使う」というシーズン開幕前の監督の言葉通り、新しい戦力の台頭をうながしているからだと思う。

 山瀬&喜多もデビューを飾った正捕手争いも含め、シーズンオフに起こるであろう大シャッフルに向け、「生きるか死ぬかの戦い」を見せてほしい。

勝利にこだわり過ぎないワクワクする野球

 首位を独走するスワローズも、数年前のカープも、負けまくった時期に若手を育て、強いチームの礎を作ったのは明白。プロチームである以上当然ではあるけれど、「常に勝利を!」の意識が他球団よりも強い、強すぎるきらいがあるジャイアンツ。

 これが負けゲームを作れず、リリーフ陣の登板過多を生んだり、若手の積極起用にブレーキをかけている気がするし、フォアボールを連発し、チャンスで振れなくなる過度なプレッシャーを与えているように思う。

 自身もプロチームである以上、勝利を目指すのは当然だと思い、ファイターズのBIGBOSS監督が「勝たなくたっていい」とコメントしたのを聞いて、それでいいのか?と思った。実際、本当に勝利を目指してないことはないと思うが、勝利が絶対第一ではないんだと思う。

 もちろんジャイアンツが勝つのはうれしい。でも生え抜きの若手が活躍して勝つのはもっとうれしくて、何度もYouTubeを見返したくなる。負ければ悔しいし、文句も言いたくなる。でも期待の選手がやられて負けた場合、文句じゃなく次に生かせよっていう感情になる。

 開幕当初のドラゴンズファンや、清宮&万波がスタメンに名を連ねるファイターズのファンが、今シーズンは試合を観ていてワクワクすると言っていた。これも期待の若手が起用され、勝ち負けを超えるチームの明るい未来を感じられたからでは? そんな見ていてワクワクできる野球に期待したい。

◇ ◇ ◇

 FAになった大物選手がメジャーを目指すのがデフォルトになってからは、チーム強化のためには自前の選手を育成するしかなくなった。トレードの成功や他球団を戦力外になった選手の再生、外国人の大活躍ももちろんあるが、基本はドラフトで光る選手を獲得して育成することだろう。

 そんななかで、ファンのひいき目かもしれないが、ジャイアンツは育成選手を数多く獲得して3軍を組織したり、やれることはやっているように思う。ただ、常勝を目指すゆえ、チーム状態が悪くなるとFA選手や新外国人の補強に走るので、若手を試せる機会が少なくなる。

 言い方は悪いがその場しのぎの補強をするくらいなら、負け上等で若手のアピールする機会を作ってもらいたい。前半戦最後の試合になったスワローズ戦で初登板し、村上に完璧な3ランを食らった新外国人・クロールを観ていたら、すごくそう思った。

 もちろん、チームの負けが込めば、観客動員は減少し、チーム経営の面では影響があると思うけれど、そこはこれまでの蓄えでなんとかしてもらえるはず。

 そんなこんなでうまいこと3位に入って、秋のクライマックスシリーズで下剋上!なんてことは口が裂けても言わないようにするので、残りのゲームでチームの明るい未来を少しでも感じさせてほしい。だって、ジャイアンツファン人生はまだまだ長いんだから。


越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。