強豪がそろうネーションズリーグのリーグAに属するドイツは、9月23日にハンガリーに0―1、26日にはイングランドと3―3で引き分け。イタリアも同居した3組で通算1勝4分け1敗で3位にとどまった。W杯優勝4度(西ドイツ時代を含む)を誇る伝統国らしい勝負強さが戻ってきたとは言いがたく、ハンジ・フリック監督は「全ての選手が、やり続けていくことが大事。チームとしてもっと上を目指せるはずだ」と満足していない。

 大会2連覇を狙いながら前回のW杯ロシア大会は1次リーグ敗退の屈辱にまみれ、昨年の欧州選手権後に就任したフリック監督の下で復権を期す。W杯欧州予選は強豪不在のJ組を9勝1敗の好成績。予選突破一番乗りでカタール行きの切符をつかんだ。しかし、本大会に向けては盤石とは言えず、優勝候補と呼べるまでの圧倒的な強さはまだ備わっていない。

【ドイツのネーションズリーグ戦績】
※左から、日付、スコア、相手、得点者
6/4 △1-1 イタリア(A) キミヒ
6/7 △1-1 イングランド(H) ホフマン
6/11 △1-1 ハンガリー(A) ホフマン
6/14 〇5-2 イタリア(H) キミヒ、ギュンドアン(P)、ミュラー、ウェルナー②
9/23 ●0-1 ハンガリー(H)
9/26 △3-3 イングランド(A) ギュンドアン(P)、ハーバーツ②

 基本布陣は4-2-3-1。ハンガリー戦はティモ・ウェルナー(ライプツィヒ)、イングランド戦はカイ・ハーバーツ(チェルシー)がワントップで先発した。ウェルナーはスピードを生かして守備陣の裏を狙うタイプで、ハーバーツは2列目でもプレーできるアタッカー。いずれも、前線の中央でどっしり構えてクロスを待つ「9番」タイプではない。2列目の先発候補のレロイ・サネ、トーマス・ミュラー、セルジュ・ニャブリ、ジャマル・ムシアラ(いずれもバイエルン・ミュンヘン)との相性やコンディションで本大会での起用の組み合わせが決まるだろう。ハーバーツはイングランド戦で後半にトップ下にポジションを変えてから2得点したが、チームが勝てなかっただけに攻撃陣の最適解はまだ見つけられていない印象だ。

 試合運びの面ではハンガリー戦が69%、イングランド戦も58%のボール保持率をマークした。中盤のヨシュア・キミヒ(バイエルン・ミュンヘン)やイルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティー)を中心とした組み立てで相手を押し込む時間帯が長かったとは言え、チーム全体で前掛かりになっている分、ボールをひとたび失うと一気にカウンター攻撃を浴びてピンチを招くことも多かった。これは前回W杯の1次リーグ初戦で敗れたメキシコ戦と同じ傾向で、ドイツが解決できないままの「隙」といえる。

 W杯では日本もドイツにボールを持たれる時間が長くなりそうで、いかにいい形で球を奪って攻撃に転じられるかが大きな勝負のポイントとなるだろう。ドイツの守備陣はアントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)、ニクラス・ズーレ、ニコ・シュロッターベック(ともにボルシア・ドルトムント)がセンターバックの中心となるが、スピード十分の伊東純也(スタッド・ランス)らの速攻に活路を見いだしたい。

 スペインは9月24日のスイス戦に1―2で敗れたものの、27日にポルトガルを1―0で下して通算3勝2分け1敗でリーグAの2組でトップとなり、来年6月の準決勝進出を決めてW杯へ弾みをつけた。W杯は2010年南アフリカ大会で頂点に立った後、14年大会は1次リーグ敗退、18年大会はベスト16止まりだっただけに、今大会は久々に存在感を示したいところだ。

【スペインのネーションズリーグの戦績】
※左から、日付、スコア、相手、得点者
6/2 △1-1 ポルトガル(H) モラタ
6/5 △2-2 チェコ(A) ガビ、マルティネス
6/9 〇1-0 スイス(A) サラビア
6/12 〇2-0 チェコ(H) ソレル、サラビア
9/24 ●1-2 スイス(H) アルバ
9/27 〇1-0 ポルトガル(A) モラタ

 基本布陣は4-3-3。欧州サッカー連盟によると、ネーションズリーグは1次リーグ6試合を通じて最高の平均68・5%のホール保持率を誇り、パス成功率は全チームの中で唯一の90%超えとなる90・2%をマークした。とことんボール保持を追求し、パスで相手を揺さぶるというスペイン・サッカーの哲学は脈々と受け継がれている。

 2002年生まれのペドリと、04年生まれのガビの若手コンビにセルジオ・ブスケツを加えたバルセロナ勢でつくる中盤のトライアングルが大きな魅力だ。巧みな位置取りと、ボールロストしても素早い切り替えからの再回収など、チームの共通認識は徹底されている。スイス戦は74%、ポルトガル戦は64%と、9月の2試合でもドイツよりも高い水準でボールを握るサッカーを展開した。中盤はコケ(アトレティコ・マドリード)、ロドリ(マンチェスター・シティー)、カルロス・ソレル(パリ・サンジェルマン)ら人材豊富で、中2日、あるいは中3日という日程のネーションズリーグでもローテーションしながらチームを支えた。W杯(1次リーグは中3日)でもメンバーを入れ替えながら、高い質を維持してくるだろう。

 スペインとは昨年の東京五輪でメダルを懸けて準決勝で戦っている。当時もゴールを守っていたウナイ・シモン(ビルバオ)がフル代表でも守護神。延長で得点を許したマルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)ら因縁のある選手らとカタールで”再戦”となれば、日本も久保建英(レアル・ソシエダード)ら五輪世代の選手たちの奮起を期待したい。9月のスイス戦は2失点ともCKからだっただけに、本大会では日本もセットプレーでひと工夫できれば面白い。

 開幕まで2カ月を切り、各国ともメンバー争いに注目が集まっている。スペインでは地元メディアのマルカがファンにW杯代表の26人に誰がふさわしいかというアンケートを実施。代表から遠ざかっているベテランDFのセルヒオ・ラモス(パリ・サンジェルマン)を推す声もある。ルイスエンリケ監督は「リストは26人ではなく、W杯にふさわしい選手は40人いる。そのような質の高い選手を率いることができるのは、とても喜ばしい。常に変わっていくし、難しい作業だ」と頭を悩ませている。

土屋健太郎

著者プロフィール 土屋健太郎

共同通信社 2002年入社。’15年から約6年半、ベルリン支局で欧州のスポーツを取材