実力か?ビッグマウスか?
WBC王座8連続防衛の寺地(現在は第2次王朝)、ミニマム級に次ぎ2階級制覇を成して海外世界戦も3度経験済みの京口。申し分のない実績を誇る二人にとっても、今度の一戦はキャリア最大の大一番となる。互いに勝利への自信も揺るぎない様子だが、それを隠そうともしないのが寺地のほうだ。
「序盤からしっかりプレッシャーをかけ、そこからのみ込んでいくというか主導権を握りたい。圧倒的な差を見せます」
さる10月14日に行われた公開スパーリングの場でこう語った。「普通にやったらKOにたどり着くんじゃないかと思います」とも豪語した。海外ブックメーカーが出したオッズで劣勢だと伝えられると、「それは僕に賭けるチャンス。いっぱい賭けてほしい。僕も自分に賭けようかな」とおどけてみせる—。
以前から、チャンピオン寺地の顔に似合わぬビッグマウスぶりは有名だ。挑戦者がどんな強敵であれ「余裕で勝つ自信しかない」等、ひょうひょうと言ってのけ、そして現に勝ってきた。その最たるものは“日本人世界王者の連続防衛記録の更新”だったろう。具志堅用高(元WBAライトフライ級王者)がマークして40年以上も破られていない“13連続防衛”を自身が抜くと公言していた。
しかしこれは昨年9月に矢吹正道(緑)に敗れたことでとん挫。黒星をなすりつけられた矢吹に直接再戦で挑み、王座を獲り返すと、新たな目標の1つに統一戦をあげた。連続防衛記録の目標は失ったが、矢吹に雪辱をし、WBCタイトルと名誉を取り戻した寺地は言ったものだ。「ボクシングの幅が広がった」と。「負けてもその経験を活かせればレベルも上がるし、プラスになる」のだと実感したという。
こうして、矢吹へのリベンジ戦でさらに自信を深めた寺地。実際にそのボクシングスタイルがいかに対戦相手にとってやりづらいか、寺地と1勝1敗の矢吹の言葉から迫ってみると—。
実力は折り紙付き
寺地といえば、絶え間ないステップと多彩なタイミングの左ジャブで間合いをつくり、相手をはめ込んでいく盤石の型を持っている。それが矢吹再戦ではのっけから攻めまくる超攻撃型に転じ、結果KO勝ちに持ち込んで周囲を驚かせた。
といっても、矢吹いわく、ボクサー寺地のやりにくさはやはり独特の“間合い”にあるという。
「行くか、行かないか、こちらが判断しかねる間合いにずっといることができる。その間合いです」
やっかいなのは、寺地にはその間合いをキープし続ける「足腰の持久力」があるからだ、と矢吹。そこで寺地が細かく打つ左ジャブに対し、相手はどうしても対応に追われがちとなる。いわば後手に回るわけだが、そうなった相手の反応する瞬間であったり、反応に疲れたりした瞬間を逃さず、寺地は狙ってくる。
「本当にあのジャブと間合いをどうやって攻略するのかが第一です」
矢吹は対寺地のキーポイントをそう語っていた。今回、寺地は注目される戦法について「(インファイトもアウトボクシングも)両方できる」と、どちらとも受け取れる発言をしている。正面衝突すれば攻撃型の京口に分があるという意見に対する返答のようでもあるが、自信満々なのは間違いない。