試合だけでなく、Indeed Japanの社員向けイベントにも出席した長谷部誠

 フランクフルトは昨シーズンのヨーロッパリーグ(欧州ではチャンピオンズリーグに次ぐ大会)で優勝している強豪だ。チームのメインスポンサーを務めているのが、世界的な求人検索エンジンでもある「Indeed(インディード)」。アメリカで2004年に創業し、本社はアメリカのテキサス州にある。2012年に日本のリクルートに買収されて、グループ傘下企業となっている日系企業でもあるのだ。現在のフランクフルトのユニフォームには、胸にIndeedのロゴがついている。鎌田や長谷部の活躍する映像を目にする機会があれば、同時に企業ロゴも目にしているだろう。

 Indeedは2017年7月からメインスポンサーとなっている。当時は1年あたり670万ユーロといった報道もされている。

 日本でIndeedと聞いて、恐らく多くの人がまず思い浮かべるのは求人検索エンジンのテレビCMではないだろうか。2017年から俳優の斎藤工と泉里香が揃って出演し、耳に残るメロディーもあり、視聴者に浸透している印象を受ける。

 長谷部はフランクフルトの生けるレジェンドの様な存在にまでなっている。2008年に浦和レッズからドイツのヴォルフスブルクに移籍してリーグ優勝を経験。ニュルンベルクを挟んで、2014年からフランクフルトでプレーし続けている。長谷部が昨シーズンのヨーロッパリーグ優勝に貢献したのもそうだが、そもそも30代後半にも関わらず、相変わらす守備での強さやカバーリング能力を安定的に発揮することへの評価は非常に高く、またリーダーシップもチームから高く評価されている。

 長谷部はツアーの際に先んじて来日し、11月14日にIndeedの日本法人「Indeed Japan」のオフィスで社員向けトークイベントに出席していた。

 長谷部はイベント内で自分自身のキャリア形成について問われると、こう答えた。

「今だからいえるが、若い時は経験もなく、決断する時は非常に悩んだり、楽な方に流されたりという時もあった。今はどちらかというと、どっちが面白いかな、自分が変わるかな、そういう時は難しい方を選ぶようになってきた。年齢を重ねてから。逆に年齢を重ねると、落ち着いて安定になりがちなところもあるけど、僕のこれまでの流れを考えると、難しい方、困難な方、楽じゃないなと思う方を選んだ時の方が、自分が一回り人間として成長できている感覚がある。今38歳ですけど、これからの人生も安定とか求めずに、面白いな、難しそうだな、というのを選び続けたいというのはある」

 さらに、引退後のセカンドキャリアについて聞かれると、

「僕も38歳で、多くのサッカー選手が引退している年齢。あとどれくらいか(現役選手を続けるか)わからないですが、やめた時はIndeedさんにお世話になりたいと思っています。冗談でもなく、本当に(セカンドキャリアについて)何も考えていない。指導者とかあると思うが、これって決めてなくて、最後は相談させてください」

 笑いながらそう答えると、イベントに一緒に登壇したウーベ・バイン氏(浦和レッズ、フランクフルトにも所属したことがある元ドイツ代表)に「でも、長谷部はまだ2、3年はやるんじゃないですか?」とツッコまれ、即座に「あと5年はやります」と返していた。

イベントの様子

 長谷部は翌11月15日に行われた、フランクフルトと浦和レッズとのパートナーシップ締結記者会見に登壇。フランクフルトからは他にもクレッシェ・スポーツ執行役、ハママ事業部長が参加していた。

フランクフルトは男女ともに日本人選手の獲得あり得るか?

 フランクフルトが今回のジャパンツアーを行った最大の狙いは、恐らく日本企業のスポンサー獲得に向けたきっかけ作りがあったのではないだろうか。フランクフルトの公式ホームページでスポンサーやパートナー企業を確認する限り、現在Indeed以外の日本企業では、東海カーボンが2019年にドイツ企業コベックスを買収して傘下に収めたトーカイ・コベックスくらいしか見当たらない。ジャパンツアーは日本のサッカーファンとの交流、メインスポンサーであるIndeedに対する御礼はもちろんだが、日本市場を広げる意図もあったのかもしれない。

 一方で、Indeedはフランクフルトと今年11月に、メインスポンサー契約を26年6月末まで延長したことを発表している。現地メディアの報道によると、新契約では21歳以下男子チーム、そして女子チーム(アイントラハト・フランクフルト・フラウエン)やeスポーツチームの活動に対する項目もあるとなっている。特に女子チームに対する言及は興味深い。女子チームも強豪で、過去にはサッカー日本女子代表で長年活躍する熊谷紗希をはじめ、元代表の安藤梢、永里優季、田中明日菜など、そうそうたるメンバーが所属してきている。ただ、現在日本人選手は在籍していない。もしかしたら、新たな契約内容を踏まえると、今後再び日本人選手を獲得する機運が高まるはずだ。

 男子チームにおいては、長谷部は契約延長をしていることもあり引き続きチームに留まるが、チームの主力である鎌田に対しては強豪クラブへの移籍の噂が飛び交っている為、新たな日本人選手の獲得の動きがあってもおかしくない。

 これまで男女チーム共に、日本人選手が在籍してきたフランクフルトだが、日本においての存在感はサッカーファン以外の人には希薄だった。今回のジャパンツアーからは、日本市場を開拓したい、結びつきを強化したい狙いがあったのかもしれない。


大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。