JFAユニクロサッカーキッズのキャプテンで、元シャルケ選手・現アンバサダーの内田篤人氏も、全身黒の練習着を着て、一つ一つミニゲームを見て歩いては、入って一緒にボールを蹴っている。みんな6歳以下の未就学児だが、普段からサッカーをしているに違いない、もう慣れた様子でしっかりボールを蹴る子もいれば、初めてなのだろう、転んでばかりの子や、途中で飽きて座り込んでしまう子もいて微笑ましい。兄弟姉妹についてきたのだろう、ボールは蹴っていなくても周りで元気に遊んでいる子、お世話係のドイツ人の女性に甘えている子もいた。

 その後全員で記念写真をした子供たちは、フェルティンス・アレナのスタジアムツアーにも参加し、普段は入れない選手トンネルも体験して楽しい1日を過ごしたようだ。

 日本サッカー協会がユニクロの協賛でこのイベントを始めたのは2003年。未就学児年代を対象としたサッカーイベントで、勝敗は重視せずサッカーを楽しむことを目的に家族でスポーツを楽しめる場を提供するJFAユニクロサッカーキッズにはこれまでに28万人の子供たちが参加してきた。日本国内での開催が基本だが、今年はちょうど20周年のため、記念特別版としてドイツでの開催となった。シンガポールで開催したこともあるが、欧州では今回が初。在ドイツ邦人とシャルケが募った子供たち、72人が参加した。

 「日本で開催すると、東京ドームとか札幌ドームに2000人も集まるんだよ」と笑顔の内田氏は、かつて自分が選手時代に悪天候の時の練習をしたり、ファンのイベントの時に訪れたこのホールを懐かしみ、「思い入れのあるシャルケに、『JFAユニクロサッカーキッズ』を通して戻ってくることができ、とてもよかったです。このような素晴らしい環境でプレーした子供たちが、少しでもサッカーに親しみを持ち、チームプレーの楽しさを知ってもらえたら、うれしいです」と話した。

 今回のホスト役をシャルケが務めたのは、内田篤人氏が2010〜2017年までシャルケでプレーしていたことももちろんあるが、ドイツで最も多くの日本人が住むデュッセルドルフから車で1時間ほどしか離れておらず人を集めやすい、悪天候でも開催できる大きなホールがあるなどの事情もあった。そしてシャルケは、コロナ禍が始まる前にも日本でサッカースクールを開催していたり、内田氏が去ってからも2021〜2022年シーズンに板倉滉が所属、今シーズンは吉田麻也と上月壮一郎が主力としてプレーしていたりと、なにかと日本と縁がある。

 シャルケの育成部門「クナッペンシュミーデ」(「炭坑夫鍛錬所」の意味。シャルケは炭坑の街のクラブとしての伝統を大切にしてきている)といえば、マニュエル・ノイアー(現バイエルン・ミュンヘン)、ユリアン・ドラクスラー(現SLベンフィカ)、レロイ・ザネ(現バイエルン・ミュンヘン)など、ドイツ代表の中心メンバーとなるような優秀な選手を次々と育て上げてきていて、ドイツでは名高い。そのサッカースクール責任者であるマルコ・フォーリッヒ氏は、今回のJFAユニクロサッカーキッズのために、日本人の子供たちに加えて、シャルケ本拠地の近所にある2クラブから12人の子供たちを招き、2チームを作った。

 内田氏は参加したドイツの子供たちについて「やっぱり体が大きい。それに性格が違う・・・これはドイツ、サッカー強いわ」と、いつもとは一味違う試みを楽しんだようだ。フォーリッヒ氏も「『内田氏は子供たちとサッカーを一緒にするだけでなく、マットの上で一緒に転がって遊んでくれたりもして、とても近く感じられた』と親御さんたちにも好評でした」と、とても満足している。

 「またホストとして日本の子供たちをシャルケにお迎えしたいと願っています。今回は日本の子たちとドイツの子たちが対戦する形になりましたが、今度はドイツと日本の子供たちが一つのチームで一緒にプレーしているところも是非見てみたいです」と、これからもこういった交流が続くことを望んでいる。

 近年、欧州、特にドイツでプレーする代表クラスの日本人選手が増え、JFAは2020年秋からデュッセルドルフに拠点を置いている。内田氏もこの先アンダー世代のチーム同士の練習試合や交流を考えているというから、今回の『JFAユニクロサッカーキッズ』シャルケ版を機に、日独の交流はさらに広がっていきそうである。

 協賛のユニクロはドイツの1号店を2014年、ベルリンにオープン。現在ドイツ全国で10店舗を展開していて、大都市ではユニクロをかっこよく着こなす人たちをよく見かける。ユニクロは長年次世代育成の取り組みを推進する活動を行なってきているが、2022年11月には「UNIQLO Next Generation Development Program」という新名称で、世界中の子供たちを応援する活動をより一層推進することを発表した。そして有明コロシアムで、小学生約50人参加のテニスイベントを、ユニクロ・グローバル・アンバサダーであるロジャー・フェデラー氏、錦織圭、国枝慎吾氏、ゴードン・リードと共に行った。今回の『JFAユニクロサッカーキッズ』ドイツ特別版もその一環の活動だったが、ユニクロはこれからも引き続き、世界の一流アスリートやさまざまな団体と連携して、スポーツ競技の指導だけでなく、サステイナビリティーをテーマとした教室を開くなど、多くの「学びの場」を提供していくという。

 今年4月には国際テニス連盟と共同で、国枝慎吾氏とゴードン・リードによるジュニア選手を対象とした車いすテニスクリニックとトークセッション、5月ごろには平野歩夢がスノーボード/スケートボードの技術やメンタリティーをジュニアに伝えるイベントも開催する予定になっている。


VictorySportsNews編集部