優勝候補同士の激突

バイエルン・ミュンヘン―パリ・サンジェルマン(日本時間9日午前5時キックオフ)
(1st leg 1―0)

 パリ・サンジェルマン(フランス)とバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)は1回戦にはもったいないカードだ。パリSGが1次リーグ2位通過となったために、組み合わせ抽選でシードされず、スター軍団同士の顔合わせが実現した。メッシ、エムバペ、ネイマールの強力3トップを擁して悲願の初制覇を目指すパリSGだが、第1戦はホームで0―1と黒星を喫した。左太ももの負傷明けだったエムバペを後半途中から強行出場させるも、際どいオフサイドの判定もあって僅差で敗れた。

 2019/20シーズン王者のバイエルンはW杯で精彩を欠いたドイツ代表勢を軸に、4季連続のベスト8入りを狙う。19/20シーズンの決勝でも戦った相手でもあり、その翌シーズンにはパリSGが準々決勝で雪辱を果たした因縁もある。昨季まで点取り屋としてバイエルンの前線に君臨したレバンドフスキがバルセロナ(スペイン)へと移籍したが、今季も持ち前の得点力は衰え知らず。国内リーグでは1試合平均で約3ゴールを挙げ、欧州CLでも7試合で19ゴールをマークして唯一、今大会1次リーグから連勝街道を続けている。個のパリSGか、組織のバイエルンか、この一戦を制したチームは優勝争いの有力な主役候補に躍り出るだろう。

昨季決勝の再現

レアル・マドリード―リバプール(同16日午前5時キックオフ)
(1st leg 5―2)

 1回戦のもう一つの豪華なカードが最多14度の優勝を誇るレアル・マドリード(スペイン)と、同6度のリバプール(イングランド)の対決だ。第1戦は序盤にミスも絡んでRマドリードが2点のビハインドを背負いながらも、そこから敵地アンフィールドで圧巻の5ゴール。特に5点目のカウンター攻撃で相手のチャージをかいくぐりながらドリブルで攻め上がったクロアチア代表MFモドリッチの判断力と技術の高さには、「白い巨人」のすごみが凝縮されているようだった。

 リバプールは今季のプレミアリーグでも中位に甘んじている。停滞するチームは第2戦で3点のビハインドを背負いながらアウェーに乗り込むが、クラブには苦境でも逆転を信じるだけの歴史もある。04/05年の決勝、ACミラン(イタリア)にハーフタイムで0-3と大きくリードされながら、後半に信じられないような猛追を見せて追い付き、PK戦の末に頂点に立った「奇跡」をThe Reds(リバプール)のサポーターたちは覚えている。

長谷部&鎌田、日本人8強なるか

ナポリ―アイントラハト・フランクフルト(同16日午前5時キックオフ)
(1st leg 2―0)

 アイントラハト・フランクフルト(ドイツ)の長谷部誠と鎌田大地には、日本選手としてベスト8入りなるかの期待がかかる。第1戦で0-2とナポリ(イタリア)に黒星を喫し、苦しい状況で迎える第2戦。Eフランクフルトは得点源だったフランス代表FWコロムアニが第1戦で退場しており、第2戦では鎌田がゴールに直結する活躍を見せたいところだ。第1戦で出番がなかった長谷部はウォルフスブルク(ドイツ)時代以来、実に13シーズンぶりのCLを戦っている。39歳となった今季も3バックの中央で冷静なプレーを見せており、チームの窮地で出場機会が巡ってくるか。

 これまでCLで8強入り以上の成績を収めたことのある日本選手を振り返ると、本田圭佑(CSKAモスクワ=当時、以下同))、内田篤人(シャルケ)、長友佑都(インテル・ミラノ)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド、ドルトムント)とそうそうたる顔触れが並ぶ。(前身の欧州チャンピオンズカップ時代に奥寺康彦がケルンの一員としてベスト4入りしている)

 バイエルン時代の宇佐美貴史やリバプール時代の南野拓実はチームが準優勝しているが、控えだった。長谷部や鎌田は主力級としてチームに欠かせない存在であり、昨季の欧州リーグ優勝に続く快進撃が続くところを是非とも見届けたい。

それ以外にも見どころ続々

ベンフィカ―クラブ・ブリュージュ(同8日午前5時キックオフ)
(1st leg 2―0)
チェルシー―ドルトムント(同8日午前5時キックオフ)
(1st leg 0―1)
トットナム―ACミラン(同9日午前5時キックオフ)
(1st leg 0―1)
マンチェスター・シティー―ライプチヒ(同15日午前5時キックオフ)
(1st leg 1―1)
ポルト―インテル・ミラノ(同15日午前5時キックオフ)
(1st leg 0―1)

 今季はナポリに加え、ACミランとインテル・ミラノというセリエA勢が決勝トーナメントに勝ち上がった。イングランドやスペイン、ドイツ勢に押されて近年はやや影が薄かったカルチョの国が気を吐いている。スペイン勢がRマドリードだけなのとは対照的だ。イタリア勢がベスト8に残れば2019/20シーズンのアタランタ以来。複数クラブが準々決勝に勝ち上がれば2017/18のローマ(ベスト4)とユベントス(ベスト8)以来、5季ぶりとなる。今大会のイタリア勢の3チームはいずれも先勝しており、復権への期待は膨らむ。

 4チームずつ残っているのがイングランドとドイツ。中でもドルトムント―チェルシー、ライプチヒ―マンチェスター・シティーは「英独」対決となっている。第1戦で1―0と先勝したドルトムントの注目はワールドカップ(W杯)でも活躍したイングランド代表のベリンガムだ。攻守にわたって推進力のあるドリブルなど、自陣から相手ゴール前まで一気に攻め上がる迫力はスケールの大きさを感じさせる。

 上位の常連でありながらこれまで頂点に届いてないマンチェスターCは敵地での初戦を1―1で引き分けた。圧倒的な攻撃力を誇りながらも過去のCLでは取りこぼしも目立つだけに、ホームで戦う第2戦ではきっちりと勝ちを収めたいところだ。W杯には出場できなかったハーランドは、今や欧州屈指の点取り屋。大会得点王レースではサラー(8点)がトップを走るが、現在5ゴールのハーランドが爆発して2季ぶりに大会得点王になるような活躍を今後見せれば、チームの悲願にも自然と近づくだろう。


土屋健太郎

共同通信社 2002年入社。’15年から約6年半、ベルリン支局で欧州のスポーツを取材