8大会連続出場のU-23日本代表はオーバーエージ(OA)枠を使わずベスト8敗退。グループリーグ(GL)では3戦全勝したものの、準々決勝でスペインを相手に0-3の敗戦を喫し、力尽きた。

 日本の戦いはどう評価されるべきか。課題はどこにあるのか。

「本気のチーム」を作れるかが成績を左右する

 決勝は地元フランスと復権を期すスペインの対戦。いずれも日本が直近に戦っており、肌感覚で力量が分かるチーム同士の対戦だった。

 フランスはOA枠にムバッペの招集はかなわなかったが、母国の英雄であるティエリ・アンリが監督、33歳のFWラカゼットが主将を務め、国を挙げて戦っている団結感があった。スペインもOA枠を使ったほか、優勝したUEFA EURO 2024にも出場した21歳のフェルミン・ロペスが大活躍した。

 パリ五輪出場16チームでOA枠を使わなかったのは日本だけ。編成の時点で力量に差が生じていたことを思えば、今回の日本チームのベスト8という結果は悪いものではなかった。

 むしろ、スペイン戦は0-3というスコアほど一方的だった訳ではなく、日本がボールを握って攻めきる時間帯もあった。大岩剛監督が2年4カ月で落とし込んだ戦い方の方向性は間違いではなかった。それに、選手たちは持っている力をほぼ出せていた。

 裏を返せば、だからこそモヤモヤ感が残っている。「本気のチーム編成」をするのは協会の仕事だからだ。

交渉力不足が浮き彫りになったOA枠問題

 パリ五輪に向けては「今のベストメンバー」という言葉がしばしば使われた。サッカーは常にそういうものだし、ケガ人は仕方がない。しかし、今回のOA枠に関しては使わなかったのではなく、使えなかったのだ。

 聞くところによると、日本協会が欧州クラブに交渉に行っても「今回は東京でやるわけじゃないのだから出さなくてもいいだろう」というムードで、前向きな交渉に持ち込むことさえ困難だったという。しかし、日本以外の国はOA枠を使っている。だからモヤモヤする。

 パリ五輪での日本の選手たちの熱量は素晴らしく、五輪8大会連続出場という大きなプレッシャーのかかったU23アジアカップを乗り越えてきた自信や一体感は、OA枠を使わなかったことによって一層高まっていた。一方で、日本サッカー協会は近年、ドイツに拠点をつくって選手の所属クラブと密にコンタクトを取っているということを強調していたが、果たしてそれが機能したのか。

 欧州クラブからの五輪への招集が難しい流れは今後も続くと予想される。そういった中で、今回のパリ五輪は日本が五輪をどういう大会ととらえ、どういうアプローチをしていくか、未来への岐路と位置づけられるのではないか。

グループリーグの戦いでも選手たちは少なくない収穫を得た

 一方で、選手のパフォーマンスに目を向けると、課題はもちろんあるが収穫も少なくなかった。

 初戦のパラグアイ戦は相手が早い時間帯に10人になったことで戦いを優位に進めることができた。5-0というスコアは相手の自滅によるところが大きいが、これまで日本が苦手としてきた南米チームに対して主導権を握る戦いを出来たことには、この年代の日本の選手たちの実力が上がっていることを感じた。いずれA代表に入っていくであろう彼らにとっては今後の財産になるに違いない。

 続くマリ戦は3月に京都で行った親善試合の借りを返す完勝。同じ相手に連敗しないという観点でも及第点だった。イスラエルは決して侮ることのできない相手だが、この試合でもしっかりと勝利を手にした。ただ、グループリーグ3連勝、無失点という勢いと、OA枠の選手がいないことでより高まった結束力をもっても敵わなかったのが準々決勝で対戦したスペインだった。

 象徴的だったのはやはりフェルミン・ロペスの2ゴールだ。反対に、日本は40分に細谷真大が相手を背負ったままボールを収めて、ターンから見事なシュートを打ったが、オフサイドと判定された。個の力の中でも決定力の差は勝敗に最も響く。これは個人個人が強化していくしかない。

トーナメントの戦い方を検証・再考せよ

 ベスト8の顔ぶれをあらためて見回すと、日本、フランス、スペイン、モロッコ、エジプト、パラグアイ、アルゼンチン、アメリカ。A代表のW杯出場経験が多い国であり、エジプトとパラグアイ以外はカタールW杯出場国だ。

 一方、グループリーグ敗退組はウズベキスタン、イラク、イスラエル、ウクライナ、ドミニカ共和国、マリ、ギニア、ニュージーランド。カタールW杯出場国はない。

 やはりA代表と五輪世代チームの実力は連動しており、日本も一定のレベルにあることが分かる。

 ただし、日本は7大会連続でW杯に出場しているのにベスト16の壁を破れないA代表と同じように、U-23日本代表も8大会連続出場の間にベスト4の壁を一度も破ることができていない。これだけ連続出場していれば一度くらいは勢いや多少の幸運で表彰台に上がっていてもおかしくない。

 だが、そのラインを破れない。なぜか。トーナメントに入ったとたんに日本は勢いをいったん休止してしまうからだ。上位に進むチームは逆だ。決勝トーナメントに入ってからギアを上げる。パリ五輪のスペイン戦はギアを上げきれなかったという印象ではないが、敗戦という結果は受け止めなければならない。トーナメントでギアアップできるチームマネジメント力をつける必要がある。

 ピッチで存在感を見せた藤田譲瑠チマ、守護神として何度も日本を救った小久保玲央ブライアン、オールラウンドのストライカーとして成長を見せた細谷真大をはじめ、選手たちが次に目指すのはA代表としてW杯で日本の力となること。パリ五輪で感じた個々の課題や収穫を存分に活かしていきたい。


VictorySportsNews編集部