文=池田敏明

“本業”で稼げるのはアメフト

 トップアスリートは、今や年間数十億円を稼いでいる。収入源は所属するクラブからの年俸や、試合に勝利した際の勝利給、賞金といった“本業”から得るものと、スポンサー企業との契約金に二分される。アメリカの経済誌『フォーブス』が発表したスポーツ長者番付によると、2016年のランキングでトップに立ったのはレアル・マドリーのクリスティアーノ・ロナウドで、その額は8800万ドル(約94億2000万円)にも上った。

ロナウドがレアル・マドリードとの契約で得た金額は年間5000万ドル以上。国際サッカー連盟(FIFA)の世界最優秀選手「FIFAバロンドール」に通算3回選出された彼は、スポンサー収入でも他者を圧倒し、3200万ドルをピッチ外で得ている。ロナウドはナイキから昨年1300万ドルを獲得したほか、タグ・ホイヤーやハーバライフ、ポーカースターズ等の企業がスポンサーに名を連ねている。
「世界で最も稼ぐスポーツ選手」はロナウド 年収94億円で首位に | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)©Getty Images

『フォーブス』の長者番付は年俸等とスポンサー契約料を合わせた「年収」で算出したものだが、ではランクインした100人のうち、純粋にスポーツ面で最も稼いだ選手、スポンサー収入が最も多い選手は誰になるのだろうか。

 まず、スポーツ面で最も稼いだ選手は、『フォーブス』のランキング同様C・ロナウドで、その額は5600万ドル(約58億8000万円)。年俸に加え、試合の勝利給やグッズの売り上げなどを総合して、クラブからこれだけの収入を得ている。2位はC・ロナウドのライバルであるリオネル・メッシで、5340万ドル(約56億700万円)。サッカー界の両巨頭はスポーツ界全体を見ても桁違いの収入を得ていることになる。

 10位までのランキングを見ると、興味深い傾向が見えてくる。3位ジョー・フラッコ、5位キャム・ニュートンなど、実に6人がアメリカンフットボール(NFL)の選手なのだ。フラッコは2013年にボルチモア・レイブンズと6年総額1億2060万ドル(約126億6300万円)の契約を結んでおり、勝利給なども含めたクラブからの収入は4400万ドル(約46億2000万円)にもなる。

『フォーブス』のランキングを競技別で見ると、アメフトは21人で野球の26人に次ぐ2位なのだが、スポーツ面での収入に限れば、野球よりもアメフトのほうが、上位にランキングされた選手は多い。野球の最上位はクレイトン・カーショウの15位、3120万ドル(約32億7600万円)だ。ただ、NFLは選手の平均寿命が4年程度と短いため、生涯収入で考えると別の結果が得られるかもしれない。

 ちなみに、スポーツ面での収入ランキングで100位となったのは、総合ランキング12位のタイガー・ウッズで、その金額は27万4000ドル(約2877万円)。かつては賞金だけで1000万ドル(約10億5000万円)以上を稼いだこともあるが、近年はケガの影響もあってゴルフでの結果は残せていない。多額のスポンサー収入が彼をランキング上位に押し上げている。

スポンサー人気は個人競技

©Getty Images

 スポンサー収入が最も多い選手は、プロテニスプレーヤーのロジャー・フェデラーで6000万ドル(約63億円)。トップアスリートであり、人格者としても知られるフェデラーだけにスポンサーからの受けが良く、メルセデスベンツやロレックスなど世界的企業と契約を結んでいる。2位のレブロン・ジェームズはナイキやコカ・コーラ、マクドナルドといったアメリカの大企業とスポンサー契約。特にナイキとは生涯契約を結んでおり、その総額は10億ドル(約1050億円)以上と言われている。

 上位を見ると、アメリカンフットボール選手の名前がなくなり、ゴルフやテニスといった個人競技のアスリートの多さが目立っているのが興味深い。これは選手の世界的知名度と無関係ではないだろう。フラッコやニュートンといったNFL選手の名前を知っている日本人と、フェデラーやノヴァク・ジョコヴィッチといったテニスプレーヤー、フィル・ミケルソンやウッズといったプロゴルファーの名前を知っている日本人、数が多いのはどちらかを考えれば分かりやすいはず。あらゆる国で名前が知られているアスリートほど、広告として起用しやすいのである。

 その中で、11位タイにランクインした錦織圭の3000万ドル(約31億5000万円)は大健闘と言える。ユニクロや日清食品、JAL、久光製薬といった日本企業に加え、アディダスやタグ・ホイヤー、ジャガーといった世界的企業とも契約している。賞金としての収入が350万ドル(約3億6500万円)なので、その10倍近い金額をスポンサーから得ていることになる。

「サッカーは世界で最も人気度の高いスポーツ」と言われ、実際にFIFA加盟国・地域の多さや競技人口の多さから考えるとその通りなのかもしれないが、アスリートを広告に起用したい企業にとってはその限りではない、というのが分かるランキングではないだろうか。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。