文=Baseball Crix編集部

阪神&ヤクルトは、競争を制した梅野と中村を起用

 名捕手不在は球界全体の問題であり、それは4強止まりだった第4回WBCでも露わになった。捕手不作が続く昨今の影響もあってか、今季は捕手を固定しているチームが目立つ。なかでも昨シーズン下位に沈んだチームは、「捕手固定こそ上位浮上への基盤」と言わんばかりに、腰を据えて序盤戦を戦っているように映る。

 その代表は、昨季6人の捕手が先発マスクを被り、最後まで正捕手を固定できなかった阪神だろう。2016年にチーム最多となる68試合で先発マスクを被った原口文仁は、打力を活かすため今季は一塁手に専念。結果的に開幕マスクを託されたのは4年目の梅野隆太郎だった。

 梅野は1年目から92試合出場を果たすなど飛躍が期待されたが、2年目以降は出番が右肩下がりとなり、金本知憲監督1年目の昨季は二軍暮らしが長かった。それでも今年は、キャンプから武器である強肩とパンチ力をアピール。開幕からスタメンマスクを被り続け、チームの開幕ダッシュを支えた。

 ヤクルトの中村悠平も、キャンプ、オープン戦での正捕手争いを制し、開幕マスクを勝ち取った。2015年はリーグ優勝の立役者となった中村だが、昨季は攻守とも精彩を欠き、後半戦は2歳年下の西田明央にその座を奪われた。真中満監督はキャンプ初日から「正捕手は白紙。結果を出した方を使う」と明言。中村は西田との争いを制し、シーズン開幕後も攻守両面で存在感を示している。

打撃で苦しむ巨人・小林、ファンは「世界でしか輝けないのか」と揶揄

©共同通信

 巨人の小林誠司は、早くも正念場に立たされている。WBCでは攻守両面で存在感を示し一気に株を上げたが、いざシーズンが幕を開けると課題の打撃面がさっぱり。そもそも小林は昨季のシーズン打率も.204と低く、今季は自軍の正捕手争いからスタートすると見られていたが、WBCでの良いイメージのままシーズンイン。だが現実は甘くなく、ファンからは早くも「小林は世界でしか輝けないのか」と揶揄されている。

 小林とともにWBCに出場した西武の炭谷銀仁朗は、森友哉の離脱もあり辻発彦体制の要として投手陣を好リード。体調不良でWBC出場を辞退した楽天の嶋基宏は、体調を整え開幕を迎え、球団初となる開幕からの3カード連続勝ち越しを支えた。

 昨季パ・リーグのベストナインに輝いたロッテの正捕手・田村龍弘は苦しんでいる。チームはオープン戦首位で開幕を迎えたものの、シーズンに入ると得点不足に陥り、投手陣も大量失点を献上する試合が頻発している。田村と同じく若き司令塔として新人から2年連続で開幕スタメンマスクを被ったDeNAの戸柱恭孝は、キャンプ中の故障でやや出遅れたが、今季もラミレス監督からの信頼は揺るがない。

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ソフトバンク・甲斐、オリックス・若月は併用から出番増を目論む

 併用制を敷いているのは、広島、中日、ソフトバンク、オリックスの4チーム。早くも怒涛の10連勝をマークした広島は、ベテランの石原慶幸が存在感を示しながらも、かねてから期待されていた会沢翼がリード面の評価を高めている。実際に10連勝中の先発マスク回数は、石原の4回に対し会沢は6回。若い投手陣の良さを引き出しながら、自身も首脳陣へ世代交代をアピールしている。

 中日は杉山翔大を正捕手に据えると見られていたが、チーム自体が出足で躓いた影響もあり、早くも木下拓哉との併用を選択した。開幕から極度の得点力不足に陥り、捕手にも打力が求められる現状。谷繁元信監督時代のように、このまま捕手を固定できない期間が長引くようなら、今季も低迷を続ける危険性がある。

 ソフトバンクは昨オフ、ベテラン・細川亨との契約を延長せず、半ば強引に捕手陣の若返りへ舵を切った。その影響もあり、2010年に育成ドラフト6位で入団した甲斐拓也が、開幕から一軍に定着。4月11日の日本ハム戦では、同じく育成で同期入団(同4位)の千賀滉大とバッテリーを組み、史上初となる育成コンビでの白星ゲットを成し遂げた。

 オリックスはともに20代の伊藤光と若月健矢を今季も併用。開幕マスクは若月が被ったが、伊藤は5試合目に初先発マスクを被り、この試合で投手陣を完封リレーへ導いた。今季はチーム状態もよく、久々に好スタートを切ったオリックス。このまま併用でいくのか、それともいずれはどちらかに絞るのか。首脳陣の判断に注目が集まる。

日ハム・清水、DeNA・網谷、若手にも楽しみな素材がズラリ

©共同通信

 開幕から故障者が続出している日本ハムには、清水優心という新たな正捕手候補が現れた。高卒2年目だった昨季は日本シリーズにも出場。チームには侍ジャパンにも選ばれた大野奨太がいるが、4月12日のソフトバンク戦から4試合連続で先発マスクを被るなど、期待の3年目が世代交代を印象付けている。

 若手という括りなら、キャンプ中に話題を集めたDeNAの育成捕手・網谷圭将、広島の高卒新人捕手・坂倉将吾らも、まだまだ時間はかかりそうだが楽しみな存在だ。ケガで出遅れている西武・森は、今シーズン捕手一本で勝負することを明言。復帰後はチームを好スタートへ導いた炭谷との正捕手争いが待ち構えている。

 かつて南海黄金期を支えた野村克也、常勝西武をけん引した伊東勤、ID野球の申し子・古田敦也、2000安打&400本塁打が近づく巨人の阿部慎之助と、いつの時代にも“名捕手”と言われる扇の要は存在した。しかし、現役である阿部が一塁へコンバートされて以降は、それに代わる選手どころか、候補者すらも見当たらない。

 上記で紹介した現役捕手たちは現時点で小粒に映るかも知れないが、捕手は経験が活き、選手寿命が長いポジションでもある。2017年はチームを背負う正捕手がひとりでも多く現れ、ベストナイン等、各賞の議論が高いレベルで白熱することを願う。

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BBCrix編集部