©荒川祐史

“スポーツの外”から盛り上げていく必要性

ライゾマティクス社は、ナイキ社と共に「インタラクティブLEDバスケットコート」という企画・実施をした経験を持つ。これはLEDディスプレイで構成され、モーショントラッキング技術を組み合わせることで、選手の動きをリアルタイムで可視化するもの。2015年のグッドデザイン賞にも選ばれている。

https://design.rhizomatiks.com/works/nike_rise_house_of_mamba.html

このように、ライゾマティクス社はスポーツ分野にも積極的に進出している。今回の対談では、それらの事例についての他、「スポーツをどう盛り上げていくか」という部分に焦点を置いて対談が展開された。

「(スポーツという)コンテンツを持っているのだから、それを楽しく見せることは非常に重要」池田氏が述べれば、齋藤氏もそれに呼応する。

「スポーツは、1日に3万人以上を集めることができるすごいコンテンツ。これだけの人たちが飲み食いして『ああでもない、こうでもない』と語るような場所はほとんどない。吸引力がある。その中で、どうビジネスをしていくか。花火が上がるのもコンテンツかもしれないし、光を使った映像もそうかもしれない」

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「もったいない。もっとできる」と思っています

会の終了後、齋藤氏に「スポーツにおける付加価値の創出」について話を聞いた。

――齋藤さんが考える、スポーツにおいてエンターテイメント性を高める意義というのはどのあたりにありますか?

齋藤 僕は2つのところに興味があります。エンターテイメントで入口を作るというところ、もう1つはそこで得られたものをどう教育などに落とせるかというところ。そこは、いつも考えています。エンターテイメントはよくもわるくもすぐに無くなるもの、一過性なんですよね。

一過性のものなのに、エンターテイメントってありがたいことにものすごい投資を頂いているんです。その投資して頂いたものをどう継続し、後にも何かしら使えるようなコンテンツを残していくか。そこに興味があります。先に話したバスケットコートも、言ってみればエンターテイメント。ですけど、あれは実はちゃんと教育としてや、チームのあり方という部分としても残っていく。そういう『一石二鳥』を意識して作っているところはありますね。

――アメリカにいた経験はやはり大きかったのでしょうか。

齋藤 それはあるかもしれないですね。アメリカはスポーツ本体でビジネスをしているし、スポーツ周辺でもビジネスをしている。なんだったら、それで街をも市民をも動かす。それこそ、政治も動くほど強い結束力があります。あの結束力は、あまり日本にはありません。例えば浦和レッズさんは成功例なのかもしれないですけど、地元ファンに対しあれだけの求心力を持てる。ただ、他のクラブやスポーツはまだ持ちきれていない部分があると思います。そこに、問題意識を感じています。もったいない、もっとできるな、という。

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――スポーツの競技の部分にフォーカスしすぎなのかなと。

齋藤 球団運営というと、例えば野球のことを考えて「どう強くするか」ということばかりを考えている人が多い気がします。だけど、強くしていくためにはお金も必要ですし、お金を稼ぐためには何をしなければいけないか、もっと引いた目で見る人がいない気がするんです。そうした視点が、全体的にも必要なのかなと。スポーツだけではなく、何の分野でもそうです。1つの、自分の中心範囲のところだけに集中してしまっていて、周りが見えていないというのはすごくもったいないと思っています。

――そういう観点でいうと、池田さんがいたときのベイスターズの開幕戦で選手を起用したり、プロジェクションマッピングを使ったりして競技以外の面を”魅せた”というのは良いことなのでは。

齋藤 ダメ元で提案するというのはどの種目でもあるんですけど、池田さんにダメ元で言ったらダメじゃなかった(笑)。「いや、僕はもっとやりたいんです。火柱を建てて馬を走らせて…」とおっしゃっていて。野球をやるところですよ? そこが池田さんのスゴイところ。そういった考えができる人がいると、バーンと話題もあがっていく。ファンやお客さんの増加にもつながっていると思いますね。

――見ている人も楽しいですし、選手も楽しいでしょうね。

齋藤 ああいうものを作るときに「選手がプレーしにくいからやらない」という側もいると思うのですけど、選手は実際にそんなに強くは思わないらしいですね。選手とこういう人たち(企画側)って、直接は話さないじゃないですか。でも、その機会を作ると、想像しているより全くなんとも思っていなかったと。「ファンが来てくれるのならやってください」と言ってくれる選手も多いんです。

――今後、齋藤さん自身もスポーツの舞台でエンターテイメント性、アート性という付加価値を付けてより強く発信していきたいと思っているのでしょうか。

齋藤 もちろん。僕はどちらかというとスタジアムを作るとかいうよりも”街”から攻めたいなと思っています。今の状態だと、集客できるものは持っているわけです。アトラクターとして。ただ、街から攻めたらもっと強固になると思うんです。スポーツから攻めていくことができる人は僕以外にもいると思います。池田さんもそうです。ですから、僕らはもっと大外から攻めて、最後に2つのトンネルが貫通すれば良いなと思います。

――楽しめる街がある中に、スポーツがあると。

齋藤 そうですね。そこから、もしかしたらスポーツが中心になるということもあると思いますし、そういった街を作ることができればなと思っています

スポーツにおいて競技の魅力”だけ”にフォーカスし、人を集めることに注力する時代は終わったと言えるかもしれない。スタジアムやアリーナへ足を運んでもらう動機の幅を広げて、「他では味わえない体験ができるから」「面白い演出が見られるから」という部分をより訴求していくことがより重要になってくるだろう。そのトライの積み重ねが、この国におけるスポーツの価値を高めていくことは間違いない。

<了>

VictorySportsNews編集部

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