あの「ザ・キャプテン」がマーリンズを買収、CEOに!

近年、MLBの球団はビッグマネーを生み出す投資対象とされ、その金額も右肩上がり。ダルビッシュ有投手が移籍したばかりのロサンゼルス・ドジャースも、2012年にNBAのスター選手だったマジック・ジョンソン氏らの投資グループによって21億5000万ドル(当時のレートで約1725億円)で買収されています。

報道によると、今回のマーリンズ買収にあたってジーター氏らが支払う額は12億ドル(約1320億円)。個人で支払える額ではないため、複数の有力投資家がグループを組んで買収するケースが増えています。

2002年、前オーナーのジェフリー・ローリア氏のマーリンズ買収額は1億5800万ドル(当時のレートで約200億円)ですから、近年のMLB球団の資産価値の上昇ぶりがいかにすごいかよくわかります。

マーリンズ買収に関わったグループには、ジーター氏とナイキ契約選手つながりという縁もあるNBAで活躍したバスケットボールの神様、マイケル・ジョーダン氏も名を連ねています。

マーリンズの実質的オーナーになると見られるのは、実業家のブルース・シャーマン氏で、ジーター氏は最高経営責任者(CEO)と編成部門のトップを務めることになりそうです。

ヤンキースの、そしてMLBのレジェンドが球団のCEOを務めることについて、横浜DeNAベイスターズ前社長である池田純氏は、期待を込めてこう話します。

「夢がありますよね。今回のジーターさんの場合はGMではなくCEOということなので、チームをつくるだけではなくて、お客さまに楽しみを提供することができる立場なんです。彼が何をやってくれるのか、今からワクワクします」

2つ目の夢の舞台はかつての盟友・イチローとともに

(C)Getty Images

日本ではプロ野球の球団の多くが「企業の持ちもの」となっていますが、MLBではオーナーが所有することが当たり前になっています。その中でも、ヤンキースという名門で20年間プレーしたスター選手であるジーター氏が経営権を持ったことは、アメリカでも相当なインパクトを持って報じられています。

「元スター選手のCEO就任というだけではなく、正確な金額はわかりませんが、ジーターさんは自分でも27億円?ぐらい出資しているといわれています。メジャーリーグを、ベースボールの魅力を知り尽くしている彼がどんなことを仕掛けてくるのか、本当に楽しみです」

池田氏の指摘通り、ジーター氏は引退直後からセカンドキャリアとして球団経営への興味を示していました。2014年に引退した際には、ニューヨーク・ポスト紙に「監督やコーチには向かないだろう」と語っています。さらに続けて飛び出したのは、球団経営への野心でした。

「次の目標というものではないが、野球に関することに興味を持ち続けていたい。あくまでも希望だけど、メジャー球団のオーナーになりたいね」(ジーター氏)

オーナーではありませんが、早くも引退時の夢を掴もうとしているジーター氏。その夢の舞台は、かつての盟友・イチロー選手がプレーするマーリンズということになりました。

マーリンズを人気球団にできるか? メジャーを知り尽くした男の挑戦に期待

(C)Getty Images

「マーリンズの本拠地、マーリンズ・パークは、ものすごく良い球場なんですよ。前オーナーのローリアさんがアートを好きな人で、アーティスティックな噴水や、選手たちのボブルヘッド(首振り人形)を展示するスペースもあります。球場自体も開閉式で美しく、足を運びたくなるスタジアムなんです」

池田氏は、2012年に新設されたマーリンズ・パークの魅力について語ったあと、「でも…」と、こう話を続けます。

「でも、満席にはならないんですよ。いつも空席が目立つんです」

池田氏の指摘通り、1993年にフロリダ・マーリンズとして誕生した新興球団マーリンズは、1997年と2003年にワールドシリーズ制覇を果たしているものの、結果が出た直後に主力選手を軒並み放出する“ファイヤーセール”のチームとして有名で、地元の人気を得るのに苦戦しています。

アメリカンフットボール用のスタジアムを改修して使っていた郊外にある旧本拠地サンライフ・スタジアムにかえて、2012年、マイアミ・オレンジボウル(アトランタ五輪・サッカー日本代表「マイアミの奇跡」の舞台)跡地という好立地にマーリンズ・パークを建設。これを機にマイアミ・マーリンズと改称して新たな一歩を踏み出しましたが、ここまでのところ、マイアミの人たちの心を掴んだとはいえない状況が続いています。

「そこで、ジーターさんが何をやってくれるかなんですよ。マイケル・ジョーダンさんも共同出資者に名前を連ねていますが、今回に限ってはジョーダンさんではなく、元べースボールプレーヤー、ヤンキースのレジェンドのジーターさんだからこそできることに期待したいんです」

ニューヨーク・ヤンキースというMLBの中でも突出した人気球団の象徴として20年間現役を続けたジーター氏が、どのような視点で球団経営を行うのか? マーリンズにはイチローだけでなく、こちらもヤンキース一筋でプレーした先輩、ドン・マッティングリーが監督としてチームを率いているというアドバンテージもあります。

プロ経営者が球団の資産価値を高めるために手腕を発揮するのが当たり前のMLBにあって、プレーヤーの気持ち、ファンの気持ち、そして何よりベースボールを知り尽くしたジーター氏が何をやってくれるのか? もしかしたら、MLB球団経営の新しい在り方を示すきっかけになるかもしれません。


取材協力:文化放送
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毎週火曜日レギュラー出演:池田純
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VictorySportsNews編集部