文=中西美雁

中田新監督の下、快進撃を続ける全日本女子

©中西美雁

4年に1度の世界大会、「ワールドグランドチャンピオンズカップ2017女子大会」が5日に開幕する。

2017年のグラチャン女子大会に出場するのは、開催国でアジア覇者の日本のほか、南米覇者のブラジル、北中米覇者のアメリカ、欧州覇者のロシア、リオ五輪金メダルの中国、そしてFIVBの推薦枠で出場する韓国の計6チームだ。各チームは総当たりのリーグ戦を行い、順位を競う。

中田久美新監督の下、5月に始動した全日本女子バレーボールチームは、7月のFIVBワールドグランプリ2017でブラジルを破るなど健闘して12チーム中5位になると、8月にフィリピンで開催されたアジア女子選手権大会では10年ぶりの優勝を果たし、快進撃を続けている。今年3月には、長年エースとして全日本女子を支え続けた木村沙織が引退し、一つの時代が終わった。2020年の東京五輪に向けて新たなサイクルに入り、グラチャンで世界の強豪国に挑む中田ジャパンの注目選手などを見てみよう。

1日に都内で行われた記者会見で、グラチャンに臨む14名の選手が発表されたが、その中に、次世代のエースと目されてきた古賀紗理那の名前はなかった。また、中学生で全日本入りし、竹下佳江の後継者と期待されてきた宮下遥も同じくメンバー外となっている。ふたりとも、膝の故障で外れたのだという。宮下は、ワールドグランプリの当初から痛みを訴えており、大会後半の香港ラウンドから離脱。古賀はアジア選手権の途中から離脱していた。そのため、アジア選手権の準決勝と決勝に古賀は出場していない。

アジア選手権では、安定したプレーを見せた新鍋理沙がMVPを受賞した。グラチャンでは、間違いなく新鍋が攻守の要となるだろう。新鍋はレセプション(サーブレシーブ)をするアタッカーで、ロンドン銅メダリストの一人だ。眞鍋ジャパンの2期目の途中から全日本に招集されなくなっていたが、中田監督の就任とともに復帰した。

中田監督にとって新鍋は、久光製薬を率いていたときの愛弟子の一人。中田監督の掲げる「ワンフレームバレー」「スピードバレー」の起点となるレセプションについて、新鍋は「ワールドグランプリでも、アジア選手権でも崩される場面が多かった。グラチャンではさらにレベルの高いサーブが来ると思うので、より精度の高いレセプションを返していきたい」と意気込みを語った。「速いバレーのためには、ボールの回転を殺してセッターに返さなければなりません。私達レセプション担当の選手は、そこに気をつけて、セッターに返しつつ攻撃にも入る。責任を感じています」。

新鍋は173cmで、バレー選手としては小柄だ。だが、そのいぶし銀のプレーで久光でも何度も優勝に貢献し、今また中田ジャパン初年度の躍動を支えている。中田監督は新鍋のことを「少し私に似ている」とコメントしたこともある。

古賀不在で期待を集めるレセプションアタッカー

©FIVB

もう一人、今大会で注目したい選手は、やはりレセプションアタッカーの石井優希。リオ五輪にも出場した石井は身長が180cmあり、日本人選手としては長身のアタッカーだ。眞鍋ジャパン2期目から全日本に定着したが、気持ちの優しさが裏目に出て、調子に波があり、なかなかスタメンには定着できなかった。しかし、リオ五輪世界最終予選で「午後8時半の女(途中から出て来るリリーフ)」とメディアに書かれ「悔しいです!」と奮起。中田監督(当時は久光の総監督)からも「目からビームを出すつもりで頑張りなさい」と励まされ、見事に五輪出場を果たした。

しかし、今年度はいろいろな選手が試されている。ワールドグランプリのブラジル戦、石井は出場しなかったのだが、この試合に勝利したこともあって、続く香港ラウンドでは登録外となった。さらにアジア選手権でも14名のメンバーから外れている。

本人は、ワールドグランプリについては、調子が良くない自覚があったが、アジア選手権のときには戻していたので、ショックだったという。それでも帰国してから木村沙織にLINEをもらって「気持ちを切り替えて、練習に臨んできました。同じポジションの古賀が今大会の登録を外れましたが、『人のことを気にするんじゃなくて、楽しめばいいんだよ』と言われて楽になりました。いろいろな経験をされた沙織さんの言葉でしたから、大きかったです」と、偉大な先輩からのアドバイスで立ち直ったことを明かした。

古賀の落選については、「紗理那の膝の調子が良くないのは知っていたけど、落ちるとは思わなかったので驚きました。でも、東京では対角を組んでやれたらいいなと思う。紗理那には、しっかり休んでもらって、今は自分が頑張るときだと思います。『紗理那が落ちたから紗理那の分も』と重荷に考えるのではなく、自分のために頑張りたいと思います」。

二人のレセプションアタッカー、新鍋と石井。中田監督の愛弟子でもある二人が、今シーズンの締めくくりとなるグラチャンで、自身が全日本に必要な選手であることを示せるか。

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中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』