バレー選手のヌードを撮りたいのは男性関係者だけ?

Jリーグの全試合配信で、一挙に日本のスポーツファンにおなじみとなったDAZN(ダゾーン)は、Jリーグに先駆けて、Vリーグの全試合配信(ただし1部にあたるプレミアのみ・2部・3部については部分的配信)を行ってきた。ダゾーンによる発表でも、バレーボールは、よく見られるコンテンツの上位を占めている。さらなる注目を集めるため、ダゾーンは今季、「ディスカバーVリーグ」というプロモーションを行った。中でもバレーファンの耳目を集めたのが、選手をファッションモデル風に撮影し、普段コートで見せているのとは、また違った魅力を届けようというもの。第一段は、グラチャンで初代表ながらも活躍したJTサンダーズの山本将平選手が選ばれ、モノクロの写真で、バレーボール選手のスタイルの良さを十分に活かした写真が公開された。その中に、素肌にジャケットを着ているものもあった。

これを見て、思い出したことがある。バレー記者として駆け出しの頃、当時の編集長がよく「俺は、アオ(青山繁)の風呂写真を撮ったんだぜ」と、自慢していたのだ。スポーツライターやカメラマン(ファンも同じかもしれないが)は、ちょくちょく「自分は選手・関係者と親しい自慢」をする。そのため、『はいはい』と思いつつ「すごいですね!」「さすがですね!」とか、適当な相槌を打っていたのだが、いくつかあった自慢話の中でも、彼にとってこのエピソードは特別なもののようだった。どこが特別かというと、「裸を撮った!」というところだ。

月日は流れ、私はとある今はなきスポーツ総合誌でバレー記事を書いていた。北京オリンピック代表で、現在はビーチバレーに転向した越川優選手を、そのとき「絶対に表紙にするべき」と推して、実現した。インタビューを終えた後、私が部屋を出た後も、カメラマンさんと編集さんは部屋に残っていた。そして、しばらくして「やった! 脱がせた!」と興奮して部屋を出てきたのだ。上半身ヌードでの撮影を了承してもらったのだという。私はまた『はいはい』と思い、聞き流していた。

またまた月日は流れ、NEXT4のブレイクで、男子バレーブームが再びやってきた。雨後の筍のように男子バレー本が出版され、そのいくつかに私も関わった。長くお世話になっているスポーツ総合誌からも本が出て、編集担当者は「できれば石川(祐希)くんのヌードはほしいですね!」と熱っぽく語っていた。私は…「またかよ! ていうか、なんでみんなヌードにそこまでこだわるんだよ!」と頭を抱えたくなっていた。

ここまで読んでいただければおわかりのように、私自身は全く男性アスリートのヌードを見たいと思わないのである。ちなみに、上記の編集長も、編集担当者も、カメラマンさんも全員男性だ。だから、そこに何かギャップがあるのではないかと漠然と思ってきたのだ。

男子バレー選手のヌードは減少傾向だが…

©The Asahi Shimbun/Getty Images

NEXT4のブレイクより少し前に、男子バレー選手の写真集が日本バレーボール協会から発売された。その時の表紙も選手の上半身ヌードで、ツイッターでは、「写真集が出るのはすごく嬉しい。だけど、ヌードはいらない」「気持ち悪い」という反応がほとんどだったように記憶している。

しかし、ダゾーンの素肌にジャケットの山本選手の写真は、私でも違和感なく「かっこいいな」と思えたのだ。また、最近女性誌のananで男子バレーの推しメン的な記事を解説させていただいたのだが、それを伝えた知人(女性)が、「ananだったら、鍛え上げたボディが見られるのかなー?」というメッセージをくれた。そのときに「え? やっぱり女性にも、そういう需要ってあるの?」と衝撃を受けた。そこで、私のツイッターアカウントでアンケートを取ってみた。

その結果がこちらだ。

第1位は堂々の「芸術的なものなら見たい」。アンケートの質問の例にも挙げたダゾーンの写真は本当にクオリティが高かったので、それも大きかったのだろう。そして第2位は「見たくない」であり、『やっぱり』と思った次第だ。しかし、意外だったのは「見たい」という意見が17%もあったこと。このアンケート、わざわざ「(性別♀)」の方とお願いをしているのだが、厳密には誰でも投票できるので、「心は乙女」の方々が入っているのでは? と勘ぐってしまう。

というのも、何人かそういう方の知り合いがいるのだが、全員が「男性アスリートのヌードは絶対に見たい派」だったからだ。『心は乙女でも、嗜好はやっぱり男性のままなんだなぁ』と感じたわけである。とはいえ、それなりの数の人が「見たい、できるだけきわどいところまで」を選び、一番のボリュームゾーンが、「芸術的なものなら見たい」ということだったのは、少し驚きの結果だった。

ただ、芸術的なヌード写真というのは、今回のダゾーンのものや、ロバート・メイプルソープとかレスリー・キーレベルのものでないと、女性は納得しない。「なんか適当にモノクロにしておけばいいんだろ」的なものは、見向きもされないのだ。少し前にクラウドファンディングでカレンダーを作るという企画をやったVチームがあり、その告知の写真がモノクロの上半身ヌードだった。そして、正確な文章は忘れたが、「お金を出してくれればくれるほど、もっと見せますよ」みたいなあおり文がついていて、見た瞬間「この企画は成立しないな…」と思っていたが、やはり不成立に終わった。

もう一つ思い出したのが、ヤフオク黎明期にときどき「バレー」という単語を入れて検索していたのだが、当時一度ひっかかったのが、聞いたこともないタイトルの男子バレー写真集だった。そこで見本として出されていた写真が、いわゆるへそチラとか股間のドアップがバンバン入ったもので、ドン引きしたことがあった。今にして思えば、資料的な意味合いで買っておけばよかったのだが、当時はまだライターになったばかりで、あまりそういう思考が働かなかった。もちろんその路線の写真集は、今は全く発売されていない。

男性は、話題になった女性有名人や女性選手がヌードになると、とりわけその女性のファンでなくても飛びつく習性がある。数年に一度くらいの割合で、バレーボール選手がヌードになって話題を呼んでいる。男性バレーボール選手のヌードが同じように話題になることは少ないが、その表現方法によっては女性ファンにも、男性バレーボール選手のヌードはそれなりに需要があるものなのかもしれない。今回のアンケートによって、少し認識を改めた次第である。

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中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』