中6日以上の日程で戦えるホスト国の日本

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2019年9月20日(金)から始まる、日本、そしてアジア初の第9回ラグビーワールドカップ開幕まで、もう2年を切った。今年5月には予選プールの組み分け抽選が行われ、11月2日は大会のスケジュールと開催スタジアムが決定。来年1月からはチケットが発売開始するなど、いよいよ、本番までの気運が高まってきた。

まずプールAに入ったラグビー日本代表の予選プールの日程と対戦相手、試合会場は下記の通りとなった。

9月20日(金) 19:45 東京スタジアム(味の素スタジアム)
日本代表対ヨーロッパ地区代表

9月28日(土) 16:15 静岡エコパスタジアム
日本代表対アイルランド代表

10月5日(土) 19:30 豊田スタジアム
日本代表対ヨーロッパ・オセアニアプレーオフ勝者

10月13日(日) 19:45 横浜国際総合競技場(日産スタジアム)
日本代表対スコットランド代表

初の決勝トーナメント進出を目指す日本は、ホスト国として9月20日(金)の開幕戦を戦う。過去の大会とは違って試合と試合の感覚が中6日以上、そして関東と中部での開催と日本開催とホームの地の利を十分に活かすことができる日程となった。

ただ、ラグビーワールドカップは日本代表戦以外にも、予選プールから世界的に注目されている対戦が目白押しである。ワールドカップには20チームが参加し、下記の通り5チームずつ4つのプールに分かれて予選を行い、各プールの上位2チームの計8チームが決勝トーナメントに進出し、優勝杯「ウェッブ・エリス・カップ」を争う。

プールの組み分け
プールA:アイルランド、スコットランド、日本、欧州地区1、欧州・オセアニアのプレーオフの勝者
プールB:ニュージーランド、南アフリカ、イタリア、アフリカ地区1、敗者復活戦の勝者
プールC:イングランド、フランス、アルゼンチン、アメリカ、トンガ
プールD:オーストラリア、ウェールズ、ジョージア、フィジー、アメリカ地区2

まずなんといっても、チケット売り切れ必至の試合は2019年9月21日(土)に、プールBに入った、現在ワールドカップ2連覇中の「オールブラックス」こと王者ニュージーランド(世界ランク1位、11月13日現在)が、優勝2回を誇る「スプリングボクス」こと南アフリカ代表(世界ランク5位)の世界的強豪同士がいきなりぶつかる(18:45 @横浜国際総合競技場)。

なぜ、9回の大会の中で4ヵ国しかない優勝経験チームが予選プール初戦から直接、当たることになったのか。

実は昨年、世代交代中だった南アフリカ代表は調子を崩しており、5月のプール組み分け抽選時は世界ランキングが7位だったため、上位1位~4位のポッド1ではなく、ポッド2に入り、3連覇を目指すニュージーランド代表と同組になったというわけだ。

ニュージーランド代表は2連覇の立役者となった前キャプテンのFL(フランカー)リッチー・マコウや司令塔のSO(スタンドオフ)ダン・カーターなど多くの選手が2015年の大会後に代表から退いたが、キャプテンのNo.8(ナンバーエイトバーエイト)キアラン・リードを中心に、昨年の世界最優秀選手のSOボーデン・バレット、若手の成長著しいトライゲッターWTB(ウィング)リエコ・イオアネと、ラグビー王国の層は厚く、2019年も優勝候補の筆頭であることは間違いない。

南アフリカ代表は、1995年、2007年の優勝国で、前回の2015年大会は、予選プール初戦で日本代表に敗れたが、それでも大会3位の強豪だ。こちらも昨年はやや調子を落としたが、今年は好調で日本のNTTドコモでもプレーしたキャプテンのLOエベン・エツベス、現在もNTTコミュニケーションズでプレーするSOエルトン・ヤンチースなど、日本でもおなじみの選手が活躍している。

この試合は単なる予選プールの1試合という位置付けではない。もし、この試合で負けてプールB2位となったチームは、準々決勝でプールA1位(順当に行けば世界ランキング4位につけているアイルランド代表)との対戦が待っている。準々決勝での強豪との対戦を避けるためにも、この試合で勝利することは、優勝するためには大事になってくると言えよう。

ちなみにプールB1位のチームは、準々決勝でプールA2位のチームと対戦する。もし日本代表がプールBを2位で通過すれば、ニュージーランド代表か南アフリカ代表と対戦することになる。

ワールドカップの舞台で世界王者との大戦か、それとも2015年ワールドカップの「世紀の番狂わせ」の再現か――いずれにせよ、日本代表が決勝トーナメントに勝ち上がれば、日本中の注目を浴びる大一番が待っている。

9月21日に2つのビッグカードが重なる

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もう一つの注目カードも2019年9月21日に行われる、プールCのフランス代表(世界ランキング8位)対アルゼンチン代表(世界ランキング10位)の試合(16:45 @東京スタジアム)だろう。

「死の組」と言われているプールCにはイングランド代表、トンガ代表、アメリカ代表が決まっており、現在エディー・ジョーンズ前日本代表HCが率いるイングランド代表は、ヨーロッパ6カ国対抗戦「シックスネーションズ」2連覇中で、この2年間で22勝1敗とオールブラックスに比肩する強さを誇り、優勝候補の一つと目されている。

もちろん、10月12日(土)に行われるイングランド代表対フランス代表の対決(17:15 @横浜国際総合競技場)も好勝負が期待されているが、最近の試合を見ている限り、イングランドの代表の優位は動かない。

つまり、プールCは、順当に行けばイングランド代表を除いた決勝トーナメント1枠を争うことになるため、フランス代表もアルゼンチン代表もこの直接対決となる予選プール初戦でナントしても白星を挙げておきたいと考えるため、激戦は必至だ。

フランス代表もアルゼンチン代表のカードは2007年のフランス開催のワールドカップ開幕戦と同じで、この時はアルゼンチン代表が金星を挙げ、準決勝でも再びフランス代表を下し世界3位となった、いわば因縁の対決。通算成績はフランスの35勝14敗1分だが、この10年間では5勝4敗とほぼ互角だ。負けた方は、イングランド代表に勝利しなければ決勝トーナメント進出が難しくなるだろう。

個人的には、なぜ、ニュージーランド代表対南アフリカ代表、そしてフランス代表対アルゼンチン代表を同じ9月21日に持ってきたのか、残念でならない。

2019年9月22日(日)は、日本と同じプールAのアイルランド代表(世界ランク4位)対スコットランド代表(世界ランク6位)の試合(16:45 @横浜国際総合競技場)が行われる。

両者はシックスネーションズなどで対戦も多く、2015年はともに決勝トーナメントに進出しているヨーロッパの強豪同士だ。また、昨年はスコットランド代表が、今年はアイルランド代表が日本に遠征しており、やはりベスト8進出には互いに落とせない、プライドを賭けた戦いとなるだろう。

プールDは、2019年9月29日(日)のオーストラリア代表対ウェールズ代表の激突(16:45 @東京スタジアム)も耳目を集めているが、個人的には9月23日(月・祝)のウェールズ代表(世界ランク7位)対ジョージア代表(世界ランク12位)の一戦(19:15 @豊田スタジアム)を楽しみにしている。

ワールドカップでは2011年は4位、2015年は開催国のイングランドを破り決勝トーナメントに進出したウェールズ代表は、同プールではオーストラリアに次いでベスト8の最右翼と思われている。ただ、ジョージア代表も2003年からワールドカップには連続で出場しており、2015年は2勝を挙げプール3位で2019年日本大会の出場権を獲得し、着実に実力をつけている強豪だ。

11月18日にウェールズ代表のホームで行われた対戦でも、13−6と拮抗した戦いを見せており、日本同様、ワールドカップで初の決勝トーナメント進出を目指すジョージア代表が「台風の目」となるかもしれない。

9月20日に開幕し、10月13日まで40試合が行われる予選プールで上位2チームに入ると、決勝トーナメントに進出する。そして10月19日、20日に準々決勝、26日、27日に準決勝、11月2日に決勝を戦う。

◇準々決勝
準々決勝1:プールC 1位vsプールD 2位
10月19日(土)16:15 大分スポーツ公園総合競技場(大分銀行ドーム)

準々決勝2:プールB 1位vsプールA 2位
10月19日(土)19:15 東京スタジアム

準々決勝3:プールD 1位vsプールC 2位
10月20日(日)16:15 大分スポーツ公園総合競技場

準々決勝4:プールA 1位vsプールB 2位
10月20日(日)19:15 東京スタジアム

◇準決勝
準決勝1:準々決勝1勝者vs準々決勝2勝者
10月26日(土)17:00 横浜国際総合競技場

準決勝2:準々決勝3勝者vs準々決勝4勝者
10月27日(日)18:00 横浜国際総合競技場

◇3位決定戦
準決勝1敗者vs準決勝2敗者
11月1日(金)18:00 東京スタジアム

◇決勝
準決勝1勝者vs準決勝2勝者
11月2日(土)18:00 横浜国際総合競技場

互いに順当に勝ち続ければ、3連覇をうかがうニュージーランド代表とジョーンズHCが率いるイングランド代表は準決勝で当たることになるが、果たして……。

予選プールから決勝トーナメントにかけて日本全国で行われ試合は48試合。世界中からファンが集い、ラグビーの世界の最高レベル選手たちが繰り広げる熱戦で、日本中が熱狂する2ヶ月間となることは必死だ。

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」という大会キャッチコピーの通り、「世界三大スポーツ大会」の一つと称されるラグビーワールドカップを、日本代表戦だけでなく、是非スタジアムに足を運んで肌で感じてほしい!

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斉藤健仁

1975年生まれ。千葉県柏市育ちのスポーツライター。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパンの全57試合を現地で取材した。ラグビー専門WEBマガジン『Rugby Japan 365 』『高校生スポーツ』で記者を務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。『エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡』(ベースボール・マガジン社)『ラグビー日本代表1301日間の回顧録』(カンゼン)など著書多数。Twitterのアカウントは@saitoh_k