31歳にしてキャリハイ? オリンピックイヤーを迎えた小平奈緒が強い

今季はまさに敵なし、31歳になった小平選手は衰えるどころかキャリア最高、日本のスケート史上トップクラスの強さを発揮しています。平昌での金メダル獲得の期待も大きく、日本選手団の主将にも任命されました。

圧倒的な強さを誇る小平選手ですが、前回大会、2014年に行われたソチオリンピックは失意のうちに終わりました。

27歳で迎えたソチオリンピックは、小平選手にとって紛れもなく“勝負の大会”でした。結果は1000メートル13位、500メートルは5位。特に500メートルは順位以上の惨敗でした。

「金メダルを獲得した韓国の李相花選手をはじめ、世界のトップレベルとは明らかな差がある」

自己ベストに迫る滑りを見せてなお遠い世界との差。このときの経験が「このままではいけない」と小平選手に変革のモチベーションを与えました。

すでに小平選手の成長、強さの秘密としてよく知られているオランダ留学は大きなターニングポイントになりました。

ソチオリンピックのスケート競技はまさにオレンジ一色。個人種目での金メダル6個を含む21個のメダルがオランダ勢の手に渡りました。スケート王国として知られていたオランダでしたが、ソチでは明らかに頭一つ抜ける活躍を世界に見せつけました。世界の壁の高さを痛感した小平選手は「オランダには何かある」と留学を決めたのです。

(C)Getty Images

大きな転機となったオランダ留学と背中を押したコーチの言葉

小平選手を指導する結城匡啓コーチは当時、彼女のオランダ留学についてこんな風に語っています。

「仮に『日本で取り組んでいることが間違っていない』という答えを得るだけでも行く価値がある」

この発言は、「日本選手には、体格に合った技術があり、練習法がある」という批判に応えたもので、全力を出し切っても背中さえ踏めないなかで「何か」を必死でつかもうとする小平選手にとっては大きな支えになったことでしょう。

ソチでのオランダの圧勝劇には、スケート靴などのギアやオランダ選手の技術がソチの軟らかい氷と相性が良かったという分析もなされていたため、小平選手が渡蘭した当初はそのチャレンジに否定的な声も多く聞かれました。

「結果が出たからと言ってすぐに真似をしても仕方ない」

「ソチでのオランダの躍進は偶然の要素もある」

そんな外野の声を吹き飛ばすかのように、オランダに渡った小平選手は目に見える結果を出し続けました。

2014年の11月にワールドカップ・ソウル大会の500メートルで参戦9年目にして初めての優勝を果たすと、2014-15シーズンは、500メートルで総合優勝。2年間過ごしたオランダから帰国後もワールドカップをはじめとする国内外の大会で、次々に勝利を重ねます。

今季、2017-18シーズンには500メートルで15連勝という圧倒的な強さを誇り、かつて全力を尽くしても届かず仰ぎ見る存在だったバンクーバー、ソチの500メートル金メダリスト・李相花との立場もいまでは逆転しています。

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オランダ留学はきっかけにすぎない 小平の覚醒はその姿勢にあり

日本のメディアの多くは小平選手の躍進を「オランダ留学」に集約しようとしますが、小平選手本人はこれを暗に否定する発言をしています。

「オランダに行って強くなったといわれていますけど、日本にも素晴らしい方(指導者)がたくさんいます。日本のスポーツ科学の素晴らしさを証明したい」

すでに紹介したソチ直後の、あのタイミングでオランダに行ったことが小平選手の“スイッチ“を押したことは間違いありませんが、そのことをもって、オランダの指導が素晴らしく、日本が遅れているということにはなりません。実際に小平選手は2年の留学を経て「体の大きなオランダ人と同じことをしても勝てない」と痛感したそうです。2016年4月に帰国した後は、古武術などをヒントに日本人に合った身体操作法を学んだり、自分に適したトレーニング法を探る毎日を過ごしていて、オランダのトレーニングが直接結果に結びついているわけではないと本人も語っているのです。

小平選手がオランダに留学した理由は、ソチオリンピックでオランダがメダルを量産した事実があるから。結城コーチが背中を押したように「何かあるなら見て、感じたい」という貪欲さが生んだ行動でした。オランダで日本にない合理的なトレーニング理論や技術的なヒント、精神的な強さを手にしたことは間違いありませんが、金メダルを獲得するために、世界のトップレベルと戦うために「できることはなんでもやる」と決めた時点で、小平選手の平昌への道は明るく開けたのではないでしょうか。

実際に小平選手に刺激を受けた日本人選手も世界に学び、それを自分たちに合うようにアジャストする“日本流”の育成強化で結果を残しています。23歳になったかつての天才少女、高木美帆は1500メートルで今季ワールドカップランキング首位に立ち、1000メートルでは小平とのダブルメダルも期待されています。

ソチでの悔しさをバネに行動し、誰もが驚くような変化を遂げた最強女王、小平奈緒選手の3度目のオリンピックがいよいよ始まります。

<了>

30歳・小平奈緒が大ブレークを遂げた理由。2年のオランダ留学が彼女を変えた

2017年2月に江陵で開催された世界距離別スピードスケート選手権大会で、500mで金メダル、1000mで銀メダルを獲得。同じく2月に行われた世界スプリントスピードスケート選手権大会では世界新記録で金メダルを手にした小平奈緒選手。これまで国際大会で芳しい結果を残していなかった彼女が31歳という年齢でブレークした理由はなんなのか。そこには環境の変化を恐れず攻め続けた女子アスリートの姿がありました。

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VictorySportsNews編集部