PGAツアー最多勝利記録を持つサム・スニードの82勝にあと1勝と迫っていたタイガー・ウッズが、通算19アンダーで逃げ切って記録に並び、日本のエース松山英樹が必死に追い上げて通算16アンダー2位に食い込んだ。日本で開催されたPGAツアーとして、これ以上ない絶好の試合展開だった。

タイガー・ウッズが今後、どのような形で記録を更新していくかわからないが、サム・スニードの記録に並んだのが日本の千葉で開催された試合だということは、世界中のゴルフファンの記憶に焼きついたはずだ。

この大会を千葉で開催したのは、スポンサードしたZOZO創業者・前澤友作氏の功績が大きかった。自身の出身地であり、ZOZOが本社を構える千葉で、ゴルフの魅力を伝えるために世界最高峰ツアーを誘致したことが、結果的に台風被害に苦しむ千葉を元気づけるビッグイベントとなった。

もちろん、千葉だけでなく日本全国からゴルフファンが押し寄せ、日本のゴルフ界にとっても大きなインパクトを与える大会となった。

大会初日は18536人のギャラリーが会場に押し寄せた。ギャラリーバス乗り場が大混雑し、SNSでは大会運営側の不備を指摘する声も多く見られたが、試合会場に入場してからはPGAツアーの魅力を伝える投稿が相次いだ。

8時40分に10番ホールからティオフしたタイガー・ウッズ、小平智、トミー・フリートウッドの組と、9時30分に1番ホールからティオフした松山英樹、ジョーダン・スピース、アダム・スコットの組を中心に、ものすごい数のギャラリーが集まり、選手たちの一挙手一投足を見守った。

特定のエリアではスマートフォンによるギャラリーの撮影も許可され、SNSに多くの写真や動画が投稿された。一方で、撮影禁止エリアでもお構いなしに撮影するマナー違反も多く見られ、物議を醸した。この点は来年以降の課題となるだろう。

大会2日目は前夜から雨が降り続いた悪天候により6時30分の時点で中止が決定したが、ゲートオープン前から多くのギャラリーが開門を待ち構えた。

大会3日目はコース内に多数の水没箇所が発生したため、無観客試合となった。最も大きな水没被害を受けた10番パー4は、フェアウェイ上にティを仮設し、140ヤードのパー4として実施するなど臨時対応を余儀なくされたが、何とか無事に第2ラウンドを終えた。

大会4日目は6時30分から第1組がスタート。第3ラウンドを終えた後、最終ラウンドを日没までプレーし、残りホールは大会5日目の月曜日に持ち込まれるという変則スケジュールとなった。この長丁場の戦いを目の当たりにするため、22678人もの大ギャラリーが選手たちを取り囲んだ。

そして大会5日目となった月曜日も、残り7ホールのプレーを見るために、4日通し券を持った、決して少なくないギャラリーがタイガー・ウッズと松山英樹の優勝争いを見守った。

タイガー・ウッズがプレー再開直後の12番パー4をボギーとし、この時点で松山英樹と2打差。勝負の行方はわからなくなったが、松山英樹もバーディチャンスを決め切れず、16番パー3でバーディを奪ったのみ。タイガー・ウッズは14番パー5でバーディを取り返し、18番パー5もバーディで有終の美を飾った。

惜しくも敗れた松山英樹だが、日本のエースとして十分に力を発揮したと言えるだろう。最後まで必死に追い上げ、優勝には手が届かなかったが、自国開催のPGAツアーでやるべきことはすべてやったのではないか。

この試合が日本で開催されたことは、色々な面で大きな意義があるだろう。まず、日本の男子ゴルフは今、人気低迷が懸念されているが、決して男子ゴルフ自体の人気がないわけではないことがはっきりわかった。

タイガー・ウッズをはじめとする世界トップクラスの選手が集まり、真剣勝負を繰り広げれば、日本のトーナメントよりもはるかに高額なギャラリーチケットを買い求めて、男子トーナメントが見たいゴルフファンが日本にこれだけたくさんいることが証明された。

今回は悪天候により大会2日目が中止となり、大会3日目が無観客試合となった。この2日間に観戦を予定しており、チケットの払い戻しを余儀なくされたファンの多くはSNSで、「払い戻しではなく、日曜日に振り替えてほしい」と切実に訴えていた。

日曜日のチケットを持っている人も数多くいたため、そのような対応はできなかったが、払い戻しを受けたファンはおそらく、今年の無念を解消すべく来年もチケットを買い求める可能性が高いだろう。

また、PGAツアーは4日間で試合が終わらなくても、5日間(場合によっては6日間)かけて72ホールで決着をつけるのが原則だという姿勢を示したことも、今後の日本のトーナメントのあり方について、大きな提言となるだろう。

日本のトーナメントは大会期間中の1日が悪天候によって中止になると、54ホール短縮競技になるケースが多い。その理由は、最終日のテレビ中継を日曜日にやりたいというテレビ局の都合によるところが大きい。

でも今回、テレビ朝日が大会5日目をテレビ中継したように、ツアー側とテレビ局側が最初から取り決めをしていれば、試合期間を延長することも、テレビ中継を延長することもできるわけだ。日本のトーナメントがそれをやらないのは、自らが世界の常識から取り残される選択をしていることになる。今後もそれでいいのか考えるべきだろう。

女子ツアーに人気が押されがちな男子ツアーだが、「ZOZOチャンピオンシップ」開催週は明らかに女子ゴルフの話題よりも男子ゴルフの話題が盛り上がった。これを受けて、男子ツアーが大きく変わるきっかけとなってほしい。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。