東京五輪のゴルフ競技は、男子が7月30日~8月2日の4日間、女子が8月5日~8月8日の4日間に開催される。ジョンソンが主戦場にするPGAツアーの試合は、男子ゴルフ開催期間中は行われないが、五輪前週はミネソタ州で「3Mオープン」を開催。2週前にはイングランドでメジャー大会の「全英オープン」が開催される。

そして五輪翌週にはノースカロライナ州でレギュラーツアー最終戦の「ウィンダム選手権」。2週後にはマサチューセッツ州でプレーオフ第1戦の「ザ・ノーザントラスト」が始まる。その後、プレーオフ第2戦はイリノイ州で「BMW選手権」。プレーオフ最終戦はジョージア州で「ツアー選手権」というスケジュールになっている。

ジョンソンはこれらの試合すべてに出場するわけではないが、2週前の「全英オープン」と2週後から始まるプレーオフシリーズを優先し、東京五輪欠場という判断を下したようだ。4年前のリオデジャネイロ五輪もジカ熱への懸念を理由に出場を見送っており、これで2大会連続の欠場となる。

リオデジャネイロ五輪の際は、ジカ熱への懸念のほかに、水質汚染などの環境不安や治安に対する不安を理由に欠場する男子選手が続出した。

当時の世界ランキング1位ジェイソン・デイ、2位ダスティン・ジョンソン、3位ジョーダン・スピース、4位ロリー・マキロイ、5位バッバ・ワトソンのうち、出場したのは5位のワトソンのみだった。

一方、女子選手は当時の世界ランキング1位リディア・コ、2位ブルック・ヘンダーソン、3位朴仁妃、4位レキシー・トンプソン、5位キム・セヨンがすべて出場した。

五輪のゴルフ競技は1900年のパリ五輪と1904年のセントルイス五輪で開催された後、長らく競技から除外されていた。2016年のリオデジャネイロ五輪で112年ぶりに復活したが、選手たちの反応は二極化した。

大まかに言えば、男子選手の一部は消極的な姿勢だったのに対し、女子選手のほとんどは積極的な姿勢だった。その理由は男子ゴルフと女子ゴルフの歴史の違いにもあると思われる。

男子ゴルフの世界では、1934年創設の「マスターズ」、1895年創設の「全米オープン」、1860年創設の「全英オープン」、1916年創設の「全米プロゴルフ選手権」が4大メジャー大会として確固たる地位を築いている。

4大メジャー大会をすべて制覇することをキャリアグランドスラムと呼び、この偉業を達成することが多くの選手にとって目標となっている。

キャリアグランドスラムを達成した選手は過去に5人しかいない。ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラウス、タイガー・ウッズだ。

正確に言えば、「マスターズ」創設以前の1930年に当時の4大メジャーを1年のうちにすべて制覇したボビー・ジョーンズがいるが、この人物は「マスターズ」の創設者であり、伝説的な偉人として別格の扱いになっている。

したがって、男子選手は112年ぶりに開催される五輪のゴルフ競技を4大メジャー大会よりも重視するという発想には至らなかった。

これに対して女子ゴルフの世界は、メジャー大会が歴史の中で何度も変更されている。1983年から2000年までは「ナビスコ・ダイナ・ショア」、「全米女子プロゴルフ選手権」、「全米女子オープン」、「デュモーリエクラシック」が4大メジャーと呼ばれていたが、2000年にデュモーリエがトーナメントスポンサーを撤退し、メジャー大会から降格。

2001年からは「全英女子オープン」がメジャー大会に昇格したが、2013年には「エビアン選手権」もメジャー大会に昇格し、現状はメジャーが5試合になっている。

選手たちにとってメジャー大会が増えるのは決して悪いことではないが、男子ゴルフのようにすべてのメジャー大会を制覇するという目標は立てづらくなっている。

また、男子と女子ではツアーで活躍できる年数も違う。男子は20代で若手、30代で中堅、40代でベテランというイメージだが、女子は宮里藍が31歳で引退を決断したように、20代中盤で中堅、30歳でベテランと呼ばれるほど若年化が進んでいる。

限られた競技人生の中でどんな目標を掲げるかというときに、4年に1度の五輪はうってつけの目標になったのだろう。

東京五輪に関しては、リオデジャネイロ五輪のような環境や治安への不安要素はなく、男子の世界ランキング1位ロリー・マキロイは今のところ出場に前向きな姿勢を見せているが、世界ランキング3位のブルックス・ケプカはメジャー大会を重視する発言をしている。

女子は世界ランキング1位のコ・ジンヨンや世界ランキング3位のパク・ソンヒョンといった東京五輪に意欲的な韓国の若手選手が台頭し、前回の金メダリスト朴仁妃が韓国代表に選ばれるかどうか微妙な状況になるほど熾烈な争いになっている。

男女ともにできるだけ多くの世界ランキング上位選手に東京五輪でメダルを争ってほしいが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などもあり、今後の選手の動向が気になるところだ。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。