「ながら投げ銭」のポテンシャル

いわゆる既存の「投げ銭」にあたる、ライブ配信を見ながら、ファンから演者に向けてお金を送るサービス(本文では「ながら投げ銭」と表現)、showroomや17live、YouTube Liveなどは2018年時点で売上規模100億円を超える市場となっている。基本的には還元率(投げ銭されたお金の内、演者に届く割合)は3〜4割程度である。ライブ配信の運営費、そしてAppleやGoogleなどのプラットフォーム手数料(30%程度)などが差し引かれた結果、還元率はそれほど高くない現状がある。コロナ禍においては、アーティストなどが無観客でライブ配信を行い、「ながら投げ銭」を活用しているようなシーンも見受けられた。M.S.S Projectの行った配信では、1億円超と見られる支援があったとして、話題を読んだ。

(C)17live

鹿島などの「ながら投げ銭」のスポーツ界での事例

先日、株式会社ookami が展開するPlayer!上で行われた、鹿島の「ながら投げ銭」が話題を呼んだが、スポーツ界でも徐々にこのような取り組みが行われている。同じJリーグでは大分トリニータが練習風景をYouTube Liveで公開し、「ながら投げ銭」を募っている。他にも女子プロレス団体のスターダムも、試合中継をYouTube Liveで公開し、「ながら投げ銭」を募る取り組みを行っている。Bリーグも無観客試合の期間中に、バスケットLIVEで「ながら投げ銭」が実施されたが、こちらは還元率も明記されておらず、来季も継続されるかについては不明瞭な部分も多い。

FC東京の「ながら投げ銭」以外の取り組み

これらのように「ながら投げ銭」の導入が多く見られたスポーツ界だが、FC東京は少し毛色の違う「投げ銭」を導入した。アスリートフラッグ財団が展開するUnlimというサービスの利用開始が発表された。このサービスはスポーツメディアなどと連携しつつ、時間・場所を問わず「投げ銭」を行える、という点で、既存の「ながら投げ銭」とは少し異質なものである。メリットとしてはクラウドファンディングのような使い方もできつつ、その対価をチーム側が作り込む必要がないため、導入コストが低い点があげられる。また興行がなくなった際にも継続的に収益源とすることができる点もメリットといえ、既存の「ながら投げ銭」よりも柔軟な部分があると考えられる。他に、このような形での「投げ銭」サービスとしては、エンゲートやwhooop!などが存在する。

(C)Unlim

アフターコロナのスポーツ生存戦略

これまで、様々な形での「投げ銭」について触れてきたが、スポーツ界ではやはり、絶対的なシェアを誇る、DAZNの意向が気になる部分となってくる。DAZNが「ながら投げ銭」を導入すれば、スポーツ界にとって追い風になることは間違いないだろう。また、Player!で鹿島が行ったような、試合の解説をOBに依頼し、そのコンテンツに「ながら投げ銭」を募るような取り組みも、特に無観客試合の期間中は、クラブ側に求められるようになっていくと考えられる。他にも、「投げ銭」によって試合のMVPを決めるなど、「投げ銭」自体を盛り上げていくための施策は、アフターコロナのスポーツ界において、必要不可欠になっていくであろう。

FC東京への投げ銭はこちらから

石川直宏(FC東京・クラブコミュニケーター)が語る、「投げ銭」について


VictorySportsNews編集部