Jリーグ メッセージ動画

これは、新型コロナウイルスによるリスクが完全に消え去ったわけではない状況で、当面無観客で開催される試合に臨む選手とクラブスタッフに対して、リーグがその思いを伝えた映像だ。公開された映像を見たファンからは、

“ありがとう。Jリーグ。”
“マジでいい動画 泣いた”
“めっちゃ感動しました! 素晴らしい動画をありがとう(´∇`)”
“Jリーグがあることを誇りに思える”
“泣いた… 選手達にってのがいいです”

など、公開後またたく間に多くのコメントが寄せられた。Jリーグが選手に対してこのような映像を用意するのは初めてのことだという。

Jリーグ メッセージ動画より

世界では、アメリカMLBやNBAの開幕も決まり、徐々にスポーツの香りが戻りつつある。NPBも無事開幕し、今のところ順調に試合を重ね、ファンは画面越しとはいえそのプレーを楽しめているだろう。

しかし、新型コロナウイルスの危機は過去のものとなったわけではない。画期的なワクチンが開発されたわけでも無いし、世界中でまだ新たな感染者が増え続けている。
MLBでは選手、関係者から1週間で40人もの陽性患者が出ているし、男子テニスの世界王者、ノバク・ジョコビッチまでもが罹患した。今後国際的な交通規制が緩和されれば、いつこの状況が日本で起きるか、決して対岸の火事では無いだろう。

冒頭のような映像をJリーグが用意したのは、このような状況で、最もリスクや不安を抱えているのは観客よりもプレーする選手であることをリーグも理解しているからだろう。選手は、プレーにおいて相手選手との接触することは避けられないし、試合が開催されれば、そこに参加しなければ自分の立場を失ってしまうというリスクもある。当然、そこには家族を残してピッチに立つことに不安を抱える選手もいるだろう。

そもそも、ファンが一番見たいのは、例え無観客試合であっても、選手の100%の全力プレーである。プロスポーツは、選手が最高のパフォーマンスをしてくれるからこそ、観客が楽しめる。しかし、新型コロナウイルス感染への不安や、無観客試合という通常の環境とは違うスタジアムの雰囲気の中で、そのプレーを見せることは容易では無い。

これまでもJリーグは、リーグ再開に向けて選手が安心してプレーできる環境づくりを進めてきた。すでに多くの報道でみる様に、Jリーグは80ページ以上にも及ぶ詳細なプロトコルを数ヶ月かけて作成し、様々な状況を想定して感染防止策や対応策の準備を進めてきた。その徹底ぶりは、ここまでやるのか、と思わせるほどである。

加えて、メッセージ映像である。映像を制作したリーグ担当者は言う。
「安心してプレーしてもらう環境作りに最大限努力しながら、最後は選手の気持ちに託すことになります。多くの人が楽しみにしている選手の最高のプレーをピッチで見せていただくためにも、この映像を作りました」。Jリーグがいかに選手の目線を意識しているかがわかる。

また、Jリーグは同時に、選手に安心感を与えるための膨大なプロトコルを準備しているとはいえ、選手に安心してもらうためには、できる限りその内容理解してもらう必要がある。そこで、選手に関わる部分だけを抜粋しわかりやすくイラストともに紹介した選手専用のガイドツールが用意されている。選手たちが必要な時にすぐに読めるように、スマホで見えるデジタルブックの仕様になっており、内容も5分程度で読めるようにコンパクトにし、必要な箇所だけすぐに読めるようにするなど工夫している。

選手向けプロトコルガイド選手向けプロトコルガイドより

多くのスポーツ団体やチームは、観客の安全や、社会に対しての説明責任から様々な取り組みを発表しているが、Jリーグのように、選手だけに特化したコミュニケーションを図っていることは珍しい。

これらの映像やツールがどこまで選手の気持ちを動かしたかは、これから始まる数々の試合での選手のパフォーマンスを見ることでしか図れないが、Jリーグが何を大切にしているのかが非常によくわかる取り組みである。

選手に向けた映像は、冒頭、1993年5月15日に行われた開幕戦の映像から始まる。そして、Jリーグ誕生の象徴であるテーマソング「J’s THEME」が流れ始める。ここで使われている「J’s THEME」は、今回のリーグ再開に合わせて村井満チェアマン自らが作曲者のTUBE・春畑道哉氏に依頼してリニュアールした「FRONTIER ver.」となっている。
Jリーグ開幕から、27年。これまで経験したことのない125日にもわたるリーグの中断からの再スタートともなった2020年6月27日は「第二の開幕」とも言えるが、まさにそれを象徴する映像の始まりとなっている。

そして、映像の最後の言葉はこう締め括られる。
“新しい歴史を作りましょう“
6月27日は、これから数十年に渡って、必ず振り返られる歴史的な日になることは間違い無いだろう。

7月4日からは、いよいよJ1が再開を迎える。
まだリスクが残る中、綺麗事だけではいけないことも理解している。第二波、第三波に備え、あらゆる場面を想定した対策を考え、様々な準備を続けなくてはいけないだろう。それでも今は、ピッチで躍動する選手の姿を楽しみにしたい。


VictorySportsNews編集部