全員が”やりましょう”となったので選手会として行動を起こした

今回の受賞に際し、日本プロ野球選手会の活動として評価された行動の一つが、新型コロナウイルス感染拡大防止基金への寄付と呼びかけだ。

炭谷選手「コロナ禍が激しくなってきた時にプロ野球として、みんなで何かできることはないかと考え、募金をしようと声掛けさせてもらいました。12球団の各選手会会長に連絡して、選手の意見を聞いてもらった結果、全員がやりましょうとなったので選手会として行動を起こしました」

未知の危機にリーグ戦の開幕が延期された4月、選手会のTwitterでクラウドファンディングサイト「READY FOR」を通してコロナ対策基金に寄付したことを報告した炭谷選手。福岡ソフトバンクホークス選手会会長の中村晃選手、埼玉西武ライオンズ選手会会長の森友哉選手も続けて投稿し、協力を呼びかけた。その結果、自分たちが持つ力を改めて実感したという。

炭谷選手「国内のクラウドファンディング史上最高額となる8億円※が集まったと聞き、僕たち野球選手の力、影響力はすごいんだなと改めて感じました」
この活動は寄付だけにとどまらず、個人的にマスクの寄贈を行う選手が出るなど、社会貢献活動に対する意識を高めることにもつながった。

今後も色んな取り組みをしていきたい

今回評価されたもう一点が、病気と闘う子供とその家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」の支援。運営のすべてが寄付で成り立っているハウスを支援するため、野手は1打点ごとに1万円、投手は1登板ごとに1万円などの寄付を行ったほか、選手が球団所在地や出身地のハウスを訪問して利用者を元気づける活動も行われた。

炭谷選手「マクドナルドさんとは、(学童野球の)マクドナルド・トーナメントなどでもともと繋がりがあったんですが、プロ野球の方でも協力して何かやろうということになりました。もともと埼玉西武ライオンズの選手2名が個人的に行っていたんですが、今回選手会全体でとなった際に、もともと活動していたその2名に加えて、新たに始めた26名を合わせて総勢28名が2020年の成績に応じた寄付を行いました」

社会のため、地域のため、子供たちの未来のために、競技場外でもスポーツマンシップを発揮するアスリートたちに注目するアワードの受賞。炭谷選手は、今後も活動を広めていきたいと語る。

炭谷選手「団体・チームとしての受賞ということで、すごくうれしく思います。プロ野球選手である以上、プレーで注目されたいという気持ちがありますが、こういった別の取り組みで表彰されるということは、すごく意味のあることだと思います。今後もいろいろな取り組みをしていきたいですし、個人で社会貢献活動をしている選手も多いので、そういった活動の数がどんどんどんどん増えていけばいいなと思っています」

現在ではハウスへの支援に約50名※の選手が関与するなど、その活動の輪はまさに広がりを見せ続けている。

みんなが元気になったり、上を向いてくれたらいいなという気持ちが強い

一方で、個人としても西武ライオンズに在籍していた2015年から、難病の子供たちとその家族への支援活動を継続している炭谷選手。コロナ禍のなか施設への訪問が叶わなかった2020年は、かつて訪問した施設などに玩具をプレゼントするなど、継続的に活動を行っている。

「何か社会貢献をしたいという気持ちがあって、当時の球団に相談した際に、いろいろな活動を教えてもらいました。そのなかで、僕は難病の子供たちを支援させてもらっています」

ボランティアや寄付などを行う際、名前を伏せて活動する場合も多いが、炭谷選手は名前が出ることをいとわない。

「個人の考えですが、野球選手って影響力がある職業で、勇気や元気を与えられる存在だと思っています。わざわざ名前を出してくれとは思いませんが、僕が行うことでみんなが元気になったり、上を向いてくれたらいいなという気持ちが強くあります」

これまでに触れ合った子供たちから手紙が届くこともあり、子供たちと接することで、逆に力をもらっているという炭谷選手。

「子供たちからの手紙がロッカーに届くことがあるんですが、今まで体調が悪かったのがよくなりましたと書かれていたりと、本当にうれしくなります。喋ることのできない子供が僕らの訪問に涙を流してくれた時は、僕らのことを分かってくれているんだということを直に感じましたし、野球選手ってすごいんだなと感じました。伝え方が正しいかわかりませんが、病気と必死に闘っている子供たち、頑張って生きようとしている子供たちと接すると、僕も頑張らないといけないなという気持ちに毎回なるんです」

個人として、団体の長として、子供たちや社会のためにスポーツマンシップを発揮し続ける炭谷選手。その行いは、まさにHEROと呼ぶにふさわしいものだと言えるだろう。


※データは2020年12月24日現在

「子どもたちへの恩返しの気持ち」プロゴルファー有村智恵が語る社会貢献活動への思い

プロゴルファーの有村智恵が「HEROs AWARD 2020」(ヒーローズアワード2020)の女性賞を受賞した。「HEROs AWARD」とは、社会のためにスポーツマンシップを発揮した選手やチームを日本財団が表彰し、アスリートの社会貢献活動を促進させるため2017年に創設されたプロジェクト。有村は2014年から始めた「智恵サンタ」(子どもたちから叶えたい夢の手紙を募り、その夢を実現するプロジェクト)、2011年東日本大震災と2016年熊本地震の被災地支援、また、2019年よりインスタグラム「ladygo.golf」のアカウントを立ち上げ、多くの女子選手たちともに女子ゴルフ界の発展のためファン向けコンテンツの提供や女子ゴルフファーが実施するチャリティー活動・寄付の呼びかけなどの情報発信を行ったことが評価され、受賞に至った。

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越智龍二

1970年、愛媛県生まれ。なぜか編集プロダクションへ就職したことで文字を書き始める。情報誌を中心にあらゆるジャンルの文字を書いて25年を超えた。会ったら緊張で喋れない自分が目に浮かぶが、原監督にインタビューするのが夢。