――Cygamesとしては、コロナ禍においても選手や実況者と比べてやることに大きな変わりはないと思いますが、eスポーツ自体を今後も盛り上げていくために、どういった施策を考えられていますでしょうか。

Cygames メディア室マネージャー川上尚樹(以下:川上):『Shadowverse』はすでにローンチされているもので、ここから何か大きく変えていくことはないかと思います。現状をあまり変えず、eスポーツとしてどのように盛り上げて行くかが大事ですね。コロナ禍でオンライン視聴の在り方も変わったのかなと感じていまして、公式大会を配信すれば観てくれるという時代ではなくなったのかなと思います。先ほどV-RAGEの話も出てきましたが、大会の配信動画を観るだけでなく、プラスαの要素も入れ込み、視聴コンテンツとして新しい価値を付けることを考えなくてはならないと感じています。

 少し別方向との施策として、昨年の11月くらいに『Shadowverse』を含むCygamesタイトルを使用した配信動画に関してのガイドラインを策定しました。コロナ禍になってCygamesタイトルの動画配信をしたいという問い合わせが激増し、それに応える形でガイドラインを出したわけです。以前は個別の問い合わせに対応することが難しかったのですが、ガイドラインがあることで、安心して動画配信をできるようになったという声をいただいており、プレイヤーがゲームに集中できる環境作りになったと考えています。こういった環境作りもeスポーツ全般を盛り上げるきっかけになってくれるのではないでしょうか。


――オンラインになったことでオフラインの時と収益の方法なども大きく変わったと思います。eスポーツ自体、まだ収益を出せるイベントが少ないですが、それでもオフラインでは観戦チケットなどの収入もありました。オンラインならではのエコシステムの構築などは考えられているのでしょうか。

CyberZ RAGEプロデューサー大友真吾(以下大友):eスポーツ産業は興行がお金を生み出していかないと、それに付随する、参加する選手だったり、制作スタッフであったり、経済圏を生み出せないと思っています。これはコロナ禍以前のオフラインイベントを行っていたときからの課題です。オンラインイベントだと、スポンサーからの協賛金や動画配信による放映権収入が今のところ中心となっています。海外ではこれらが確立しつつあるので、日本でも確立できるようにしていきたいです。それにはコンテンツの価値を高め、これらに新たな収入源を加えていく必要があります。例えばV-RAGEのアバタースキン販売であったり、物販であったり。それらを有効に活かして興行収益を出していくには、コンテンツの価値を高め、投資すべき対象とみられる必要があると考えています。

eスポーツ産業は興行がお金を生み出していかないと、経済圏を生み出せないと語る大友氏

川上:「RAGE Shadowverse Pro League」では、OPENREC.tvでエール(投げ銭システム)をすると、『Shadowverse』のプロチームのロゴが入ったゲーム内アイテムを貰えるようになっています。単純にファンからのエールを待つだけでなく、コンテンツを提供する側がプラスαの何かを作り、ファンにアピールする必要があると思っています。また、リーグや大会の配信では選手のプレイを観て貰いたいので、良いプレイ、壮絶なプレイが発生したときに何か視聴者側もアクションできる要素を組み込んでいきたいですね。

 国内においてeスポーツは基本的に無料で視聴するものだという一般的な考え方があると思いますので、それに対してお金を払っても良いと思ってもらえるようなコンテンツを作るためには新しい視聴価値を生み出せるようなシステム開発も必要だと思います。また、大会や試合では個別の対象にエールを送ることはできていませんので、そういったことも検討が必要かとは思いますが、それ以前に大会自体にお金を払いたいと思えるかどうかという、コンテンツ価値の向上が前段として必要だと思っています。


――平岩さんがeスポーツキャスターになった当時と現在ではかなりeスポーツにおける環境が変わってきたと思いますが、その点はいかがですか。当時と比べeスポーツの認知度もあがり、なりたい職業ランキングにeスポーツ選手が入る今、eスポーツキャスターにも注目されていると思いますが、eスポーツキャスターという立ち位置についてもお答えください。オデッセイに入社できる基準なども(笑)。

オデッセイ 平岩康佑アナウンサー(以下平岩):私がテレビ局の局アナを辞めた当時(2018年)は、ネットニュースにおいてもeスポーツ関連の記事はまったくありませんでした。今は追いきれないほどeスポーツ関連のニュースは溢れています。eスポーツの人気の指標のひとつとなる配信動画の視聴者数もその当時と比べると格段に違います。当時は1万人超えれば凄い!って言われていましたが、今や10万人を超える大会も増えています。これって結構な数なんです。

 先日配信された女子プロゴルフの配信動画があるんですが、渋野日向子選手が優勝する可能性がある大会で、多くの日本人が注目していて、168万人の視聴者数がありました。eスポーツの配信は、その超人気スポーツの注目大会の視聴者数の1/10くらいあるわけです。それだけ多くの人が観てくれるようになっています。ただ、視聴者数は伸びていますが、先の女子プロゴルフ配信の1/10の金額がeスポーツイベントでマネタイズされているかというとそうではないわけです。なので、数字に見合ったエコシステムを構築することがeスポーツ興行の成立の鍵となると思います。海外ではそれができつつありますし、日本でも視聴者の中心が若者ということもあり、広告代理店やスポンサーは注目していますので、近い将来、マネタイズはできていくと思います。

 あと、eスポーツキャスターとオデッセイの入り方ですよね(笑)。局アナを辞めて会社を興した時は、当然私ひとりの会社でしたが、今は5人の会社となりました。今でも弊社への入社の問い合わせが週に5件くらいあります。そういった問い合わせには、「実況のサンプルをください」と言っています。出身や立場などはまったくみておらず、実況のクオリティのみを見ています。私や柴田は局アナ出身ですが、大和周平はゲームコミュニティ出身です。アナウンサー出身とか、性別とか、そういったものには一切、こだわっていませんね。大和は実況のうまさがずば抜けていました。

 弊社の人間ではないですが、『Shadowverse』の実況をしている友田一貴さんも実況がうまいですね。独立して『Shadowverse』の実況を始めた頃、彼にアドバイスを求められたことがあったので、いくつかアドバイスをしたんですけど、そこからの伸びが凄まじかったですね。今となってはアドバイスしなければよかったと思います(笑)。最初のうちは、偉そうに教えているようなところもありましたが、彼からは学ぶことも多いですね。実況の表現であったり、ゲームに対する姿勢であったり。

 オンラインとオフラインの違いによって、エコシステムが変わったというのは実況に関してはないですが、独立した当初と比べると、破格に環境が変わったと言えます。

オデッセイの入社基準で、アナウンサー出身や性別といったものには一切こだわっていないと答えた平岩氏

大友:コロナ禍になって、動画配信に関してはOPENREC.tvだけでなく、動画配信プラットフォームが全体的に伸びていると感じています。昨年は多くのタレントや芸能人が動画配信に参入してきていたり、うまく取り込めてきているという感じはします。PPV(ペイ・パー・ビュー)のライブも多くの人に観られています。これまでは、動画配信は無料のものと言うのが常識でしたが、有名アーティストのオンラインライブをきっかけにPPVによる有料配信も特別な感じではなくなると思います。OPENREC.tvでは今後ゲーム配信以外のコンテンツも増やし、新しい仕掛けをしていく予定です。


――動画配信サービスは昨今、新興プラットフォームが乱立し、競争が激化していますが、その点に関してはいかがでしょうか。

大友:OPENREC.tvは、低遅延、高画質、豊富なマネタイズの手段を用意しており、配信者はより収益を得やすいように、視聴者はストレスなく視聴できるよう、環境を整えています。ゲーム配信に関してはゲームをリリースしているパブリッシャーやデベロッパーと連携し、許諾関係をクリアにしています。なので、安心して配信できる健全な環境も構築しています。


――2021年もオンラインでのイベントが中心となりそうですが、コロナ禍、コロナ明けのeスポーツイベントでやりたいことはありますか。せっかくさまざまな分野の方がいますので、他分野に希望することや要望があれば、それもお願いします。

川上:そうですね。『Shadowverse』ではいろいろなコミュニティの大会が開かれるようになりましたが、実際に参加されているふぇぐ選手としてはこういったコミュニティ主催の大会関連で要望などありますか?

NTT-WEST リバレント ふぇぐ選手(以下ふぇぐ):『Shadowverse』のゲーム内でイベントを開催したときの参加者数の上限を増やして欲しいですね。現在は128人なので、もっと参加できるようにして欲しいです。あと、大会が進行してしまうと、新たに参加者が入れなくなってしまうので、途中参加ができるようにしてほしいです。大会開始時は人数が多くても、負けていくとどんどん抜けていって、最後の方だとマッチングしにくくなったりしますので。あとはユーザー大会のトーナメントができればいいなぁ。ゲーム内で完結して貰えると、他のトーナメントサービスとか使わなくて済むので、参加する側も気楽で、ネットリテラシーがあまり高くなくても参加しやすくなるかなと思います。

川上:プロリーグに対しての要望はありますか?

ふぇぐ:先ほども言いましたが、家だと集中するのが大変なんです。オフラインの方が緊張感があって好きなので、オフラインで是非やって欲しいです。オンラインになったことで良かったのは、作戦会議が観やすくなりました。もし、オフラインに戻ったとしても、この作戦会議はオンラインのときと同じように配信して欲しいです。

平岩:要望というか、夢というか、まあ、コロナ禍とは関係無く、以前から言っていることですが、eスポーツ専用のスタジアムやアリーナを作って欲しいですね。ユーザー体験としてあのアリーナは良いですね。ここに行けばeスポーツが観られるよとわかりやすいeスポーツの拠点が欲しい。結構、聞かれるんですよね。eスポーツってどこに行けば観られるんですかって。チケットとかもどこで買えば良いかわからないですし。ネットで調べてもタイトル毎に縦割りになっていて、音楽ライブや演劇のように総括してイベントのチケットを扱っているところもないんです。eスポーツ施設は現在もいくつかできていますが、韓国にあるLoL Parkのようなまさにeスポーツの殿堂的な施設が欲しいです。


――逆にふぇぐ選手への要望とかありますか。

ふぇぐ:お叱りでも何でも。

全員:(笑)。

平岩:これは要望というより意見的なものなんですけど、eスポーツの試合を観戦する人って、多くがそのゲームのタイトルを遊んでいるんですよね。その割合はスポーツではありえないレベルです。確かプロ野球でもスタジアムに来場している人で野球をしている人は6%くらいしかいないと聞いています。eスポーツはリテラシーの高い観客が多く居ることで、そのレベルでしかわからないプレイの凄さを実感できると思うんですよね。ふぇぐ選手の世界大会のプレイとか。『Shadowverse』をやっていれば、何が凄いのかがわかります。そういう他にない利点を活かしていきたいですね。


――ウメハラ選手の背水の逆転劇も、必殺技はガードしても体力削られてしまうというのと、ブロッキングはタイミングが難しいけどその削りも回避できるというのを知ったうえでの盛り上がりでしたね。

平岩:会場に居る人は当然、そのことをわかっていて、それがあの盛り上がりに繋がるんですよね。その状態って他のスポーツではなかなかないことなんですよね。もちろん、そういったことがわからない初心者を置いていかない、取り込んで行くようなことは至上命題としてあるんですけど。

大友:今年もしばらくはオフラインでのイベント開催が難しい状態が続くと思います。それだけに、オフラインができるようになったら、それまでの鬱憤を晴らすような凄いイベントをやりたいです。これまで年々eスポーツがイベントとして大きく成長してきましたが、もう一振り大きなことに挑戦してみたいと思っています。

平岩:あと、個人的な目標としては、実況のクオリティを高めていきたいですね。実況は、その場に居られない人に、その場に居るように感じてもらうもの。さらに実況自体が聞いていて面白いと思って貰えるようにしていきたいと考えています。

ふぇぐ:ずっと言い続けていることですが、僕は『Shadowverse』に人生を救われました。なので、その恩返しをしていきたい気持ちは変わらないですね。それがプロとしての活動なのか、YouTubeで配信することなのか、それは考えていきたいです。

川上:『Shadowverse』は今年で5周年を迎えます。いわゆる節目の年です。『Shadowverse』やeスポーツに新しい価値を持たせるために、そしてプレイヤーの皆様により『Shadowverse』を楽しんでもらえように、これまで以上に頑張っていきたいと思っています。あとは、『Shadowverse』をプレイしているけど、まだ大会に参加したことがない人は大勢いますので、そういった人たちが参加したくなるような魅力的な大会を作っていきたいと考えています。

eスポーツを本気で盛り上げていこうという熱を感じたインタビューでした

ゲームメーカー、大会運営、選手、キャスター。それぞれの目線で語る2020年のeスポーツの振り返りと2021年の展望(前編)

2020年に起こったコロナ禍は、eスポーツシーンにも多大なる影響をもたらした。そして2021年もコロナ禍が収束する気配はみえていない。そこで、eスポーツタイトルをリリースするゲームメーカー、eスポーツ大会を開催する運営会社、eスポーツに参加するeスポーツ選手、eスポーツの素晴らしさを伝えるeスポーツキャスターの4人に、2020年のeスポーツの振り返りと2021年のeスポーツの展望について語ってもらった。

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岡安 学

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