「取り組む姿勢が明らかに変わった」

―強く影響を受けた人はいますか。
野中:その時その時に、ターニングポイントになる人はいましたね。各年代で出会った人に、上手に導いてもらいました。

―人生の中で一番困難だったことを教えてください。
野中:今が一番辛いですね。なかなか成績が思うように伴ってこないことがしんどいです。デビューした当初は、若さによる勢いがあって、「なんとかなる」と考えてやっていて。成績が上向きになってきた時に、昨年くらいからうまくいかない状態が続いてしまっています。人生の中で考えると今が一番困難な時期ですね。今後のジョッキー人生を占ううえでも、この1,2年は重要です。

―この1,2年にかける思いは大きいですか。
野中:そうですね。毎週、自分ができることを100%やって、結果を出すしかないと思っています。勝負の世界で、求められるのは結果なので、そこを求めてやっていきたいです。

―人生の中で転換期はありましたか。
野中:2年前に一人で7ヶ月ほどアイルランドに行ったことが転換期でした。自分で行くと決めて、単身乗り込んでいったので、今後の人生のためにも良い時間になったと思っています。

―なぜアイルランドに行こうと思ったのですか。
野中:その前年に、フランスに若手の騎手を招待してレースをする機会があり、日本、オーストラリア、イギリス、フランス、アイルランド、南アフリカなど世界各国から若手騎手が集まってきていました。僕は初の海外だったのですが、その時に、レースだけではなく調教にも騎乗して、「同じ競馬をやっているのに、調教のスタイルや環境がこんなに違うのか」と衝撃を受けて。そこで、「1週間だけ行ってこんなに衝撃を受けるなら、もっと長く行きたい」と思い、帰って来てからすぐに師匠に相談しました。その師匠もジョッキーで、海外での騎乗経験もあったので、「勉強になるから行ってこい」と快く送り出してくれて、7ヶ月アイルランドに行きました。

―どのような点が日本と海外で違っていましたか。
野中:向こうは家に馬がいて、乗馬という文化が昔から根付いている国が多く、普通の子でも馬に乗れる子が多いです。例えば、旦那さんが仕事に行っている間に、奥さんがパートで競走馬の調教に騎乗していたり、調教場に行く時に、一般道を馬で横断していたり、中学生くらいの子が遊びに来てフラっと馬に乗っていたりしました。日本だと、まず馬に乗ること自体のハードルが高いのに、海外だとそのハードルが全然感じられなかったので驚きましたね。

―どういう転換期になりましたか。
野中:日本の競馬は世界で一番売り上げもありますし、競馬場も大きいですし、馬場も綺麗です。世界一と言ってもいいくらいの施設で競馬をさせてもらっていて、その中でデビューしているので、フランスやアイルランドに行った時に初めて、「自分はとても良い環境にいさせてもらっているんだ」ということがわかりました。たまに海外の一流ジョッキーが日本に乗りに来ることがありますが、日本は短期の免許を取ることに厳しく条件を設けているので、そういう人たちは自国で勝利数が1位か2位くらいでないと来られません。一流ジョッキーの方がそこまでして日本に来る理由が、海外に行く前にはわからなかったのですが、海外に行くことによって、「なんて幸せな環境で競馬をしていたのか」と実感することができました。

―海外に行った後に変わったことはありますか。
野中:取り組む姿勢は明らかに変わりました。それまではたくさんレースにも乗せてもらっていて、甘えている部分がありましたね。僕はアイルランドに7ヶ月いて25レースくらい乗せてもらいましたが、他の子を見ていると乗るチャンスすらもらえていない状況だったので、毎週競馬に乗せてもらえることがどれだけありがたいことかを痛感しました。

「もっと競馬界を盛り上げたい」今後の目標について

―アスリートが発信をしていく意義はどうお考えですか。
野中:自己中心的な考えですが、「他のスポーツは見なくていいから競馬だけ見てくれ」と思っています。もちろん他のスポーツも面白いですし、僕も見ますけど、競馬はもっと面白いし、たくさん魅力があると思っているので、その魅力を伝えるためにもSNSで発信していくのは大切だと考えています。見てくれる人が多くなればなるほど、やっている人たちにとっても励みになりますし、中の人が発信していかないと外の人には伝わっていかないので、魅力を見つけたり、関わっている人たちを応援してくれるきっかけになってほしいですね。

―ジョッキーの方は積極的に発信していますか。
野中:他のスポーツに比べると、そんなに積極的ではないという印象があります。

―野中さんが発信しようという考えになった理由を教えてください。
野中:「競馬をもっと若い世代に見てほしい」と思っています。少しずつジョッキーになりたいと思う子が減ってきて、競馬学校を受験する子も減ってきているので、今後の競馬界を続けていく中で課題なのかなと思っています。
20代、30代、40代の方が競馬を見に来てくださり、その中でお子さんと一緒に見に来てくださる方がいるとして。そこでお子さんが、ジョッキーという職業があることを知って、「ジョッキーになりたい」と思ってくれる子が増えてほしいという願いがあります。
実際、僕も父親と一緒に競馬を見に行って、「ジョッキーになりたい」と思った経緯があるので、そういう子どもたちが増えてくれればもっと競馬界が盛り上がるのではないかと思いますね。

―競馬界のためにという思いなのですね。
野中:ギャンブルという側面もあって、あまり良くないイメージもあるかもしれませんが、楽しい面や、かっこいい面、一つ一つのレースにドラマがあるので、そこの部分も多くの人に見ていただけたらいいなと思っています。

―競技においての目標を教えてください。
野中:次のレースに勝ちたいです。それの積み重ねで大きくなっていくので、毎週土曜日に乗る最初のレースに勝ちたいです。

―競技以外の面での目標を教えてください。
野中:JRAのジョッキーとして、この職業や競馬を広く知ってもらえるような活動がしたいと思っています。そして、現在応援してくださる方々に少しでも恩返しができるようなことをやっていきたいです。

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VictorySportsNews編集部