「お客さんが味方にも敵にも」公営競技独特のファン文化

上を目指そうとするとキリがないのですが、その頂点にたどり着けるように努めています。ですが、やっぱり人間なので常に高いモチベーションを保つことはできません。気持ちが沈んでしまうことや調子を崩してしまうこともあります。そういったときに奮い立たせてくれるのは、ファンからの声援です。競輪には車券を買ってくれるお客さんがいます。お客さんは勝つことを期待して車券を買ってくれているので、そういったお客さんの思いを裏切りたくないと気持ちがモチベーションにつながっています。時には心ない野次で傷つくこともありますが、基本的に期待のこもった声援が力になっています。
野球やサッカーなど他のスポーツではなかなかお客さんの懐を痛めることはありませんが、競輪の場合は負けてしまうとお客さんにもダメージを与えることになり共倒れということになりかねません。そういった意味でもプレッシャーを感じるというか、責任感がわいてきます。
余談になりますが、昨日応援してくれていたお客さんが、明日も応援してくれるとはかぎらないのが競輪の特徴かもしれませんね。お客さんがその日に買った車券によって、味方にもなるし敵にもなる。そういった特徴も競輪のおもしろいところだと思います。

お金の使い方にも「プロ意識」

お客さんからの声援ほどではありませんが、もちろん賞金もモチベーションにつながります。レースの賞金で食べていっているプロなので、それがモチベーションになるのは当たり前のことです。
プロになって初めての賞金は20万円くらいでしたが、今ではおかげさまで多額の賞金を得られるようになりました。だからといって、無駄に贅沢な生活を送るようにはなっていません。あえて言えば、車が好きなので車にはお金をかけるようになりました。プロになりたての頃は、生活費以外に好きなものをお腹いっぱいに食べられるくらいでした。今は趣味にお金を使ったりと余裕はありますが、プロ選手としての生活があるので使い方に大きな変化はないような気がします。ただ、プロとして後輩たちや子どもたちからあこがれてもらえるような存在でありたいと考えており、勝てばいい車に乗れるんだ、いい生活を送れるんだと思ってもらえるように気を配っています。ですので、お金の使い方にもプロ意識を持つようにしています。

反骨心をモチベーションに

プロのアスリートとして活躍して多額の賞金を得られるようになったことで、モテるようになると思っていました。ですが、そういった期待は大きく裏切られることになります。個人的には競輪選手もプロ野球選手などが属するプロアスリートのカテゴリーに入っているのですが、一般の人たちの認知度は全くありませんでした。競輪について説明してもポカンとされることが多く、見向きもされない状態が多々あります。ひょっとすると、野球部に所属していた高校時代のほうがモテていたかもしれません。野球など人気スポーツのイメージの良さと偉大さを改めて感じる出来事でした。
競輪もひと昔前まではバレンタインデーに多数のチョコレートが届くなど、女性人気を得られた時代もあったようです。ですが、今ではそういう話を聞くことも少なくなってしまいました。競輪という競技があることを知っている人も多いのですが、出てくる選手の名前はいまだに中野浩一さんだったりします。そんな話を聞くと、もっともっと頑張らなければならないと思いますね。
このような出来事のひとつひとつも反骨精神を駆り立てられ、モチベーションを高めることにつながっています。もっと活躍して競輪界を盛り上げて、競輪の地位向上を目指していきたいですね。

(プロフィール)
郡司浩平(ぐんじ・こうへい)
1990年9月4日生まれ(31歳)、神奈川県出身。父は元競輪選手の郡司盛男。日本競輪学校(現:日本競輪選手養成所)を経て、2011年1月に99期生として川崎競輪場でデビューを果たす。ここまで獲得したG1タイトルは2020年11月小倉競輪祭、2021年2月全日本選抜競輪。最上位のランクであるS級S班として今年2年目を迎えている。株式会社チャリ・ロトとは2021年3月にスポンサー契約を結ぶ。

(協力)チャリロト パーフェクタナビ編集部
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VictorySportsNews編集部