2018年にDeNAが東芝から運営権を承継し、SNSやデジタルマーケティングの強化が進んだ。YouTubeチャンネルは2016年9月に開設。登録者数は注力前の2019年8月時点で約4000人だったが、約2年半で25倍と飛躍的に伸びた。2021年3月にはUUUM(ウーム)とパートナーシップ契約を締結。クリエーター、インフルエンサーのマネジメントを中心にゲーム、メディアなど幅広く事業展開する東証マザーズ上場企業とタッグを組み、動画の制作体制の充実を図った。

 再生回数10万回を超える動画を多数投稿。直近1年間のデータでは、登録者の13~24歳が全体の4割を占めるなど若年層からの注目が高いのも特徴だ。プロバスケ選手がどれくらい遠くからシュートを決められるかを検証する動画や、選手によるNBAや漫画のスーパープレー再現、選手が下部組織チームに所属する中学生にドッキリを仕掛ける企画、はじめしゃちょーら人気YouTuberとの共演など内容は多岐にわたる。

 20~21年シーズン以降はスポンサーとのコラボレーション動画の投稿も積極的に実施。リクルートエージェントの協賛で1月に投稿した映像が1カ月で57万回再生されるなど成果も出ている。既にYouTube上のスポンサー企業コラボで数千万円規模の収益を上げており、今後も右肩上がりでの拡大は確実。事業戦略マーケティング部の藤掛直人部長は「プロバスケ選手の強みを生かした上で、バスケに詳しくない方でも楽しめるもの、興味を引くものになるように意識しています」と説明する。

 動画撮影にはチームの協力が欠かせない。出演選手への謝礼は基本的になく、出演実績などがクラブとの契約の査定に反映されることもない。それでも選手側の意識は高く、企画を提案されることも珍しくない。特にドッキリを仕掛けることに積極的な選手が多いという。撮影は午前練習の日の午後などを利用し、1本の動画にかける時間は最大でも1時間半程度。チームと連係して、本業のプレーに支障が出ないことを徹底している。

 注力開始当初は撮影班、出演選手ともに戸惑うこともあったが、2年半が経過した現在は手慣れたもの。選手は〝撮れ高〟を考えて撮影に臨み、要所で笑いのポイントをつくることも欠かさない。カメラマンはYouTube撮影以外でもアウェーでの試合などを含めてチームにも同行。選手との信頼関係は強く、日常のコミュニケーションの中で、企画のアイデアが出ることも多い。

 TikTokとは2020年10月にパートナーシップ契約を締結。バスケ観戦歴の少ないライト層をターゲットにして、プレー映像の発信に重点を置く。臨場感ある動画を撮影するため、ソニーとの協業で試合会場では通常3台しか設置されないカメラを30台以上も設置。最先端技術を駆使してカメラ側が動いているような映像を実現させた。選手がダンクを連発する動画では細かい説明を省き、身長と出身国の国旗のみを記載。海外からも大きな反響を得た。初めて試合会場に来た10代の観戦者のうち約40%が「TikTokを見てチケットを購入した」と回答しており、若い世代を開拓する強力なコンテンツに成長している。
2月からはオンラインカードゲームPICKFIVEも導入した。活躍する選手を事前予想するオンラインゲームで、実際の試合での選手の活躍によりスコアが加算。参加者同士による競争の結果を受けて、サイングッズなどの景品と交換できるポイントが溜まる。

 リーグ全体や複数クラブから選手を選択する同様のゲームは多く存在するが、単一チーム限定で運用するのは初。1試合に特化することでユーザーの応援への熱量が増し、導入から1カ月で約4000人の登録者の半数以上から試合観戦の満足度が向上したと回答した。

 藤掛部長は「川崎ブレイブサンダースのデジタル施策は、ライトな人でも楽しめる面白いコンテンツ制作で地盤を固めつつ、アライアンスなど戦略的な動きでも業界をリードしてきたと自負しています。今後は、継続的に新規ファンを広げつつ、PICKFIVEを通して新しい観戦体験を創出し、熱量高く”愛され続けるチーム”を目指したい。集客効果だけでなく多様な売上効果を生み出すことで、周囲にポジティブな影響をもたらし、スポーツ界全体の活性化にも貢献していきたい」と力を込める。

 デジタル技術の日進月歩により今後もサービスの多様化が予想される中、ファンの新規開拓と満足度向上、収益アップを追求する挑戦は続く。

木本新也

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