一方、男子ツアーは1月の「SMBCシンガポールオープン」が賞金ランキング加算対象外トーナメントになり、3月の国内開幕戦「東建ホームメイトカップ」から本格的なシーズンが始まったが、7月までに開催されたのは11試合。そして8月以降に開催される15試合を加えても年間26試合。女子ツアーに大きく水を開けられている。

 従来は男子ツアーと女子ツアーの地上波の放送局が異なり、時間をずらして録画中継を行うことで男女ツアーとも視聴できるような配慮がなされていた。ところが女子ツアーがGOLFTV(ゴルフティービー)とDAZN(ダゾーン)でライブ配信されるようになったので、多くのゴルフファンは女子ツアーのライブ配信を楽しんでいる。

 男子ツアーもユーチューブやDAZN、ABEMA(アベマ)でライブ配信を行った試合もあったが、試合数が少ない上に優勝争いしている選手の知名度が低いため見応えを感じない。好意的な表現をすれば男子ツアーも若手選手が台頭してきたのだが、その選手たちの名前やプレースタイルがファンにまだ浸透していないので、今イチ盛り上がらない。

 そしてもう一つ、女子ツアーは見応えがあるけど男子ツアーは見応えがない理由がある。女子は日本で勝った選手が海外メジャーでも通用するのに対して、男子は日本で勝っても海外メジャーではまったく通用しないのである。

 今年の海外メジャーを振り返ってみると、男子ゴルフ海外メジャー第1戦の「マスターズ」に出場した3人の日本人選手のうち、決勝ラウンドに進出したのは松山英樹だけ。金谷拓実は通算5オーバー53位タイ、アマチュアの中島啓太は通算7オーバー64位タイで予選落ちだった。

 続くメジャー第2戦の「全米プロゴルフ選手権」には6人の日本人選手が出場したが、予選を通過したのは松山と星野陸也の2人。香妻陣一朗は通算6オーバー88位タイ、稲森佑貴は通算8オーバー104位タイ、木下稜介は通算11オーバー122位タイ、金谷は通算13オーバー134位タイで予選落ちだった。

 この試合には昨年の日本ツアーの賞金王であるチャン・キムも出場していたが、通算5オーバー80位タイで予選落ちを喫している。そもそも2020-2021シーズンの賞金王がチャン・キムだったこともあまり知られていない。

 メジャー第3戦の「全米オープン」には7人の日本人選手が出場。この試合は松山が最終日に65をマークし、通算3アンダー4位に入って孤軍奮闘したが、それ以外の6人は予選落ち。小平智が通算5オーバー82位タイ、星野と中島が通算8オーバー121位タイ、出水田大二郎が通算10オーバー131位タイ、杉山知靖が通算12オーバー141位タイ、香妻が通算13オーバー144位タイだった(チャン・キムは通算5オーバー82位タイで予選落ち)。

 メジャー第4戦の「全英オープン」にも7人の日本人選手が出場したが、決勝ラウンドに進出したのは桂川有人と松山の2人。それ以外の5人は予選落ちだった。金谷が通算1オーバー84位タイ、中島が通算3オーバー107位タイ、星野が通算4オーバー117位タイ、比嘉一貴が通算5オーバー125位タイ、今平周吾が通算8オーバー146位タイ(チャン・キムは通算2オーバー98位タイで予選落ち)。

 松山以外で予選を通過したのは「全米プロゴルフ選手権」の星野と「全英オープン」の桂川の2人のみ。それ以外の選手は惨敗である。その程度の選手しか輩出できない男子ツアーに興味を持つのは難しい。日本ツアーで通算20アンダーを超えるビッグスコアで勝った選手が海外メジャーでアンダーパーを出せないのだから、コースセッティングに致命的な欠陥があると言わざるを得ない。

日本で勝った選手が海外メジャーでも活躍するケースが目立つ女子ツアー

 一方、女子ツアーは日本で勝った選手が海外メジャーでも活躍するケースが目立っている。2019年8月に渋野日向子が「AIG全英女子オープン」で劇的な勝利を挙げ、2021年6月には笹生優花が「全米女子オープン」にスポット参戦で勝利した。

 2022年の海外メジャー第1戦の「シェブロン選手権」は5人の日本人選手が出場し、4人が決勝ラウンドに進出。渋野が通算10アンダー4位タイに食い込み、笹生と畑岡奈紗が通算5アンダー17位タイ、古江彩佳が通算1アンダー44位タイでフィニッシュした。

 メジャー第2戦の「全米女子オープン」はなんと15人の日本人選手が出場。予選通過は5人だったが、小祝さくらが通算3オーバー20位タイ、畑岡が通算5オーバー28位タイ、西郷真央が通算8オーバー44位タイ、アマチュアの馬場咲希が通算9オーバー48位タイ、高木優奈が通算19オーバー69位と国内からのスポット参戦組も結果を出している。

 メジャー第3戦の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」は5人の日本人選手が出場し、3人が決勝ラウンドに進出。畑岡が通算1アンダー5位タイ、笹生と西郷が通算4オーバー30位タイだった。

 メジャー第4戦の「アムンディ エビアン選手権」は7人の日本人選手が出場し、4人が決勝ラウンドに進出。西郷が通算15アンダー3位タイに入り、西村優菜と畑岡が通算11アンダー15位タイ、古江が通算10アンダー19位タイだった。

 日本ツアーで今季5勝を挙げている西郷や、今季2勝の西村、今季1勝の小祝が海外メジャーでも即戦力として通用する女子ツアーと、今季2勝の今平、稲森、比嘉が海外メジャーでまったく通用しない男子ツアーの違いはいったい何なのか。そのことを真剣に議論しないと、男子ツアーは今後、存続自体が危うくなると思う。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。