西武といえば、圧倒的な強力打線のイメージが強かった。18年、19年と連覇した時は、3点を取られても、簡単に4点を取り返すチームだった。それが今年は大きく変わった。4年連続でリーグ最下位だった防御率から一転し、「投手王国」が完成しつつある。

 特に大きな存在になっているのが救援陣になる。「勝利の方程式」が確立した。7回は水上由伸投手(24)、8回は平良海馬投手(22)、9回は増田達至投手(34)。水上、平良、増田とも安定感が抜群で、防御率も1点台の数字を残している。少ない点差でも、7回までにリードすれば、勝利への逆算が立つ。その勝ちパターンが確立された。増田は7月13日に新型コロナウイルス感染で抹消されたが、8月5日に復帰できた。ペナントを制する上で、重要な夏に「勝ちパターン」の3人が再び揃うことになる。

 それだけでなく、他のリリーフ投手にも層の厚みが出てきた。象徴的なのは本田圭佑投手(29)だ。開幕は2軍スタートだったが、新型コロナウイルスに関する「特例2022」の代替選手として、4月26日に1軍に昇格。そこから好投を重ね、防御率も1点台。勝っている時以外にも、様々な場面で仕事を果たしてきた。2軍では3月29日のヤクルト戦で154球完投するなど、これまで先発タイプだと見られていたが、昇格後は、まさかの中継ぎで才能が開花。オールスターゲームにも代替ながら初出場を果たし、2試合とも投げるタフ腕ぶりも示した。

 本田以外にも2年目のサウスポー佐々木健投手(26)、3年目の宮川哲投手(26)、森脇亮介投手(30)、新助っ人のボー・タカハシ投手(25)らも結果を残す。誰が投げても、抑えられる状況で、ブルペンの雰囲気もいいようだ。

 先発陣も大崩れをしないで耐えている。7月30日のソフトバンク戦ではアンダースローの與座海人投手(26)が95試合目でのチーム初完投だった。これは前年西武の「93」を更新するプロ野球最遅の記録でもあった。チームでの完投こそ少ないが、しっかり試合を作ることができている。先発投手が崩れることはほぼなかった。何とか5回、6回まで投げきって、鉄壁のリリーフで抑える。そのパターンで何度も白星を重ねてきた。エースである高橋光成投手(25)を筆頭に、松本航投手(25)、ディートリック・エンス投手(31)、平井克典投手(30)らも安定感がある。

 開幕直前に右内転筋痛、4月に左足首と2度の故障で出遅れてしまった今井達也投手(24)も7月に復帰を果たした。四死球は多いタイプであるが、完投能力は極めて高い。これまで救援陣は抜群の安定感を誇ってきていたが、多くの登板を重ね続け、疲労の蓄積が見え始めているも事実。今井はたくさんのイニングを投げられるだけに、6連戦が続く8月に復帰は大きな後押しにもなる。

 低調だった打線も上向きの気配を見せてきた。前半戦は山川穂高内野手(30)に頼り切っていた部分もあったが、徐々に他の役者も調子を上げている。春先は離脱もあった森友哉捕手(27)が3日のオリックス戦では2本塁打。また開幕から不振だった中村剛也内野手(38)も4日のオリックス戦で5号先制2ランと6号サヨナラソロと今季初の「おかわり」弾を放った。外崎修汰内野手(29)も1番に入って以降、出塁率も上がり、活躍が光っている。

 セリーグはヤクルトが大きく抜け出し、独走のムードが漂っている。しかし、パリーグは混戦が続く。西武、楽天、ソフトバンク、オリックス、ロッテと、どこが優勝してもおかしくない。逆に言えば、どこも決め手に欠く状況。18年、19年と連覇した時は夏に貯金を重ねた。再び夏に強い西武で3年ぶりのリーグ制覇に手が届くか-そして92−93年と白熱した日本シリーズを繰り広げた西武―ヤクルトの展開はあるのか。


VictorySportsNews編集部