YBCルヴァン・カップも優勝賞金は天皇杯と同じく1億5000万円で、10月22日にサンフレッチェ広島とセレッソ大阪(J1)による決勝が控えている。J1の優勝争いは横浜F・マリノスと川崎フロンターレによる大詰めの戦いを迎えているが、こちらの優勝賞金は3億円。2位は1億2000万円、3位は6000万円となっている。

 世界中が熱狂するワールドカップ(W杯)や、最高峰の欧州チャンピオンズリーグ(CL)は文字通り桁違いの賞金が優勝チームに与えられる。純粋な賞金に加えて、例えばJリーグにも配分金という制度があるように、一概には賞金だけで比較しづらい面はあるが、大まかな目安としてそれぞれを比べてみた――。

W杯カタール大会の賞金

 欧州や南米など各大陸の厳しい予選を勝ち抜いたチームと開催国カタールによる計32チームで争う今年のW杯は、賞金だけで合計4億4000万ドル(約655億6000千万円、1ドルは149円=換算)に上る。優勝賞金は4200万ドル(約62億5800万円)で、J1優勝のなんと約21倍。2018年ロシア大会は総額4億ドル(約596億円)で、優勝したフランスの賞金は3800万ドル(約56億6200万円)だった。総額、優勝賞金ともに前回よりアップしている。

 カタール大会は準優勝でも3000万ドル(約44億7000万円)。森保一監督が掲げる初のベスト8入りを達成すれば、日本は1700万ドル(約25億3300万円)を手にすることができる。たとえ1次リーグで敗退したとしても、支度金と合わせて1050万ドル(約15億6450万円)は確保されている。(賞金は各国のサッカー協会に支払われる。このほか、選手を送り出す各所属クラブへの補償金なども別途定められている)

【W杯カタール大会の賞金 ~fifa.comより~】
優  勝 :4200万ドル
準 優 勝 :3000万ドル
3  位 :2700万ドル
4  位 :2500万ドル
ベスト8 :1700万ドル(1チームあたり)
ベスト16 :1300万ドル(同)
1次リーグ:900万ドル(同)
(参加チームにはほかに支度金として150万ドルも支給)

欧州CLの賞金

 ビッグクラブが覇権を競う欧州CLも、一定の金額が保証された上で勝ち上がっていくにつれて上昇していく仕組みはW杯と同じだ。主催する欧州サッカー連盟の公式サイトによると、1次リーグ(32チーム)に出場すると1564万ユーロ(約22億6780万円、1ユーロ=145円で換算)が支給される。さらに1次リーグの6試合で1勝すれば280万ユーロ(約4億600万円)、1分けで93万ユーロ(約1億3485万円)が加算。つまり、欧州CL1次リーグにおける1勝は、J1の優勝賞金を上回る金額を生み、欧州CLの一つの引き分けは日本の国内カップ戦の優勝賞金とほぼ同じ金額に匹敵することになる。ピッチの中のレベルの高さだけにとどまらず、賞金においても欧州CLのスケールはとてつもないものがある。

【欧州CLの決勝トーナメント以降の賞金 ~uefa.comより~】
優   勝:2000万ユーロ
準 優 勝:1550万ユーロ
準 決 勝:1250万ユーロ(1クラブあたり)
ベスト8 :1060万ユーロ(同)
ベスト16 :960万ユーロ(同)

 決勝トーナメント以降は上記の金額が加算される。1次リーグの勝利数によっては、優勝すれば最大で5000万ユーロ(約72億5000万円)を超える金額を手にできることになる。(これ以外にも過去10年間の成績に応じた配分金や、放送権料の配分金がある)。

欧州主要リーグとの比較

 最後に、欧州主要リーグとの比較をしてみたい。これに際しては、放送権収入をもとにした各クラブへ配分金が分かりやすいので、そちらを採用する。Jリーグは2017年に締結したDAZN(ダゾーン)との大型契約(10年間で約2100億円。その後、28年まで2年延長して契約を結び直して、トータル約2239億円となった)により、順位に応じた理念強化配分金(用途が一定程度限られている)という制度を導入した。残念ながら、新型コロナウイルス禍によって現在は凍結中となっているが、例えば優勝クラブは理念強化配分金として15億5000万円を3年にわたって支給される仕組み。賞金やJ1全クラブへの一律の配分金3億5000万円と合算するとトータルで22億円を受け取れる制度だった。

 一方、現在多くの日本人選手が多く活躍するドイツのブンデスリーガを例に取ってみると、2021/22年シーズンの放送権収入の配分金(出典は同国の専門誌キッカー)は、リーグ王者のバイエルン・ミュンヘンで約9000万ユーロ(約130億5000万円)。最下位で2部に降格したフュルトでも約2850万ユーロ(約41億3250万円)に上った。J1の最下位でも受け取れる一律の配分金と見比べると、最下位のフュルトとは10倍以上の格差があり、優勝クラブ同士を見比べても(理念強化配分金が満額支給されても)、バイエルンが手にしている金額とは大きな差がある。

 Jリーグ開幕から30年目を迎えた「日本サッカー」は国内でも有数のプロスポーツとなり、放送権の価値向上によってクラブにもたらされる金額も増えるようになった。しかし、世界的なサッカーのマーケット規模からすると、まだまだトップとの差は大きいというのが現実なのである。


土屋健太郎

共同通信社 2002年入社。’15年から約6年半、ベルリン支局で欧州のスポーツを取材