外国籍選手への支払いはドル建て月払いが大半

 7月のBリーグの理事会後会見で島田慎二チェアマンが円安について問われ、こう言及していた。

「円安による外国籍選手の年俸の部分が、各クラブの経営をかなり厳しいものにしているということは聞いている。勝つために良い外国籍選手を獲得し、かつ円安。為替の影響で各クラブの収益を圧迫しているのは間違いない」

 宇都宮ブレックスの藤本光正社長は、9月9日に栃木県庁で行った決算報告会見で、円安について問われ苦しいと答えた。

「非常に大きな影響を受けているというところが正直なところ。外国人選手はドル建てでの契約になっている。こちらからドル建てで送金する時に、そこでの換算レートとなる。極端な話、(1ドル)100円から140円となると40円あがっちゃうので、非常に大きなインパクトになる。昨シーズンの終盤くらいぐいっとだいぶ上がってきて、落ち着くかなと思いきや、むしろどんどん上がってきた。今期に関しては他の部分で吸収していくしかないかなと思う。チケット売り上げとかスポンサー売り上げでカバーしていくしかないかなと思います」

 他のB1リーグのチーム関係者らにも話を聞いたが、基本的にBリーグに所属する外国人選手(帰化含む)への支払いは、円での支払いではなく米ドルでの支払い、いわゆる「ドル建て」が大半だという。アメリカ出身の選手が多いからではあるが、さらにヨーロッパの選手でもドル建ての支払いが基本だという。また、多くのチームで年俸を分割した月払いをしている。円安が進んでいった上に、さらに短期間で大きく安く動いていることがチーム経営面で対応を難しくしている。

撮影:大塚淳史

 1年前は1ドル115円前後で推移していたが、外国人選手と次のシーズンに向けた契約交渉を進めているであろう今年5、6月頃は130円前後に、そして9月には140円台に突入した。1年も経たない内に35円も安くなっている。例えば年俸50万ドルで契約した選手がいる場合、1ドル115円であれば5750万円であるが、150円となると7500万円になる。B1であると外国人プレーヤー(帰化含む)は各チームに数人在籍している。さらに監督やコーチングスタッフも外国人が務めているチームは少なくない。

 交渉の時点で想定していた金額に比べて、実際の支払い時の金額が大幅に膨れ上がっており、チーム経営を圧迫しているのだ。

 大阪エヴェッサの阿部達也ゼネラルマネージャーは、吹田市であった新体制発表会の際に、円安の影響は外国人選手の交渉で影響が出ていたと話していた。

「(交渉していた)その当時も影響はあったけど、今は140円も超えているのでそこの影響はありました。説明する時には、『ドルだとこれだけど円だとこれだけ変わってしまうので』という交渉はしましたが、どちらにしろ国内外の他のチームからオファーがあると、向こうもビジネスですし、そこはシビアな交渉になったのは事実。(円換算では費用が1、2割上がった?)ドル換算のところは上がりましたね。社長サイドには申し訳ないが、不可抗力の面があった。特にうちの場合は、選手だけでなく監督スタッフもいるので。うちだけでなく、他のチームも同じくこの円安は大変でしょうね」

Google Financeより引用

Jリーグなどへの影響はこれから?

 この急激な大幅円安は、当然、プロ野球やJリーグにも出ているだろう。シーズンが春秋ということで、支払いに対する影響は、Bリーグのチームほど出ていないかもしれないが、来シーズンに向けた交渉で負担が増していくはず。半年前の4月ではあるが、Jリーグの鹿島アントラーズの小泉文明社長に円安について質問すると、

「(影響は)今後出てくるでしょうね。為替の問題は世界中のフットボールプレーヤーの相場観の話もあるので、いくつか変数があるかなと思う。経済状況もかなり国によって違いますし、例えば、ロシアの影響もヨーロッパの方が私たちより明らかに影響を受けている。恐らくヨーロッパのクラブのバジェットに対する考え方もいろいろ出てくるでしょうし、そういう意味で変数が多い。為替もそうですし、戦争の問題であるとか、今後選手を始めヨーロッパの経営状況がどうなってるかによっても、かなりそこは変わってくると思うので、僕らはそこまで読み切れないのは正直ある」

 と答えていた。また、Jリーグで活躍する外国人選手を顧客に持つ代理人は、円安が来季のチーム編成に影響が出るとみている。

「各クラブを見ていると、今季の予算組みはそこまで影響している実感はなかったが、来シーズンの予算組みをするタイミング、まさに今の段階でもこの状況が続いてますし、それぞれのクラブがターゲットにしていた選手の層が変わってくる可能性はあると思います。予算組みは各クラブ違いますが、外国人は外貨で事前に想定しているクラブもあると思うので、今季は無いと思います。ただ、結局出所は今季を鑑みて、来季その外貨のところを見直されることは考えられますね。(どこもドル建て?)もちろんユーロもあります。ただ、『ウチはドル建てしかない!』って言われるクラブもあります」

 急激な円安によって、目下チーム経営に影響を及ぼすほどマイナスになっているところは、今後どういった形で解消していくのか。人件費を削るのか、チケットを値上げするのか、スポンサー企業や金額を増やしていくのか。そして、今期を乗り切ったとしても来期での予算組みをどうするのか。あまりにも読めない為替相場で、各チームの経営陣は頭を抱えているに違いない。


大塚淳史

スポーツ報知、中国・上海移住後、日本人向け無料誌、中国メディア日本語版、繊維業界紙上海支局に勤務し、帰国後、日刊工業新聞を経てフリーに。スポーツ、芸能、経済など取材。