なぜこんな事態に陥ったのか。ひとつに、最近タイトルの返上が相次いだことが挙げられる。フライ級 ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)、スーパーライト級 平岡アンディ(大橋)、フェザー級 阿部麗也(KG大和)、スーパーバンタム級 古橋岳也(川崎新田)と、今年に入ってからだけでも4名のチャンピオンが日本タイトルを返上、当然その階級は空位となった。

 引退の古橋以外はいずれも世界タイトルを本格的に目指す過程での返上である。日本と世界の間にOPBF(東洋太平洋ボクシング連盟)、WBO(世界ボクシング機構)アジアパシフィックの2つの「地域王座」もある現代においては、日本チャンピオンが必ずしも国内で最強のボクサーだと言い難いのも事実だろう。そうであっても、チャンピオン欄がスカスカの日本ランキングは実に寂しいものがある。

続く試合前の不運

 もっともこの惨状も一時的なもの、王座が空けば決定戦で次のチャンピオンが決まり、少なくとも順次空位の階級は埋まっていく—と思われた。ところがこれがスムーズに行っていない。この2月に予定されていた日本王座決定戦2試合がともにキャンセルとなってしまったのだ。

 まず14日の日本スーパーフライ級王座決定戦は、同級1位・川浦龍生(三迫)−同級3位・橋詰将義(角海老宝石)のカードが決まっていたが、橋詰が練習中に腰を痛めたことで出場不可能に。

 川浦は昨年12月に行われるはずだった同級王座決定戦でも、当時の対戦相手のケガで試合が流れたから、何とも不運。スーパーフライ級の王座はいましばらく空位の状態が続くことになった。

 そして16日に予定された日本ミニマム級王座決定戦。元OPBF(東洋太平洋ボクシング連盟)チャンピオンの小浦翼(E&Jカシアス)と新鋭・高田勇仁(ライオンズ)による魅力的な組み合わせだったものの、こちらは小浦が減量に失敗し脱水症状を起こしたため計量を棄権。試合前日になって中止となった。

 ドクターストップの選手に強行出場を強いるわけにもいかないが、頭を抱える関係者も多いだろう。

逆転の発想で増える楽しみ

 次に予定されているのは3月20日の日本バンタム級タイトルマッチ。これはチャンピオンが存在する階級で、堤が2度目の防衛をかけて指名挑戦者の南出仁(セレス)を迎えることになっている。

 4月に入れば以下の試合が行われる(2月16日発表時点)。18日に日本フェザー級王座決定戦。元チャンピオンの佐川遼(三迫)とホープ松本圭佑(大橋)が争う一戦は、ボクシングファンの間でいまから話題になっている注目カード。

 そして26日には、ウェルター級、スーパーライト級、スーパーバンタム級、ライト級の日本タイトルマッチ4試合を一挙に開催するパワフルな興行が行われる。ライト級の王者宇津木秀(ワタナベ)−1位仲里周磨(オキナワ)を除いては決定戦ながら、日本タイトルマッチが一日にこれだけ集まるのは久しぶりである。

 しかしながら、そもそも返上などで王座が空位になるということは、そのぶん決定戦のタイトルマッチが増えるということである。リング上の王者交代がボクシングの恒例であるから、決定戦で新チャンピオンを決めるタイトルマッチがいくらか興をそぐ点は否めない。

 ここは、今後のラインナップにある試合がすべて順当に開催され、出場選手めいめいの奮闘で日本タイトルマッチにふさわしい熱戦となることを願うほかない。


VictorySportsNews編集部