147ポンド(66.68キロ)を上限にするウェルター級は世界的に層が厚いことで知られている。先日もテレンス・クロフォード(アメリカ)とエロール・スペンスJr(アメリカ)の無敗チャンピオン同士による4団体王座統一戦が7月29日に行われると正式発表され、世界中のボクシングファンを興奮させたばかり。特別なヘビー級をのぞいて最も人気のあるクラスの1つである。

 わが国においても戦前から日本タイトルが争われてきた由緒あるオリジナル階級ではあるが、こと世界となると頂は遥か遠い。それはレコードブックからも一目瞭然。ミニマム級からスーパーミドル級まで、過去に日本人選手が出場した世界タイトルマッチはその数900回にも上ろうとしているが、ウェルター級のタイトルマッチは5度行われたのみ。のべ5人の選手しか、世界タイトルマッチ挑戦のリングに上がっていないのである。

 ちなみに2階級重いミドル級では、竹原慎二(沖)、村田諒太(帝拳)と2人の世界チャンピオンを輩出し、これまで13度の世界タイトルマッチが行われている。1995年12月、竹原が記念すべき世界ミドル級初挑戦を実らせ、ロンドン五輪金メダリストの村田はプロで7度も世界ミドル級タイトルマッチに出場した。

 ウェルター級は2009年10月に佐々木基樹(帝拳)がウクライナに乗り込んでWBA(世界ボクシング協会)王者ビャチェスラフ・センチェンコに挑んで以来、日本人チャレンジャーが一人も現れていない。

異色のスポーツ歴

 そんな難攻不落のウェルター級でチャンピオンになると豪語する男がいる。八王子中屋ジム所属の21歳、佐々木尽である。もともと柔道をやっていて、本気でボクシングに取り組みだしたのが15歳の時。アマチュア戦績は1勝3敗ながら、現在はWBO(世界ボクシング機構)アジアパシフィック王者で、世界の4団体すべてにランキングされている。今年に入って豊嶋亮太(帝拳)、小原佳太(三迫)と国内のトップ選手を連破し、今最も勢いに乗る選手だと目されている。

 とくにさる4月の小原戦は、海外強豪との対戦経験もあるベテランをダウン応酬の末、3ラウンドTKOで倒し、新旧交代を強烈に印象付けた。相手をなぎ倒すような豪快なKOシーンを売りにしている。

 この佐々木、順風満帆にきたわけではない。ここまで17戦して15勝14KO1敗1分の戦績。唯一の黒星は一昨年10月、現世界ランカーの平岡アンディ(大橋)との日本&WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王座決定戦で11ラウンドTKO負けしたもので、この時は試合前の計量に失格する失態も犯した。好調なキャリアを急転回させる一敗だったが、佐々木はそこで終わらなかった。

大手企業のバックアップ

 佐々木の次の試合は7月8日に地元八王子で星大翔(角海老宝石)を迎えてWBOアジアパシフィック王座の2度目の防衛戦となる。この一戦を前に、佐々木は大きなバックアップを得た。4月下旬に、映像配信サービス「Lemino」が展開する「Lemino BOXING」(大橋ジム主催)のサポート選手に指定されたのだ。

 佐々木は今後、Lemino BOXINGから興行の出場や選手活動のプロモーションなどでサポートを受けるという。海外合宿を行う際に資金面のバックアップも期待でき、この点は佐々木にとって何より大きなメリットと言えそう。

 というのも、海外でのスパーリング合宿はこれからの佐々木に欠かすことのできない機会となるからだ。軽量級主体の日本国内ではスパーリング・パートナー探しもひと苦労。本場アメリカにわたって数週間でも集中的にスパーリングを行い、向こうのトップクラスを肌で体感することは、世界を目指す佐々木にとってこの上ない経験となる。

 実際、佐々木は5月にもラスベガスでトレーニング・キャンプを行い、すでにLeminoサポートを受けている。Lemino BOXINGのカメラが密着し、合宿の様子を撮影してきた。現地ではWBAミドル級の現役チャンピオン、エリスランディ・ララ(アメリカ)とも手合わせをした。さらに次戦後にも再渡米し、合宿期間中にクロフォード−スペンスJr戦を視察する計画という。佐々木の今後に注目したい。


VictorySportsNews編集部