本大会は無料で参加できる自主対戦形式の学童野球大会の全国大会としては国内最大級の規模を誇っており、今回は過去最多の1590チームが出場。全国の10地区から勝ち上がった計13チームと前回優勝チームである新家スターズ(大阪)が神宮球場でのファイナルトーナメントへ駒を進め、各チームが熱戦を繰り広げた。くら寿司が学童野球大会を協賛するに至った経緯について小山さんは語る。

 「弊社の本社がある大阪府堺市に新しい野球場ができたんです。ネーミングライツを募集していたなかで弊社が取得させていただいて、お客様の健康のために四大添加物無添加を掲げる弊社が、人々の健康をスポーツ面からも応援していこうというのがきっかけです。野球場のスポーツ協賛というところから派生させて、お子さま方に楽しんでもらいたいという目的があります。『野球』『スポーツ』『健康』『子どもたち』というキーワードが出てきたなかで、この大会を応援させていただきました」

 故・星野仙一さんが塾長を務めた「夢・スポーツ塾」と学童野球のすそ野拡大を目的として2007年に発足したポータルサイト「ポップアスリート」がコラボする形で同年に始まった「ポップアスリー トカップ」。くら寿司は第14回大会にあたる2020年から大会特別協賛として支援に携わったなか、当時は新型コロナウイルスによる感染拡大の真っ只なかであり、1年目は優勝を争うファイナル トーナメントの開催を断念するなど苦難も経験した。

 「コロナ禍がちょうど1年目だったんです。2020年の1月から徐々に感染が広がり、もともと大会のスタートが6月の頭くらいからの予定だったところが1カ月くらいずれてしまった。6年生にとっては最後の大会でファイナルトーナメントまで駒を進めていたなか緊急事態宣言で、ギリギリまで可能性を探ったんですが、タイムアウトになりできませんでした。これはやむを得なかったんですが、子どもたちが気の毒だと心残りでした」

 そんなスタートだったが第2回以降も継続的に開催し、コロナ禍の収束を経て今回の第5回まで大会実施につながっている。苦しい船出となったなか、「くら寿司・トーナメント」と打ち出し大会を重ねてきたなかで得た手ごたえはあったのか。小山さんは、続けてきたからこその収穫があったと明かす。

 「実際に運営されてる方々のお陰でこの大会は成り立っていて、限られたマンパワーのなかでやっていただいているのは感謝の気持ちしかない。この大会自体は18回目ですが、徐々に『くら 寿司・トーナメント』という名前で浸透してきつつあるなというのは感じています。長くやっていかないと大会の愛称という部分は定着していかないと感じていて、ようやく『くら寿司・トーナメント』と言っていただけることが増えてきた。継続的に応援していくことが大事なのかなと思っています」

グラウンドに一礼をする選手と保護者

 全国チェーンであるくら寿司の店舗としては、すべての食材に化学調味料、人工甘味 料、合成着色料、人工保存料を使用せず、たとえば人気の品「まぐたく」に使用されている無添加の「たくあん」のように「食」を通して人々に健康を働きかけている。そんななか野球大会開催を通した子どもたちへの支援を続けて5年の月日が流れた。小山さんは大会に参加する選手たちと関わるなかで、子どもたちにどのような気持ちを抱くようになったのか。

 「コロナ禍を経て思ったのは、野球ができることへの感謝の気持ちと喜びをまずは感じてほしいということ。野球をやるとなると、周りの保護者やボランティアの方々、大会を運営している方のサポートがあって野球ができています。あとは団体競技ですから、お互いがお互いをリスペクトしながら同じチームや相手チームの子たちを称えながらプレーしてほしい。私たちは健康、食に関わる企業ですので、スポーツを通じて体を動かすこともそう。また、練習したあとはぜひくら寿司にきて、食事という観点からも健康的な体つくりをしてほしいと思います」

 また、小山さんが野球大会開催を通して子どもたちへ訴えたのは「スポーツを通した人間形成」の重要性。「くら寿司・トーナメント」は小学生の大会として行われているが、中学、高校とカテゴリーが進んでいくなかで、野球の道を極めまい進する人もいれば、ほかの分野に進む人も出てくる。そんななかでも幼少期の野球チームでの経験は今後の一人ひとりの人生にとって小さくない財産をもたらすと考えている。

試合を観戦するくら寿司株式会社 広報宣伝・IR本部の広報部の小山祐一郎さん

 「スポーツをすることは人間性の構築において重要な要素を占めると思っていて、なかでも団体競技をやることで、周りとのコミュニケーションの図り方を勉強したり、お互いを称え合うことを小 学生のうちから経験できるのがすごく大きい。(くら寿司・トーナメントという)一つの目標に進んでいくことを体感することは大人になって社会人となっても生かされます。ただ単に野球を極めるだけでなく、社会において活躍できる人材の育成にも少なからず結びついていくんじゃないかなと思っています」

 くら寿司ではこれまでも、サッカー大会を支援し、大相撲の開催にあたっての懸賞幕の提出や、メジャーリーガーの大谷翔平が所属したロサンゼルス・エンゼルスの本拠地、エンゼル・スタジアムに看板を設置するなど、スポーツにベクトルを向けた動きを行ってきた。そんななかで、未来の子 どもたちに野球大会を通しての支援目的に協賛に加わった「くら寿司・トーナメント」がコロナ禍の苦難も乗り越えて、第5回実施までこぎつけることになった。

企業がスポーツを通じてみらいを担う子どもたちを支援する想いとは?〔後編〕につづく

VictorySportsNews編集部