1月に行なわれた建設現場見学会ではプレゼンテーションで完成イメージを伝えられていたが、8月28日のメディア向け内覧会ではその全容が目の前に。メインアリーナ各所に足を運んでみると、見やすさと会場の一体感を追求した構造であることを体感できた。

バスケットボール観戦に最適化した設計

 TOYOTA ARENA TOKYOは、アルバルク東京が2016年のBリーグ開幕以来、長年温めてきた「チームと施設が一体であることがクラブ価値を高める」(同社・林邦彦社長)という思いを具現化するために建設されたアリーナ。Bリーグのクラブとして初めてアリーナ運営も請け負うことを前提に計画が進められたため、バスケットボール(スポーツ)観戦に最適化した設計となっている。Bリーグの再編に伴い「Bプレミア」としてスタートする2026-27シーズンからは同じ東京に本拠地を置くサンロッカーズ渋谷もホームコートとして使用することが決定しており、「日本で最もバスケットボールの試合が行なわれるアリーナ」(林社長)となる(Bリーグ公式戦のホームゲームは1チーム30試合)。

 立地は見晴らしの良い東京お台場地区の江東区青海(あおみ)。公共交通機関の駅から徒歩5分以内(新交通ゆりかもめ 「青海」駅から徒歩4分、りんかい線「東京テレポート」駅から徒歩5分)と至近であるのも大きな魅力だ。アリーナ自体の構造は非日常空間を演出可能にするハード面が装備されている。

 まず観客席の設置形状は、どの座席もコートに対して正体するオーバル(楕円)型を採用。座席により見切り部分が出ることなく、座れば顔や体を左右に捻ることなくそのままゲームを楽しめる、見やすさを追求したつくりだ。そのうえ、「これまで(アルバルク東京が)ホームコートとして利用してきた国立代々木(競技場)第一体育館の2階の最前列が、ここでは最上階の一番後ろの席の高さに当たる」(林社長)と言うように、一番上の席でも建物の1階層分、これまでよりもコートとの距離が縮まった構造となっている。実際、最上階の5階の一番上の席に座ってみると、他のアリーナに比べてもコートが間近に感じられた。

 観客が身を任せるシートは観戦・鑑賞体験の満足度を上げるため、1万席すべてにクッション性のあるレザーシートを採用。コートサイド席以外は通路の利便性を考慮し、カップホルダーは前席背面に設置されるなど快適性を重視。身長175センチ、体重75キロの成人男性が座っても、左右幅、前後幅ともに十分に余裕を感じられる。

 映像演出には総面積1000m平方メートルを超える国内最大級のLEDセンターハングビジョンと、国内初となる上下2層のリボンビジョンが導入された。特に上層リボンは2m幅のため、自動車やアルバルク東京のマスコット「ルーク」が実寸大で駆け回る演出も可能となっており、これまでにないエンタメ性を創出する(下層リボンは1m幅)。

センターハングビジョンと2層式リボンビジョンはこれまで以上のエンタメ性を実現 ©︎TOYOTA ARENA TOKYO

 他にもFIBA(国際バスケットボール連盟)の製品認証も受けているPanasonic社製の照明設備、国内スポーツ用途として最大規模の構成でアリーナ全体に均一な高音質を届けるドイツ d&b audiotechnik社製のスピーカーシステムが採用され、「見る人々の五感に訴える」(林社長)ハードウェアにより構成されている。

 また、コンセプトの一つである「開かれたアリーナ」を象徴するように、所々に屋外との隔たりを感じさせない「抜け空間」が設けられており、その設計が思った以上に観客の脳裏に印象として残る。特にメインゲート入口を通り抜け、足を一歩踏み入れた瞬間には、センターハングビジョンとコートが視界に一気に迫ってくる様は、日常から非日常へのスムーズな没入感と言えるだろう。

多種多様なホスピタリティ空間は要チェック!

 どの席でも十分にゲームを楽しめるアリーナだが、「より贅沢に」楽しめるホスピタリティ空間も多彩で、それぞれが特徴的だ。

 まずはメインアリーナ1階から。

 アリーナで最上級のサービスを提供するのが「TOYOTA PREMIUM LOUNGE」。ラウンジ内にライブキッチンが併設されており、シェフが作る出来立ての料理が提供され、利用者は試合開始後、専用スタッフが観戦席まで飲み物を運ぶインシートサービスも実施予定だ。

 選手を間近に感じたいコアファンには、「PLAYERS LOUNGE」はたまらない区間となるだろう。ガラス越しにロッカールームとコート間を行き来する選手たちの姿を目の前で見ることができ、試合前には選手が醸し出す緊張感、勝利後には選手とともに喜びを分かち合える珠玉の空間となる。2m超の選手たちの大きさを、身をもって感じられるのも特別な体験となるだろう。

選手たちの姿を至近で見られるプレーヤーズラウンジ。飲食はビュッフェスタイルだ ©︎TOYOTA ARENA TOKYO

 メインアリーナ2階には、TOYOTA ARENA TOKYOで最もラグジャリーな観戦体験を提供する「JAPAN AIRLINES TERRACE SUITE」がある。合計6室すべてに異なるデザインが施されており、コートまでわずか18 mの距離に設けられたオープンエアのテラス空間付きの観戦スイートルームだ。日本航空がフライトサービスで提供するオリジナルのクラフトジンも楽しめる。

 また、カジュアルでありながらワンランク上の観戦体験を可能となるスポーツバー型のラウンジ「JAPAN AIRLINES LOUNGE」は観客席までの行き来がスムーズな動線となっており、ラウンジでの食事と試合観戦の両面で高い満足度を得られるだろう。

 メインアリーナ3階には、アーティストの田村大氏が描いた16種類のバスケットボールの絵画が各部屋に展示された16室の「SUITE」、また、25~40名の大人数のグループで気兼ねなく観戦できる「CHAMPAGNE COLLET PARTY LOUNGE」が用意されている。

 そしてこのフロアにはファミリー層にとってうれしい「FAMILY ROOM」がある。メインボウルに面した観戦席はお子様に配慮したベンチシートとなっており、その後ろには遮音効果の高いガラスで仕切られたプレイルームが設置されている。約2時間続く試合のなか、お子さまが気兼ねなく遊び、大人たちは試合が見たい−−という両方の需要を満たすスペースになっている。

 メインアリーナ5階の「SMBC SKY LOUNGE」は誰もがアクセス可能で、座席以外でも観戦できるエリア。屋外テラスからはお台場のビル群などが一望できるようになっている。

5階のSMBC SKY LOUNGE は誰もがアクセス可能で立ちながらの観戦が可能 ©︎TOYOTA ARENA TOKYO

グルメもクラフトビールも◎ 屋外スペースも快適性十分

 アリーナ各所にある飲食店舗も豊富だ。豊洲市場直送の和食からクラフトビールまで、選手プロデュースのメニューや「ルーク」をイメージしたカフェに至るまで多彩なラインナップを揃えている。

 また、再生可能エネルギーの100%使用、屋根への太陽光発電の設置(全体電力の5%をカバー)、ゴミの全量リサイクルなど、サステナビリティの観点からの取り組みにも配慮がなされている。

 ここまでメインアリーナの仕様とサービスについて触れてきたが、それはTOYOTA ARENA TOKYOの一部。目の前に運河を臨む屋外スペースには、不要となったシューズを再利用して作られたバスケットボールコート「adidas SPORTS PARK」が設置された。ゴールが4基設けられ、試合前のイベントはもちろん、イベントや試合の有無にかかわらず誰でも使用することができる。

メインゲート前にあるadidas SPORTS PARK は誰もが使用できるスペース ©︎TOYOTA ARENA TOKYO

 メインゲート左手のフリースペース「レンタルのニッケン JOINT PARK」は、訪問者の憩いの場としてはもちろん、キッチンカーの出店からさまざまなイベントなど、使用用途ごとに柔軟に対応できる空間となっている。

 極上のスポーツ観戦体験やエンターテイメント性を追求する空間を提供するだけでなく、トヨタ自動車グループならではのモビリティ技術の発信など、さまざまな価値を生み出すTOYOTA ARENA TOKYO。一度は足を運んでみていただきたい魅力的なアリーナの今後の展開にも注目したい。

アルバルク東京が挑むクラブ運営とアリーナ運営の一体経営 Bプレミア仕様・TOYOTA ARENA TOKYOで展開する新たな挑戦の狙いとは?

急成長を続ける男子プロバスケットボールBリーグ。2026年秋からは新たな枠組「B.LEAGUE PREMIER(Bプレミア)がトップリーグとしてスタートする。その流れのなか、Bリーグクラブとして、クラブ運営とアリーナ運営の一体経営にチャレンジするのが強豪・アルバルク東京だ。

Victorysportsnews

牧野豊

著者プロフィール 牧野豊

スポーツライター&編集者。スポーツ専門出版社ベースボール・マガジン社に約30年間勤務したのち、2022年夏にフリーランスに。陸上競技、バスケットボール、水泳を中心に五輪競技やMLB等もカバーする。オリンピック、アジア大会、単競技の世界選手権の取材経験もあり。