V・プレミアリーグで見せたMVPにふさわしい活躍

2018年度の全日本女子バレーチームが17日に始動し、今年5月からスタートする国際大会であるFIVBバレーボールネーションズリーグを戦う18名が発表された。3月に発表された登録メンバーから、セッターの宮下遥、オポジットの長岡望悠らが外れている。

今回、全日本が臨むネーションズリーグは、これまで開催されていた男子のワールドリーグと女子のワールドグランプリを統合した新たな大会で、今年から毎年開催される。1年目となる今年は、コアチーム12カ国とチャレンジャーチームの4カ国からなる計16チームが参戦。世界各地で行われる1回総当たりのリーグ戦を行ったあと、6月27日から7月1日にかけて中国の南京で決勝ラウンドが行われる(※男子・決勝ラウンドは7月4日~8日にフランス・リールで開催)。

ネーションズリーグのメンバーの中で、今季久光製薬スプリングスでリーグ優勝を果たし、MVPとレシーブ賞、ベスト6を受賞した石井優希に話を聞いた。石井はリオデジャネイロ五輪の経験者だが、眞鍋政義から久光で一緒だった中田久美に監督が変わった昨年の全日本では、なかなか思うような活躍ができなかった。リーグ優勝と受賞で得られた自信と、不本意だった昨年度を振り返りつつ、今年度にかける意気込みを語ってくれた。

――今季、所属する久光製薬は2年ぶりの優勝を果たし、個人でもMVPとレシーブ賞を受賞されました。かなり自信になったのでは?
石井 はい、かなり自信になりました。レシーブ賞というのが個人的にはすごく嬉しかったです。これまではどうしてもスパイクの方を、しかもパワースパイカーと言われてきたので、そこを見られがちだったのです。自分としては、オールラウンダーとしてディフェンスも売りにしてきたつもりでした。レシーブを拾ってからでも点数を取れるというのが自分の持ち味だと思っていたので、そこを評価されたのはすごく嬉しかったです。
サーブレシーブに関しては、ミスとか弾いたりしたものもあったんですけど、今までたくさん本数を受けてきた分、その面でも少しは評価されたのかなと思ったので、レシーブ賞は嬉しかったです。
MVPも、今まで個人賞をいただけることが少なかったので、今回いきなり3つも賞をいただいてびっくりしました。周りの方々から期待度という意味でも、全日本での期待度を含めて、しっかり私が頑張らないといけないポジションだなと思いました。あの賞が頂点ではなくて、ここから頑張らなくてはいけないなと思います。

ネガティブになりがちだったメンタル面

©中西美雁

――昨年の全日本はレギュラーに定着することができず、一時は14名からも外れてしまったりとなかなか不本意だったと思いますが、どんなところに理由があったのでしょうか。
石井 体制が新しくなって、監督が眞鍋さんから(中田)久美さんになりました。チーム(久光製薬)で一緒にやっていたからやりやすい面もあったはずなんですけど、なかなかうまくいきませんでした。多分、期待されていた分、それに応えられていなかったことで、どんどんうまくいかなくなっていったのだと思います。
一番は、私自身が人と比べてしまって、すごくネガティブになっていたんです。今振り返ると、本当に周りの目ばっかり気にして練習していたので、バレーに集中できていなかった。バレー以前の問題で、自分をすごく苦しめていました。

――そこからリーグ優勝を経て、今年度どうプレーしていきますか。
石井 本当に去年の1年がもったいないと思いますし、去年メンタル面で苦しんだことが今年のリーグに生かされました。リーグで結果も残せて、自信も更についた分、自分が東京オリンピックにかける思いとか、中心として頑張りたいという気持ちを前面に出していきたいです。
そこを中心に考えていけば、周りは関係ないと思えるようになりました。全日本が今年集合してから今まで、メンタル的にも強い気持ちでこれていると思います。これから試合が増えていって、負けたり自分の調子が良くないことも絶対出てくるでしょうけど、自分の考え方次第で、そこは分かれ道になります。去年苦しんだ分、今年は強くなれているので、自分でも楽しみです。

――集まってから中田監督と何かお話されましたか?
石井 体の使い方のことや、以前久美さんが神戸にいらっしゃったときは美容院が一緒だったので、担当の美容師さんの話をしたりしましたね。

――美容院が一緒なんですか? 中田監督と髪型を一緒にしたり?
石井 今は違うんですけど、久美さんの髪型にしてみたくて、「その髪型いいですね!」ってすごく言って、それで美容院を教えてもらいました(笑)。

この5月で27歳になる石井。これまでの経験値も十分で、中堅として中田ジャパンを支える核となってほしいところだ。

全日本女子バレーチームは今年度、このネーションズリーグを皮切りに、アジア競技大会(8月)、地元日本開催の世界選手権(9~10月)などを戦う予定となっている。

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中西美雁

名古屋大学大学院法学研究科修了後、フリーの編集ライターに。1997年よりバレーボールの取材活動を開始し、専門誌やスポーツ誌に寄稿。現在はスポルティーバ、バレーボールマガジンなどで執筆活動を行っている。著書『眠らずに走れ 52人の名選手・名監督のバレーボール・ストーリーズ』