大相撲に変化の兆し? 相撲ほど可能性のありすぎる文化はない

好ましくない注目のされ方ばかりが目に付き、「旧態依然」の代名詞になってしまった大相撲と日本相撲協会ですが、改革の芽は「スマホファースト」に対応した中継から生まれているようです。

「若い人を取り込むことができる、新しい時代に合った中継だと思います。必然ですね」
横浜DeNAベイスターズ前球団社長、池田純氏は、相撲協会とAbema TVの取り組みをこう評価します。

特に話題になっているのが、テレビ中継では見られなかったような斬新な演出です。力士の紹介も「原液7割 水3割のカルピスを愛飲していたことがある。その当時は自分がCMに抜擢されると思っていた(千代大龍)」「妻にプロポーズの言葉をなかなか言えず。観覧車を3回も巡ってやっと切り出した(嘉風)」など一見相撲とは関係ないフレーズが並んでいます。

「それらひとつひとつが“接点”になっていくといえるでしょう。これまでは見えていませんでしたが、力士にもプライベートがあります。土俵に立っている背景が見えたり、人柄に触れることができたり、視聴者との“接点”がそこで生まれていきます」

相撲ってこういう世界なんだとか、力士ってこんな人たちなんだという姿を「見える化」することで、接点を増やし共感を生む。池田氏は、こうした施策が今まで相撲に興味がなかった若い層や、新規の視聴者、ファン獲得につながると言います。

「今の世の中にはたくさんの選択肢があります。その中から選ばれるには、『どうやって興味を持ってもらうのか』という取っかかりが必要になります。好きな人、マニアの方だけを向いていれば良いという時代ではない。例えば新日本プロレスのように、力士をトレーディングカード化しても面白いでしょうし、相撲の新しい可能性はまだまだあると思います。さらに言えば、相撲ほど可能性がありすぎる文化はないといえるでしょう」

ネットの世界で無限に広がるきっかけを。こぼれ話が接点になる、情報の価値の転換期

Abema TVの野球中継では、阪神の鳥谷敬選手が「息子の保護者リレーに出場してごぼう抜き」と紹介され、そのコメントが話題になったという事例もあります。

「鳥谷選手の件は、Twitterなんかで『当たり前だ!』とか『そりゃそうだろ!』と盛り上がっていたようですね。これまでの中継であれば、選手紹介で表示されるのは成績ぐらいのものでしたが、そういうプライベートのちょっとした話が出てくると、ファンはもちろん、一般の人でも興味を持つきっかけになりますよね。ネットの世界で無限に広がるきっかけをつくらなくてはなりません。それが大きな接点になるのです」

これまでも取材している記者はこうした「情報」を持っていましたが、披露する場もなく、こぼれ話として出すのが関の山でした。しかし、マラソンや駅伝中継で増田明美さんが披露する『細かすぎる選手解説』が話題になるなど、「その情報、競技に関係あります?」といった情報が注目されている例もあります。

「きっかけは何でもいいんですよ、最初は楽しんでくれれば。間口が広くて、その競技との接点を広げていくことがファン拡大に繋がっていきます。相撲という競技は、日本国民のほとんどが認知しているにもかかわらず、ほとんどの人が『自分とは関係のないもの』として扱ってきました。その『自分とは関係ないもの』を『自分と関係あるもの』にするために、さまざまな接点をつくっていくという点において、Abema TVはスポーツ中継の新しい形といえるのではないでしょうか」

「改革」に消極的と思われがちな相撲協会ですが、Abema TVに中継を出すと決めたこと自体が改革の、そして新規ファン獲得の第一歩。変化の兆しになっていると池田氏は指摘します。

「こうした解説文に『けしからん』と言う人も必ず一定数は出てくるものです。あるいは、よく分かっていない人も多いでしょう。分からないからこそ、実は体質が昔のままの業界は現場が通しやすかったりもしますが、Abema TVに出すと決めたということがすでに英断だといえるでしょう。相撲協会内部で賛否はあったとしても、凝り固まった目線で見るのではなくて、まったく新しいことのメリットを考える、未来を見据えて検討することが重要です」

スマホネイティブの若者の支持を受けるAbema TV。若者や子どもたちの視聴機会、興味の接点を持ってもらうチャンスを得ることが、相撲に限らず、競技の将来を左右する要素になっていきそうです。

<了>

取材協力:文化放送

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毎週木曜日レギュラー出演:池田純
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