巨額のフィーを払うスポンサーの影響力は

2018FIFAワールドカップロシアは波乱続出のグループステージが終了し、いよいよ決勝トーナメントに突入した。日本代表はアジア勢として唯一、決勝トーナメントに進出している。グループステージ最終節ポーランド戦での戦い方には賛否両論があるだろうが、勝ち進んだことによって最低でももう1試合、選手たちの勇姿を見ることができる。優勝候補の一角を占めるベルギーを相手にどんな戦いを見せてくれるか、という新たな楽しみを提供してくれたことについては、最大限の評価をしてしかるべきだろう。

思えば今大会に臨んでいる日本代表に対しては、様々な批判がぶつけられていた。その中の一つに、背番号10をつける香川真司の選出を巡るものがあった。香川は今年に入ってからコンディション不良が続き、所属するドルトムントではほとんど試合に出られないままシーズンを終えていた。にもかかわらずメンバー入りしたのは、香川がユニフォームサプライヤーであるアディダス社の契約選手だからだ、という批判だ。

香川は直前のキャンプから大会突入後に懸けて徐々にコンディションを取り戻し、コロンビア戦、セネガル戦にはトップ下で先発出場して日本の決勝トーナメント進出の原動力となった。エースナンバーである10番の名に恥じないプレーを見せているのだが、そもそもこういった批判が起こるのは、ユニフォームサプライヤーを務める大手スポーツメーカーが各代表チームに対してそれなりに大きな影響力を持っていることに起因する。アディダスと日本サッカー協会(JFA)は、8年総額250億円と言われる大型契約を結んでいる。アディダスの影響力が全くないとは言い切れないだろう。

現在のサッカー界ではナイキとアディダスが二大勢力となっている。今大会に出場している32カ国のうち、ナイキは10チーム、アディダスは12チームのサプライヤーを務めている。一方、両メーカーは選手個人とも契約を結んでいるが、ナイキのスパイク着用者は全736人中471人でシェア率64パーセント、アディダス着用者は196人でシェア率約27パーセントと、こちらはナイキがアディダスを圧倒している。

ここで一つの疑問が浮かぶ。香川のケースのように、各国のエースナンバーを背負う選手は、そのチームのユニフォームサプライヤーと個人契約している選手であるケースが多いのだろうか。そこで、ナイキ、アディダスがサプライヤーを務める22チームについて、サッカーにおけるエースナンバーである10番を背負う選手がどこのスパイクを履いているのか、調査してみた。

メーカーと背番号10の関係は?

まず、アディダスがユニフォームサプライヤーを務める12チームについて、10番を背負う選手が着用するスパイクは以下のとおりである。

ロシア:ヒョードル・スモロフ(ナイキ)
スウェーデン:エミル・フォルスベリ(ナイキ)
ドイツ:メスト・エジル(アディダス)
スペイン:チアゴ・アルカンタラ(ナイキ)
ベルギー:エデン・アザール(ナイキ)
アルゼンチン:リオネル・メッシ(アディダス)
コロンビア:ハメス・ロドリゲス(アディダス)
モロッコ:ユネス・ベルアンダ(プーマ)
エジプト:モハメド・サラー(アディダス)
イラン:カリム・アンサリファルド(ナイキ)
日本:香川真司(アディダス)
メキシコ:ジオバニ・ドス・サントス(ナイキ)

アディダス5人、ナイキ6人、プーマ1人という結果だった。一見するとそこまでアディダスの契約選手に対するこだわりはないように思えるが、全体のシェア率でナイキが約64パーセント、アディダス約27パーセントであることを考えると、アディダス契約選手が10番を背負うケースは意外に多いと言えるだろう。特にディエゴ・マラドーナを生んだアルゼンチンやカルロス・バルデラマが輝きを放ったコロンビアのように10番人気の高い国は、しっかりとアディダス契約選手を押さえている印象だ。日本もマラドーナやジーコ、ロベルト・バッジョへの憧れや『キャプテン翼』の大空翼の影響により、10番人気が高い国と言えるだろう。ちなみに、ドイツでは10番に加えて13番の人気も高い。かつて“爆撃機”ゲルト・ミュラーや“小皇帝”ミヒャエル・バラックが着用した番号で、現在はトーマス・ミュラーが着用しているが、彼もアディダスの契約選手だ。

続いて、ナイキの10チームを見てみよう。

フランス:キリアン・エムバペ(ナイキ)
ポルトガル:ジョアン・マリオ(ナイキ)
ポーランド:グジェゴシュ・クリホヴィアク(アディダス)
イングランド:ラヒーム・スターリング(ナイキ)
クロアチア:ルカ・モドリッチ(ナイキ)
ブラジル:ネイマール(ナイキ)
ナイジェイア:ジョン・オビ・ミケル(ナイキ)
韓国:イ・スンウ(アディダス)
サウジアラビア:ムハンマド・アル・サハラウィ(ナイキ)
オーストラリア:ロビー・クルーズ(ナイキ)

こちらはナイキが8人、アディダスは2人だけで、全体のシェア率により近い結果となった。そもそもナイキ着用選手の絶対数が多いので、妥当な結果と言えるのではないだろうか。ペレやジーコによって「エース=10番」のイメージを定着させたブラジルや、ミシェル・プラティニ、ジネディーヌ・ジダンが10番を背負ったフランスなど、背番号10のイメージが強い国はしっかりナイキ契約選手に10番を与えている。また、ポルトガルはドリブラーの代名詞でもある7番の人気も高いが、7番を背負うクリスティアーノ・ロナウドがナイキと契約しているのは誰もが知るところだろう。

調査の結果、ユニフォームサプライヤーと10番を背負う選手のサプライヤーは、必ずしも一致するわけではないことが分かった。ただ、メーカー側からすれば、一致していれば広告を打ちやすいという利点はある。ナイキがブラジル代表の、アディダスがアルゼンチン代表の新ユニフォームを発表すると考えた際、そのメインのモデルがネイマールやメッシでなければ、何とも味気ないではないか。そう考えると、エースナンバーを着用する選手がユニフォームからスパイクまですべて同じメーカーで統一されていたほうが、いろいろな面で利便性が高いのかもしれない。

今回はロシアW杯に出場しているチームの、現在のメンバーについて調査してみた。ブラジルやアルゼンチンといった強豪国の場合、これが今大会に限ったものなのか、過去に遡っても似たような傾向が見えるのか、機会があれば調査してみたい。

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池田敏明

著者プロフィール 池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。